「別荘は買ってはいけない」って本当? 別荘購入のメリット・デメリットとは
かつては富裕層のステータスでもあった別荘。今でも別荘に憧れを抱いている人は少なくないでしょう。避暑や避寒の場所として、非日常を味わうための長期滞在先としてもぴったりの別荘ですが、「買ってはいけない」という話を聞いたことがある人もいるかもしれません。本記事では、別荘を購入するメリットやデメリットについて解説します。
別荘を購入してはいけない理由とは? 別荘に関する6つのデメリット
事前の予約をしなくても行ける別荘は、急に休みが取れたときや、思い立ったときにいつでも利用できます。
また、コロナ禍でリモートワークをする必要が出てきたために、別荘を仕事場にしたいと考えた人もいるでしょう。ただし、別荘購入にはさまざまなデメリットがあります。以下に主なデメリットを紹介します。
さまざまなコストがかかる
別荘には、購入する際に必要な初期費用のほかに、以下のような維持コストがかかります。
・管理費
・水道光熱費
・火災保険料
・通信費
・修繕費
・交通費
管理費は、別荘を管理している管理会社に支払う費用で、定期的な清掃代や、共益施設負担費などが含まれます。水道光熱費は滞在の有無にかかわらず、基本料金がかかります。
別荘は無人となる期間が多いため、万一に備えて火災保険に加入しておくと安心です。ただし、基本的に保険料は住宅用の火災保険より割高になります。さらに、別荘でリモートワークをする場合にはインターネット環境が必要になるため、インターネットのための環境整備費や通信費も考慮しておく必要があるでしょう。
老朽化に伴う設備の修繕費や、別荘を訪れる際の交通費もかかります。豪雪地域の場合は除雪費用、温泉付きの場合は温泉使用料なども別途必要です。
別荘にも税金がかかる
別荘には、維持コストのほかに固定資産税、不動産所得税などの税金もかかります。別荘と似たような形態にセカンドハウスがありますが、別荘とセカンドハウスでは税制上の違いがあります。
セカンドハウスは、職場が自宅から遠いなどの理由で職場近くに借りた家や、週末に過ごすための家など、毎月1泊2日以上居住用に利用している家のことです。
一方、別荘は避暑や避寒など保養や休養、娯楽のための住宅であり、贅沢品とみなされます。このため、セカンドハウスであれば一定の要件のもとに受けられる固定資産税や都市計画税、不動産取得税の軽減措置が、別荘では受けられません。
住宅ローンは利用できない
別荘を購入するときに通常の住宅ローンは利用できません。なぜなら、住宅ローンは、契約者が日常生活を送るための家を購入するためのものだからです。そのため、別荘を購入する際は、セカンドハウスローン、別荘ローン、「フラット35」などを利用することになります。
セカンドハウスローンは、基本的に住宅ローンに比べて審査が厳しく、金利も高めです。さらに、住宅ローン控除の対象外になります(メインの自宅で住宅ローン控除の適用期間が終了している場合、セカンドハウスに住民票を移せば控除を受けられる可能性はある)。
フラット35のセカンドハウスローンであれば、「賃貸物件の投資資金にしないこと」「申し込み時の年齢が満70歳未満であること」「日本国籍を有していること」などの要件を満たせば、通常の住宅ローンと変わらない条件で申し込めます。
参考:住宅金融支援機構「セカンドハウスのお申込みについて」
定期的に管理が必要
別荘は定期的に庭や建物の点検や管理が必要です。そうしないと、いざ利用しようとしたときに、庭や玄関が雑草や木の枝に覆われていたり、室内がホコリや虫で汚れていたりして、すぐには使えません。
台風や地震などによる建物や設備の破損にも注意が必要です。定期的に訪れることができない場合は、別荘管理の専門業者に管理を委託しなくてはならないでしょう。
子どもが成長すると行かなくなるケースも
子どもがいる家庭にとって、別荘は夏休みや冬休みなどの長期休暇のたびに訪れることができて便利な場所です。別荘であれば、ほかに人がいる旅館やホテルと違い子どもが騒いでもそこまで気にする必要はありませんし、さまざまな自然体験もできます。
