「ゆるキャラ」はどれだけ地域活性化の役割を担っているか? - 渡邉裕二
※この記事は2017年11月25日にBLOGOSで公開されたものです
ご当地キャラクターの日本一を決める「ゆるキャラグランプリ2017」の最終決戦が先頃、三重県津市桑名のナガシマリゾートで行なわれた。その結果、「ご当地部門」のグランプリに輝いたのは千葉県成田市の「うなりくん」だった。
2008年に「新語・流行語大賞」の候補にノミネートされて以来、一気にブーム化した〝ゆるキャラ〟。10年からは「ゆるキャラグランプリ」もスタート、〝くまモン〟や〝ふなっしー〟の人気もあって、地方自治体や企業でマスコットキャラクター熱が高まってきた。
もっとも、昨今は、そのブームも一段落、かつてほどの盛り上がりはなくなってきた感もする。
「くまモン」が熊本県にもたらした大きな経済効果
今年の「ゆるキャラグランプリ」を見てもエントリー数は、ご当地部門で681体、企業・その他部門は477体で合わせて1158体だったそうで、昨年のエントリー数1421体を下回った。
それでも、地方自治体や企業にとってはアピール度の高いものであることは確かだ。経済を担当する記者は「〝くまモン〟の経済効果が大きかった」と言い切る。
言うまでもなく〝くまモン〟は熊本県のPRキャラクターとして大きな経済効果をもたらした。昨年の関連グッズの売上は1280億円にも達した。
「2011年の第2回目の〝ゆるキャラグランプリ〟でグランプリを獲得して以来、一気に人気は全国区となりました。熊本県の許可があれば、誰もがロゴやキャラクターを無料で利用できるという手法も効果的でした。熊本地震後は復興支援のシンボルになっているほどです」。
何だかんだと言っても、そういった〝実績〟もあってかハメを外す事も…。最近では〝くまモン〟のプロモーション活動で、委託企業のスタッフによる飲食で「国の緊急雇用創出資金が使われた」なんて会計検査院が指摘されることまであった。
今や〝ゆるキャラ〟までチェックが及ぶ…。ある意味では「地方自治体にとっては、ゆるキャラに勝るものはない」と言うことにもなるのかもしれない。
四日市のゆるキャラ「こにゅうどうくん」が大躍進
そういった中で、私が注目したマスコットキャラクターが三重県四日市にある。
四日市は名古屋から近鉄名古屋線急行で30分ちょっとの都市。中京工業地帯では代表的な工業都市として知られる。市の関係者によれば「観光に力を入れている」と言うが、なぜか工場のイメージばかりが強く、観光と言う部分ではインパクトに欠ける。で、力を入れているのがマスコットキャラクターの〝こにゅうどうくん〟なのだ。
〝こにゅうどうくん〟は、同市に伝わる〝からくり人形〟の「大入道」の息子という設定で、市制施行100周年だった1997年に生まれたと言う。一昨年の「第66回NHK紅白歌合戦」にも〝出場〟し、得意なダンスを披露し人気を集めた。それだけではない。東海ラジオでは「四日市こにゅうどうくん館」と言うコーナーまで持っている。
今回の「ゆるキャラグランプリ」では4位にランクインした。
「森智広市長の号令もあって大プロモーションを繰り広げました。昨年は17位だったので大躍進でした。来年1月には、こにゅうどうくんの成人式も予定しているので、今回の順位は大きな起爆剤になりました」(シティプロモーション課)。
まるで、マスコットキャラクターが市のシンボルにでもなったかのようだ。
しかも、二十歳を迎えたこにゅうどうくんを祝って今夏には、テーマ曲「SUNRIZE!43~こにゅうどうくんのテーマ~」まで完成した。
「活動の幅を全国に広げて行こうと言うことです。〝成人〟になったことで『これまで以上に四日市のシティプロモーションの一翼を担ってほしい』と言う大きな任務が込められています」(シティプロモーション課)。
ちなみに、テーマ曲をプロデュースしたのは音楽プロデューサーで、パーカッショニストとして松任谷由実や中島みゆき、吉田拓郎、B’z、浜田省吾などの作品にも参加している斎藤ノヴ。そしてボーカルに抜擢されたのは四日市出身で久保田利伸やDREAMS COME TRUE、B’z、KinKi Kidsなどのバックボーカリストとして知られる浦嶋りんこ。作品としては「若者らに応援メッセージを送る」ことをコンセプトに、ポップなダンスミュージックに仕上げている。
「浦嶋のパワフルなボーカルと、こにゅうどうくんのエキサイティングなダンスは注目を集めるはず」と言う。当然、市長も「(こにゅうどうくんと)一緒に四日市を盛り上げていきたいといきたい」とアピールしている。
しかも、〝くまモン〟を見習ってか?同曲は「著作権フリー」としているのが大きなポイント。斎藤や浦嶋を含め楽曲に携わった全員の承諾を得た上で楽曲はJASRACに登録していない。
「市のホームページ上から誰でも自由にダウンロードが出来る他、ダウンロードではなくCDが欲しい人や楽曲利用を希望する人にはシティプロモーション課に問い合わせれば対応します」
と意欲十分だ。
「ゆるキャラグランプリ」開催は2020年で一区切り
ところで「ゆるキャラグランプリ」については、主催者は東京五輪の開催される2020年を一区切りにしたいとしている。「人口減の続く地方は人・物・金を集めるため観光などを通じて知恵を出し合って来た。ゆるキャラも地域再生、地方創生という大きな目標を達成するための一つの手段となってきた」と言う。
しかし、その一方で「ゆるキャラで地方を元気にと思ってやってきたが、(今後は)自治体の人がやればいいことだと思う」とも。
〝くまモン〟以降のマスコットキャラクターは、人気投票は高くても肝心な地域活性のためにどれだけ役立っているのか、明確なものがない。それこそ単なるグランプリを目指し「人気投票」ということだけでマスコットキャラクターを争っているような部分もある。
だとすると、本来の目的でもあるはずの地域再生、地方創生、さらに言うなら地域活性化のためのマスコットキャラクターにならない。
少なからず、税金を使っている以上は、そのマスコットキャラクターが何を目指すのかが問われることになる。そういった意味でも四日市のこにゅうどうくんの今後に注目していきたい。