食中毒防止に向けて、改めて基本の徹底を - 赤木智弘
※この記事は2017年08月27日にBLOGOSで公開されたものです
埼玉県熊谷市の惣菜店で販売されたポテトサラダから、大腸菌O157が検出された問題。(*1)
今のところ、工場のサンプルは陰性、従業員からも菌の検出はなかったということで、客が触ったなどの可能性が浮上。このお店は「大皿に盛られたお惣菜」から客が自ら好きな分量を取って帰ることが売りの1つであり、客から菌が混入した可能性は十分に考えられる。
ただ、まだ詳細は不明ながら、群馬県伊勢崎市内の同系列店の利用客もO157に感染、入院したということで、店舗納入時や客が取り分けるパッケージに付着していたなど、客由来ではない可能性も十分に残っている。
いずれにせよ、感染経路が特定されないことには、客も安心して買い物ができないのはもちろん、店としても苦しいばかりだろう。
さて、この報道があった翌日、僕はたまたまキッズメニューなどがあるようなお店で遅い昼食をとっていたのだが、隣のテーブルから「これは食べちゃダメ」という母親の声が聞こえた。ふと見ると、親がプレートに乗っていたポテトサラダをティッシュにくるんでいた。
アレルギー持ちかな?と思ったが、その後に「食中毒」という言葉が聞こえたので、やはりこの事件を気にしているのだろう。
こうしたときに重要なのはやはり「食品の安全安心に対するリテラシー」なのだと思う。
まず、ポテトサラダで食中毒が出たからと言って、ポテトサラダを避けるというのは、あまりリテラシー能力が高いとは言えない考え方だ。 この一件を皮切りに、ニュースではあちこちの店でO157が出たことが報告されている。しかし、別に報じられてなかった時期にO157等による腸管出血性大腸菌感染症が報告されていないわけではない。
また、ニュースでは基本的には店で発生した食中毒を扱うことから、外食は危険、家で調理すれば安全と勘違いしがちだが、家でも当然食中毒は発生するし、基本的には家庭の方が外食よりも食中毒の危険性は高い。というか、調理の規模が小さければ小さいほど食中毒の危険性は高いと考えていい。
これはざっくりとした指標でしか無いが、大規模な工場ほど衛生管理は徹底しており、家庭や小さな料理屋ほど、そこまでの衛生管理はできなくなってくる。ただしニュースとしては大きな工場やチェーン店で食中毒が発生したときのほうがニュースバリューが高く、報じられやすいので、視聴者としては勘違いしがちなのである。
今年の東京は、あまり夏らしくない夏となった。
8月1日からは21日間連続で降雨が続き、観測史上歴代2位の記録となった。体感でも曇りや雨の日が多く、温度的には過ごしやすかった。しかし一方でジメジメした天気が続き、嫌な暑さが続いていた。温度は高くないとはいえど、湿気があるから菌は当然繁殖しやすい。 東京都ではO157等による腸管出血性大腸菌感染症の報告数の推移を公表しているが、今年は32週目、つまり8月7日から感染症の報告が急増している。(*2)
連続降雨はストップしたものの、その分温度は上がる。まだ食中毒は発生するだろう。今回の食中毒問題を通して私たちが学ぶべきは、ポテトサラダを避けることではなく、改めて食中毒を起こさないために調理の基本を徹底することだ。 O157に対しては「75度1分」と言われる。(*3)
特にハンバーグやスーパーで売っているサイコロステーキなど、加工肉の場合は、表面だけではなく、中心まで75度以上で調理する必要がある。家庭で捏ねた手作りハンバーグは特に注意したい。
竹串などで肉汁が透明になったかを見るのが基本だが、最近は火で表面を焼き付けてから湯煎をする作り方も流行している。湯煎のほうがしっかりと火を通せて安全かもしれない。それでも肉汁チェックは忘れずに。
また、調理の際のまな板も、肉と野菜で別のものを使い、洗うときも漂白剤などをしっかり使って除菌。その後にしっかり乾かすなど、基本を徹底することが食中毒の防止に繋がる。
過度に怖がらず、しかし侮らず。それが食品の安全安心に対するリテラシーの大基本である。
*1:O157感染、新たに伊勢崎でも確認 総菜全17店自主休業(産経新聞)https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170825-00000057-san-l10
*2:東京都感染症情報センター » 腸管出血性大腸菌感染症の流行状況(東京都感染症情報センター)http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/ehec/ehec/
*3:第3回 殺菌と洗浄(特別ふろく付) 加熱|「食品衛生の窓」(東京都福祉保健局)http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/rensai/guide11.html