中部国際空港セントレアホテルにあるANA機のコンセプトルーム「ANA ROOM」、人気を博すその室内を取材することができました。実機のシートが一番目立つこの部屋ですが、細かなところにもさまざまな仕掛けが隠されていました。

滑走路が目の前!

 名鉄グランドホテルが運営し、中部空港に隣接する中部国際空港セントレアホテルが、ANA(全日空)グループのANAあきんど名古屋支店とコラボしたコンセプトルーム「ANA ROOM」を2021年から販売しています。コロナ禍の新たな取り組みとして誕生したこの「ANAの部屋」は、「サービス開始から数か月はずっと予約がいっぱいの状況が続いており、現在も休日などは埋まっている」(担当者)という盛況ぶりだそう。どのようなところなのか、取材してきました。


中部国際空港セントレアホテルの「ANA ROOM」(2022年6月14日、乗りものニュース編集部撮影)。

「ANAの部屋」は同ホテルのパシフィックサイド最上階11階の角部屋、1164号室に位置します。32平方メートルの広さを持ち、滑走路を発着する航空機が見られる眺望が特徴のツインルームを、「ANAの部屋」へとアレンジしました。部屋のレイアウト決めなどは、セントレアホテル側で実施したとのことです。

 部屋の壁に沿うように設置されているのは、3人がけのANA機の座席。中部空港のある愛知県を拠点とするトヨタ紡織により開発された、ANA国内線仕様機向けの“本物のシート”です。シート前に置かれたテーブルは、ボーイング777のタイヤホイールから作られたもの。部屋のなかにはモデルプレーンや、ブラックボックス(実機の飛行データやコクピットの音声などが入っている)を始めとする実機の航空機パーツも飾られています。

 このほか、ANA機のものではありませんが、単発プロペラ機「セスナ172」のコクピットを再現したフライトシミュレーターなども設置されています。部屋の壁には、ANAロゴや路線図、出発案内風のイラストなどが描かれています。

 この「ANAの部屋」の仕掛けは、これらの大型グッズの設置だけではありません。

隠れた「ファン向け」仕掛けが出るわ出るわ…。

「ANAの部屋」における航空ファン向けの工夫は、浴室やクローゼットにも。浴室のガラス扉に「ANA」のロゴが描かれています。クローゼットの引き戸を開けた、スーツケースの格納場所には、ANAのチェックインカウンターに設置されている、機内持ち込みが可能な手荷物のサイズを測るためのイラストが隠されていました。

 また、室内に設置されているスリッパはANAのビジネスクラスと同じものが採用されており、ボールペンもビジネスクラスと同じものがプレゼントされるとのことです。


中部国際空港セントレアホテルの「ANA ROOM」(2022年6月14日、乗りものニュース編集部撮影)。

 そして、ホテル担当者によると「おおよそ75%のお客様が頼まれる」という別料金での夕食オプションも、航空ファン向けにアレンジされています。ANAによる監修もうけながら、同ホテル料理長が考案した機内食風のオリジナルメニューが、ANAの実機さながらのトレーに乗って提供。これらのメニューは、ANA機でCAがサービスを行う際に押している「機内カート」を用いて部屋まで届けられるという“徹底ぶり”です。

 担当者によると、宿泊者の客層は男女半々となっており、「旦那様のために奥様がサプライズで予約する」といった宿泊者もいたそう。1万7000円からの宿泊料金となるものの、「県外はもとより、現在は県民割を使ってグレードの高い部屋に泊まりたいニーズもあり、県民の方からもご好評をいただいてる」と話します。