ジョジョにONE PIECE、カムイも。相撲最強兄弟の気分転換は漫画で

大相撲名古屋場所は7月10日に名古屋市の愛知県体育館で初日を迎える。注目は2度目の優勝を目指す関脇若隆景と、兄で新三役昇進を視界に捕らえた若元春。インタビュー前編では若貴兄弟に続く史上2度目の千秋楽兄弟優勝決定戦実現への熱い思いをほとばしらせた兄弟が、普段はなかなか知ることができない素顔の部分を見せてくれた(トップ画像/大関昇進を目指す関脇若隆景(左)、新三役を視野に入れる若元春(右))

相撲への思い。兄弟の強さの秘訣とはー

――相撲をやっていて楽しいこと、苦しいことは何ですか?

若元春 僕はそもそもそんなに相撲が好きじゃなくて、ずっと楽しいと思ったことはなかったんですけど、やっと幕内に上がって自分の相撲で勝てるようになってきたことは楽しいですね。苦しいのは四股。僕は四股が嫌いなんです。100回くらい踏むと限界が…。普通の力士からしたら少ないんでしょうね。

若隆景 相撲を始めた頃はすごく弱くて、まったく勝てなかったので、今こうして幕内の上位で相撲を取れているっていうのが考えられないくらい本当によかったと思います。そういう意味ではこうして自分が好きな相撲で、番付け上位で相撲を取れているっていうのは楽しいですね。

――番付にはあと2つ上(大関、横綱)があります。

若隆景 そうですね。これで満足することなく、まだ強くなりたいいので、苦しい稽古をたくさんして強くなりたいと思います。

若隆景は平成29年(2017年)3月場所初土俵、令和元年(19年)11月場所新入幕、若元春は平成23年(11年)11月場所初土俵、今年1月場所新入幕

――自分が強くなったと感じた瞬間、言い方を変えると覚醒の瞬間はありますか?

若隆景 僕ははっきりしていて、勝てるようになったタイミングっていうのは要所であって、そこで少しずつ自信をつけて相撲を取り続けられているのかなと思います。

――最近これでやっていけると確信できたのはいつですか?

若隆景 けがで途中休場だった新入幕の場所です。そこまで十両が9場所続いて、幕内で相撲を取れるかどうかすごく不安だったんですけど、いきなり4連勝できました。4連勝目の相撲で足首を痛めて休場にはなりましたが、幕内でも相撲を取れるという自信になりましたし、けがをしても戻って幕内で相撲を取れるっていう自信にもつながりました。

若元春 あんまり自信っていうのはずっとさほどない状態でここまできたので、でも、逆にそれがいいのかなと、僕には合っているのかなと思います。胸を借りるくらいの気持ちの方が気負わないというか。

――もし相撲をやっていなかったら何をやっていたかと考えたことがありますか?

若元春 僕は父親(大波政志さん、福島市内でちゃんこ若葉山を経営)が料理を作るのを見るのが好きで、今もちょっと作ったりするんですけど、料理の道とか。あとは母親(文子さん)が美大出で絵がすごく上手だったんで、そっちの道も進んでみたかったなと思います。

若隆景 考えたことないすね。やっぱり本当に相撲っていう人生なので。ただ柔道も6年間やっていて、柔道をもうちょっと続けてきたかったなという気持ちもありましたね。中学に上がる前にやめて初段も取っていないので、どうせなら初段を取りたかったなと思います。今でも柔道を見るのは好きですし。

若隆景、若元春兄弟は、祖父は元小結若葉山、父は元幕下若信夫という相撲一家に生まれ、幼い頃から相撲に親しんできた。

――祖父、お父さまにはどんな影響を受けましたか?

若元春 見たままですよね。僕は父とか祖父の影響がなければ、お相撲さんという道は絶対選ばなかったと思うので。そういう意味ではここまで来られたので感謝しています。

若隆景 父とか祖父とか、その2人がお相撲さんだったから、物心つく前に相撲を始めてやってきているので。そういう環境をくれたってことは感謝していますね。

――おじいさんの番付を超えるというのが一時話題になりました。

若隆景 超えたとか超えないっていうのは、そんなに意識したことはありません。今は前を向いて一生懸命相撲を取って、やめたときに誇れる相撲人生でありたいなと思いますね。やっぱり相撲取るからには、皆さんに見てもらっているので、子供たちの目標になるような相撲を取ったり、自分も体が大きくないので、体が小さくて相撲で勝てないなというような子供たちに自分が活躍している姿を届けたいなという気持ちがありますね。

――家族の支えも大きいのでは?

若元春 あんまり家族のことはしゃべったことがないんですけど、嫁さんがいて、先場所中に娘も生まれました。支えてくれる存在とか、自分が守らなきゃいけない存在ができたのはすごく大きいのかなと思いますね。実際結婚してから番付もかなり上がってきているので、自分でも気づかないところでプラスになってきているのかなと思いますね。

若隆景 家族っていうのは自分にとって大きい存在ですし、本当に支えてもらって自分があると思うので、春場所の優勝決定戦の時も家族の顔がすぐ浮かびました。実際会場に来ていて、子供たちとか嫁にもいい姿見せたいと思いましたし、まだ子供たちの記憶に残っているかどうか分からないですけど、カッコイイ姿を見せたいなと思います。

――好きな食べ物は何ですか?

若元春 好きな食べ物は3兄弟とも寿司が好きなので、そこは共通で一緒なのかなと思います。苦手な食べ物は、僕は一個もないんですけど・・・。

若隆景 (苦手を)挙げたらキリが無い。そうですね、たくさんありますけど。トマト、ピーマン、その他、そのくらいでいいでしょうか(笑)?

――リラックスする時は何をされていますか?

若元春 好きなものがいっぱいあります。プロレスとか漫画とか好きなので、そういうものを見ている時間がリラックス方法ですかね。

若隆景 僕はもうワンピース。本当にリラックスしているのはワンピース読んでいる時間です。毎週楽しみでワクワクしながら(週刊少年ジャンプの発売日の)月曜日を待っています。今、休載しているじゃないですか。再開が本当に待ち遠しいんです。また個展みたいなのをやらないんですか? ゴールデンカムイはやっていたじゃないですか。FILM REDも楽しみです!

若元春 僕も漫画が大好きなんです。ワンピースもですが、集英社だったらジョジョとか。最近、個展に行くのが好きで。この間はゴールデンカムイ展に行かせてもらいました。

若隆景 ワンピース(展)なら僕もいつでも行かせていただきます。

――若隆景関のワンピース歴は長いのですか?

若隆景 ホントちっちゃい頃からです。出た当初から見ていたんで。小学生の時も月曜になると必ず本屋さんにいって少年ジャンプを――当初は立ち読みでしたけど、今はジャンプ+で買わせていただいています。ワンピースの取材であれば何も断らないので、なんでも言ってくださいね(笑)。

若隆景、若元春兄弟は相撲道をまい進するだけでなく、誠実で飾らない素顔も魅力。名古屋場所初日が待ち切れない。

大相撲七月場所 ドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)
7/10~7/24
https://www.sumo.or.jp/Watching/isolate/

撮影/石田壮一 取材・文/康長 健(やすなが・けん)