Switchが品薄でも、任天堂は得をしない - 赤木智弘

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※この記事は2017年07月22日にBLOGOSで公開されたものです

2017年の3月3日に発売されたゲームハード「Nintendo Switch」。

発売されてすでに4ヶ月以上立つが、品薄でなかなか手に入らない状況が続いている。
そして、7月21日にはWiiUで人気だったスプラトゥーンの続編『スプラトゥーン2』も発売され、ますます手に入れにくさに拍車がかかっている。

そうしたなか、家電量販店は数少ない入荷台数をなるべく公平に販売するために、抽選販売を行っている。ところが今回、ビッグカメラ水戸駅店で、順番に渡していた抽選番号に漏れがあり、しかもその漏れた番号が当選するという事態が発生した。これに対して「詐欺」「不正」という声が上がっているという。(*1)

さて、こうした抽選には公平性が求められる。本来であれば多くの人が見ている前で抽選をするのがいいのだが、スペースの都合でそういうわけにもいかないのだろう。

実際にこうした番号抽選は、あらかじめ番号が決まっていることもある。そうした場合だと、当選番号を知っている店員があらかじめ当選番号を抜いて自分の物にしたり、またあらかじめ並ばせておいた友達に渡したり、当選の権利をお金で売ることもできてしまう。

ビッグカメラには、今後はこうした不自然な状況が発生することを防ぐとともに、公正な抽選が行われているということを証明する姿勢が求められるだろう。

それにしても問題は、Switchの品薄である。
そもそもSwitchがいつでも定価で買える状況なら、このような問題はおこらない。任天堂は出荷をサボっているのだろうか?

任天堂は6月22日Switchの品薄を詫びるとともに、7月以降の出荷台数を増やすと発表した(*2) が、まだまだ手に入れにくい状況は続いている。

Switchは、今でも転売による定価以上の販売が行われている状況がある。スプラトゥーン2との同梱版はビッグカメラでの販売が税込みで39000円弱であるのに対して、フリマサイトを検索した所、55000円以上で取引されていた。ざっくりと計算すると転売によって15000円程度の利益が出る商材であり、こうした転売の続発もまた、Switch品薄の原因にもなっている。

また、ネットでは「任天堂が品薄商法で、人気を煽っている」という穿った見方もあるようだが、そもそもゲームのハードというのは、さして儲けのある商品ではない。

任天堂は自社でハードの生産工場を持たないファブレス企業であることはよく知られている。利益はゲームハードそのものの売上げよりは、自社のソフトウェアやサードパーティのロイヤリティで儲けるモデルである。

とすると、ハードが十分に出回っていない状況ではソフトウェアの売上も多くは望めないと言うことになってしまう。任天堂とすれば、ハードが箱に入ったまま市場に高値で流れていても、ソフトウェアの売上やサードパーティの参入には繋がらず、何の旨味もないのである。

Switchの品薄は決して任天堂だけの責任ではなく、様々な要因が重なって発生している。そしていまは品薄でも、いずれは手に入るようになる。僕自身は予約開始日に予約をし、発売当日にSwitchを手に入れることができたが、そうでない人は、もっとソフトが多く出揃うまで待っていてもいいのではないかと思う。

最後に、なるべく早く、Switchを定価で手に入れたい人たちのために、アドバイスを。

都心の山手線圏内にある大型家電量販店は、それなりの入荷数があるが、一方で競争相手も多く、あまり効率的ではない。今回のビッグカメラの記事を見ても分かるように、少なくとも255人以上が並んだ抽選に対して10台しか在庫はなかったようだ。これではいくら抽選に参加しても当たらなくて当たり前だ。

一方で僕は数回、Switchの在庫を見かけたことがある。それはいずれも「都心やターミナル駅から少し離れた地域にある、中堅どころの家電量販店」である。またTwitterなどでは、小さなおもちゃ屋で発見したという報告も多い。

そうしたところには、同じような情報を得た人達が集まると思いがちだが、任天堂Switchのブームはマニアだけではなく、一般の人も多く、そうした情報収集ができていない人も少なくない。情報を得て、論理的に行動を考えることで、確実にライバルの数は減るのである。

*1:ビックカメラで「Switch」抽選販売に不正疑惑、配布のない番号当たる 店側「不手際で欠落していた」と謝罪(ねとらぼ)
*2:「Nintendo Switch本体」品薄のお詫びとお知らせ(任天堂)