ただし、子どもが成長すると、別荘を訪れる回数が減りがちです。また、毎年同じ場所に行くのに飽きてしまったり、滞在時の家事が億劫になったりすることもあるようです。家族や自分の状況が変化すると、思い描いていた別荘ライフが送れなくなる可能性があります。
使わなくなったときに売れるとは限らない
別荘は使わなくなったら売却すればよいと考えるかもしれませんが、将来的にその土地の価格が下がる可能性もありますし、立地や建物の状況によっては売却できない可能性もあります。
かつては憧れの別荘地として知られた地でも、今では買い手が見つからず廃墟のようになった別荘もあります。なかには、維持費の高さや別荘へのアクセスの悪さから、売り手がお金を払うマイナス価格にしても売れない物件もあるようです。
別荘購入でしか得られないメリット
別荘のさまざまなデメリットを紹介してきましたが、別荘を購入することでしか得られないメリットもあります。ここからは、別荘購入のメリットを紹介します。
長期滞在しやすい
別荘があると、小さい子どもやペットがいても他人に気兼ねすることなく、のびのびと過ごせます。さらに、別荘に必要な着替えを置いておけば必要最小限の荷物で済むため、毎回大荷物で移動する必要もありません。
チェックイン時間なども気にしなくてよいので、早めに到着し、遅くに出発することも可能です。ただし、貸別荘にも長期プランがあるので、別荘を購入せずにこのような別荘ライフは楽しめます。
災害時に避難先になる
別荘は避寒や避暑、レジャー目的以外に、災害時などの避難先として利用できます。緊急時は避難先を探すのも大変ですが、別荘があればすぐに避難可能です。また、家族だけで過ごせるため、高齢者や小さい子どもがいる場合でもかかるストレスは少ないでしょう。さらに、公共の避難所には連れて行きにくいペットも、別荘であれば問題なく連れて行けます。
新型コロナのような感染症が蔓延した場合も、人が多い都会より、別荘地のほうが感染リスクを軽減できます。自宅以外に生活できる場所を持っていると、非常事態に役立つでしょう。
賃貸物件や民泊として活用する
別荘を何年も利用しないのであれば、賃貸や民泊として活用し、収益を得るという方法もあります。民泊として貸し出し定期的に借りる人がいれば、空気の入れ替えができてカビ防止になります。
ただし、立地によっては借り手が付かない場合もありますし、管理組合の規定で民泊などが禁止されていることもあります。また、民泊の物件には設備の条件があるため、条件に適していない場合は事前の設備投資が必要です。
リタイア後に第2の居住地として利用できる
別荘は、リタイア後に新生活を送る住居としての活用方法もあります。2015年に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」によると、「東京在住者のうち、50歳代男性の半数以上、また50歳代女性及び60歳代男女の約3割が地方移住を予定又は検討したいとの意向を持っている」と報告されています。
ただし、日本総研の経済・政策レポート「高齢者移住と地域活性化─高齢者誘致戦略の可能性と限界」によると、実際に移住する人の割合は、60歳代前半の世代で年間0.5% 程度にとどまっています。このデータから、リタイア後に地方移住することの難しさがうかがえます。
実現できない背景にはさまざまな理由があるでしょうが、馴染みのある別荘への移住であれば、ゼロから移住を準備する場合に比べて格段にハードルは下がります。
参考:「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」
参考:「高齢者移住と地域活性化─高齢者誘致戦略の可能性と限界」
まとめ
別荘購入にはさまざまなメリットがある一方で、デメリットも少なくありません。手頃な価格で購入できる物件もありますが、購入してから維持費や管理費などのコストがかかり続けることを覚悟しておく必要がありますし、不要になっても簡単には手放せない場合もあります。別荘購入の際は、デメリットにも留意しながら慎重に検討しましょう。