「身体及び所持品の捜索を受ける」 踏切からして厳重警戒な横田基地の引込線
バイデン米大統領の初来日に伴う航空機受け入れには、横田基地が使われました。この基地へはJR拝島駅付近から、物資輸送のための専用線が敷かれています。途中には踏切も点在しますが、すでに基地内を思わす厳重ぶりです。
横田基地へ通じる貨物専用線
2022年5月22日、岸田首相との会談などに臨むため、バイデン米大統領が初来日しました。東京近郊には羽田空港や成田空港などがありますが、バイデン大統領は往路も復路も横田基地を利用しました。
横田基地は、東京都の昭島市や福生市など周辺の5市1町にまたがる広大なアメリカ軍基地です。また、2012(平成24)年からは航空自衛隊の司令部も置かれています。
横田基地へ向け、JR鶴見線の安善駅付近を走る米軍燃料輸送列車(画像:乗りものチャンネル)。
横田基地の前身は、1940(昭和15)年に開設された多摩陸軍飛行場です。広大な用地を活用し、旧日本陸海軍が飛行場や研究機関を建設、とりわけ太平洋戦争末期は首都防衛の重要な役割を果たしていました。
戦前期から重要地だったこともあり、飛行場には燃料をはじめとする物資輸送を目的に、熊川燃料倉庫線と呼ばれる鉄道が敷設されました。拝島駅付近から分岐し、飛行場南部の燃料倉庫まで達する引込線です。現在も、鶴見臨海部から燃料を運搬する貨物列車が、同線の一部を経由し横田基地まで走っています。同引込線は非電化のため、その貨物列車は拝島駅到着後に機関車を付け替えて横田基地へと入っていきます。
踏切も米軍基地の一部!?
そして、短い区間とはいえ引込線上には公道と交わる場所があり、そこには踏切が設置されています。ただ、一般的な踏切と比べてとても厳重なものです。
横田基地へと続く引込線にも踏切がある(小川裕夫撮影)。
なぜなら、横田基地へと延びる線路用地も、米軍基地の一部とされているからです。踏切から見て線路側はフェンスで塞がれているほか、英語・日本語で書かれた警告看板が至る所に立てられています。
「基地司令官の許可なく此の区域に立ち入ることは法令違反である。当該施設に居る間は,すべての人は身体及び所持品の捜索を受けるかもしれない。不法な立ち入りは, 日本国法律によって罰せられる」
看板の文言からしても、周辺に漂う独特の雰囲気が、否が応にも米軍基地を意識させます。ただ、そうでなくても鉄道用地への立ち入りは違法行為なのですが。
ところで先ほど、貨物列車は「熊川燃料倉庫線の一部を経由」と述べましたが、それは同線の一部がすでに廃線となっているためです。両線は、拝島駅付近から北へと延びている点は同じですが、熊川燃料倉庫線は五日市街道付近から北西へと進路を取っていました。その面影はすでになく、痕跡をたどるのは困難です。