※この記事は2014年10月26日にBLOGOSで公開されたものです

現内閣は「すべての女性が輝ける社会」を掲げ、そのために様々な政策が検討されている。この「女性活用」について10月7日に行われた民主党・蓮舫議員と有村女性活躍担当大臣のやり取りが注目を集めた。

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このやり取りは実際には、どのようなものだったのだろうか。当該質疑の中から「政府の女性活用」の部分を書き起こしでお伝えする。(※該当部分は動画上0:35分~0:53分あたり)

有村女性活躍担当大臣「共働きを否定したことは一度もない」

蓮舫:次に女性活躍担当大臣が、今回誕生しました。総理、この大臣を創設した理由を教えてください。

安倍総理:すべての女性がその能力を開花できる社会を作っていく。女性が輝く社会を作っていきたい。その観点から担当大臣を置いたところでございます。

蓮舫:有村大臣、「女性が輝く」。両立支援をされるんですか?

有村大臣:両立とは、それぞれの例えば、子育てと仕事、あるいは仕事と介護とかいろいろなワーク・ライフ・バランスという視点があると思いますけれども、当然両立をしたいと思われる方を支援していくことも大事な価値かと理解をしております。

蓮舫:有村大臣のこれまでのいわゆる言動、あるいはさまざまな発信の内容は、両立支援をしたい女性に歓迎をされるものだったと、今自分で思いますか?

有村大臣:両立をしたいと思われる女性や、その配偶者、男性の方も含めて、是非ご考慮いただきたいところを、信念をもって発信してきたつもりでございます。

蓮舫:平成13年に作られた「日本女性の会」という団体があります。この副会長はですね、有村大臣。自分のホームページでもそれは紹介しています。そして、高市早苗大臣、山谷えり子大臣。数多くの自民党議員の中で、内閣に集中した人たちが副会長を務めているんですけれども、有村大臣、この団体はどういう活動、どういう思想を持った団体ですか?

有村大臣:国務大臣として、特定の団体の主義主張についての見解を述べるのは差し控えなければならない立場にございますが、日本の未来を確かにしたいという思いで、手弁当で全国的に活動されている団体でございます。

蓮舫:「日本女性の会」のサイトの団体の紹介です。「女性が働くことが美徳となり、婚期が遅くなり、子供の数が減り、子供をもつ主婦が働くことで、家事どころか子育てまでも外注され、保育園で夜遅くまで預けられる子どもが増えている。このことが社会を殺伐とさせ、精神的に貧困にさせているということに思いを致さなければ…」。働き、子育てをする女性が、“社会を殺伐”“精神的に貧しく”したんでしょうか?

有村大臣:それは当該団体のご主張でありまして、私の考えとすべて一致するわけではございません。皆様もそうだと思いますが、団体の方々のすべての主張と賛同する団体しか、ご挨拶もしくは演説しないというわけではないと思います。

蓮舫:この会の主張の最初に出てくるのが、この文言です。すべてに賛同してるんですか、とは聞いておりません。文言の最初に出てくることに賛同したんですか。さらにいうと、(平成)23年12月、会の10周年記念式典、副会長として出席をして、「日本女性の会の益々のご活躍に期待する。私自身も家族のきずなの大切さを後世に伝えていくため、保守本道を歩いていく決意をした」とブログで書いている。「保守本道の子育て」とは何ですか?

有村大臣:初当選の頃から、命の重みと家族、地域の絆と国家の尊厳を守るという視点を、軸足を明確にし、この13年間、保守政治家として、守るべきものを守る。すなわち、子供たちや弱い人たちの命を守りきるという政策を一環して手がけてまいりました。

蓮舫:意味が分かりませんでした。

有村さん、平成25年4月のブログで、「ゼロ歳児保育の月額15万円の保育費用を考えたとき、やはりお母さんは家族と共に過ごせる時を提供する方策に重点を置くべき」。両立支援を否定しています。さらに「赤ちゃんの時は、肌を離すな。これが日本の伝統的な子育てであります」。これ、総理も「3年間抱っこし放題」と言っていますから、つまり出産・育児をする女性は、3年間は保育所に預けず、自分で育児をするというのが「保守本道の子育て」ですか?

有村大臣:保育園や幼稚園にお世話にならず、24時間子育てを家ですることが保守本道の歩みだとはまったく考えていません。そのことを大事にされる方々がいらっしゃる、その生き方を尊重しています。

しかし、同時に両方が共働きで働く家庭もたくさんいらっしゃる。我が家もそうでございます。共働きで、核家族でございます。そういう生き方を否定しては絶対にいけない。自分自身もそうやって、選択肢がない中でやっておりますので。そういう方々を支援していくことも極めて大事な女性活躍の一環だと理解をしております。

蓮舫:なるほど。共働きは否定していない。

これは有村大臣が雑誌に書いたエッセイです。下の段です。(※フリップを出しながら)

「保育行政で念頭にしている考えは、両親が責任にあるポジションで仕事をつづけ、十数年以上経って家族機能が破たんし、親子関係において修羅場を経験している方々も実際には少なくありません。親としての権威と自信を示せてこなかったしっぺ返しが数十年後に来るかもしれないというのは本当に怖いリスクです」と書いています。

共働き家庭は、子育てをないがしろにして、親子関係が崩壊するんですか?

有村大臣:今、委員がおっしゃっていただいたのは、「チャイルドヘルス」という子育てあるいは医療関係者が読まれる専門誌の中で、私が寄稿した「新米ママ、国会で走る」の第2回だという風に理解をしております。

しっかりと全文を読んでいただきたいと思っておりますけれども、凶悪犯罪に手を染める子供たちの動向や生い立ちなどについて専門家と意見交換をすると。そういう機会があると。

その中で、「両親が責任にあるポジションで仕事をつづけ、十数年以上経って家族機能が破たんし、親子関係において修羅場を経験している方々も実際には少なくない」という事実関係を書いているだけで、そしてその後、直後に「もちろん、その多くは子供のために精一杯働いてきた。子供思いの善良な両親ですから、ひたむきに働いた結果、家族機能を失うというのは悲しむべき、とても皮肉なことです。仕事の拘束によって、子どもに常にさみしい思いをさせてきたという負い目から、どうしても子供には必要以上に甘くなり、親としての権威と自信を示せてこなかったしっぺ返しが数十年後に来るかもしれないというのは本当に怖いリスクです」と。明確に専門家の意見から、そういう勉強会の機会の中の引用をしているわけでございます。

蓮舫:いや、どんなによく読んでも、共働きの両親の子供は「数十年後に本当におかしくなる」と書いているんです。

有村大臣:蓮舫委員、よく読んでいただきたいと思うのですが、「共働きの家庭が、家族を崩壊する」などということは、一言も書いておりません。私のホームページに全部、この本文が書かれております(※PDF)ので、皆様よく読んでいただいて、共働きのご家庭を否定するような発言は、いままでも一度もしておりませんし、私自身は核家族の共働きをしている、その実証の例でございます。

蓮舫:はい、その実証として、すべての女性が「大臣みたいになりたい」という、そういう言動をしてきているんだったら、私はこんな質問はしていません。

有村さんのこれまでの発信している内容を見ると、やっぱり親は、特に母親は家で子供を見ろと。だけど、今の世の中は、本当に格差が広がって、どんなに肌身を離さず子育てをしたいと思っていても働かなきゃいけない、保育所に預けなきゃいけない、熱が出ても預けなきゃいけない、シングルのお母さんもいる。こういう現実をわかっていないんじゃないですか?

有村大臣:いろいろな事情がおありになることは当然わかっております。シングルマザーで子育てを必死にやっておられる方、一緒にいたいけれども子供たちと週末と夜にも一緒にいられない方、だからこそ蓮舫議員が引用していただいたように、やはりお母さんを初めとして家族と共に過ごせる時間を提供する方策、具体的には子育て世代の所得増や減税につながる政策に重点を置くべきだと申し上げている次第であります。

蓮舫「安倍内閣の考えは、女性活用と真逆では?」

蓮舫:はい、それであれば是非、これは大臣として自民党の政調会長と話し合いをしてもらいたいものがあります。

稲田政調会長、これは2006年の「諸君!」ですが、「保育所増設の政策などを見ていると、本当に母乳を飲んでいる赤ちゃんを預けてまで働きたいと思っているかなど、疑問に思います。」実は、その発言を受け、この議論に参加をしていた山谷大臣も「保育所増設ばかりが少子化対策ではない」と公言をしています。

これは仕事、生活の心配をせずに家庭で育児が出来る人の豊かな発想です。母乳を飲んでいる赤ちゃんを預けてまで本気で働きたいという女性は、私はそんなにいないと思いますよ。稲田大臣の発想、正したらどうですか?

有村大臣:お答えいたします。稲田大臣の発言は、稲田大臣が責任を持たれるわけで、政調会長としての発言は自民党の政調会長として、これからなされるものだと理解をいたしております。

蓮舫:与党の政調会長の発信が、内閣の女性活用と真逆のことを言っていたら、それは議論するのが当然だと思いますが、そう思われないようです。

さらに言うとですね、総理に確認いたしますけれども、政府は2020年までに指導的地位の女性を3割を占めるように、第3次男女共同参画基本計画を進めていきますか?

安倍総理:2020年までに3割の指導的な立場に女性が就くように、我々政策を進めていきたいと考えております。

蓮舫:どういう政策を進めていきますか?

安倍総理:まずですね、来年から公務員の3割を女性を取得することを決めております。そして、各省についても指導的な立場に女性が就くように奨励していくように指示をしているところでございますし、実際に例えば安倍内閣において初めて県警本部長が女性になるということもありました。

ということも含めてですね、各企業にも役員、これはいわば取締役については、上場企業は少なくとも一人、取締役につくようにということをお願いをしているところでございます。

そしてまた今般提出する法案においてですね、そうしたことを奨励するということも、どのように書き込むか今議論をしているところでございます。

蓮舫:はい。その政府が先行して積極的に女性の登用を各分野に目標数値、達成期限を定めて自主的取り組みを進めることを推奨と、今総理も言いましたが、稲田さんは2007年の「別冊正論」で「おいおい、気は確かなのか、と問いたくなる。女性の割合を上げるために能力が劣っていても登用するなどというのはクレイジー以外の何物でもない」。これ以外にも「数値目標に意味があるのかと。計画は逆差別」とまで言っていますけれども、これは女性活躍を進める総理の考えと同じですか?

安倍総理:いままでもですね、政府と自民党、与党との間で意見が対立することはありました。よくあると言ってもいいと思います。しかし、一旦ですね、わが党の場合は方向が決まれば、みんなその方向に進んでいって結果を出せるということではないかと。このように思うわけでございます。

経済界に対して、私から昨年4月および今年6月に女性の登用促進に向けた要請を行いまして、経団連会員企業等が女性の登用に関する自主行動計画の策定・公表に取り組むなど経済界の自主的な取り組みも進んでいるところでありまして、こうした取り組みを着実に前進させるため、企業等における女性の登用の目標や計画の策定を推進する新たな法案を今国会に提出する予定でございます。

その際はですね、当然党においてもですね、議論になるわけでございます。その際、政府の考え方について、与党側に説明をしていきたい。このように考えているところでございます。

蓮舫:はい、今総理がおっしゃいました政府と与党。往々にして意見が対立したり、政策が違う時があって、それをしっかりと見える場所で議論をして国民に説明をするというのは大事だと思うんですが、こと女性活用に関しては、稲田大臣と政府が「女性活躍」という部分では、根本的に思想が違うと思います。

例えば、同じ「正論」で稲田さんは、DV、ドメスティックバイオレンスについても「DVといえば、すべて正当化されると断言。DVは被害者、救済とインプットされ、少しでも疑いを挟むと無慈悲で人権感覚に乏しいと。『そこのけ、そこのけDV様のお通りだ』。お犬様のごとしだ」と書いてあります。これは意見の違いというレベルでしょうか?

安倍総理:稲田政調会長は弁護士として活動も一方しておられるわけであります。そうした観点からですね、いわば被害者、加害者の関係において法と証拠に基づいて、ということでおっしゃってるのかもしれませんし。私は、その発言存じ上げませんから、論評のしようがないということでございます。

蓮舫:おそらく存じ上げないことだろうから、今日委員会でわざと、あえて取り上げさせていただきました。DVは、それは「お犬様」と言ってみたり、「保守本道の子育て」と言って、「子どもを家で育てる」という主張を持っていたり、あるいはその高市大臣なんかは非嫡出子の戸籍の記載は「差別だから、それを撤回しよう」というのに反対したり、夫婦別姓は反対であるとか。なんか私は安倍総理の第二次内閣改造、女性活用とは真逆な方向に進んでいるように思えてならないのですが、杞憂でしょうか?

安倍総理:杞憂でございます。

蓮舫:はい。まったく普通の感覚が通じないところが、私は非常に残念です。次に総務大臣に…

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蓮舫議員は、この後、松島法務大臣の辞任につながったうちわの問題について質問している。