「差別への対応として法規制の是非を議論しなければいけない」有田芳生議員・参議院法務委員会質問書き起こし - BLOGOS編集部
※この記事は2014年03月13日にBLOGOSで公開されたものです
3月15日に行われたJリーグの浦和レッズVSサガン鳥栖の試合において、「JAPANESE ONLY」という横断幕が掲げられ、その内容が差別的であるとして波紋を広げている。この問題は、政治にも波及。3月13日に行われた参議院法務委員会において、民主党の有田芳生議員が、この横断幕問題を含む差別問題に関する質疑を行った。その質疑の内容から、今回の横断幕の問題について語った部分を書き起こしでお伝えする。なお、質疑の様子は参議院インターネット審議中継で確認することができる。谷垣法務大臣「嫌悪の情を禁じえない」
冒頭、有田氏はアメリカの国務省の人権報告書や英国政府のホームページにおいて、昨今の日本におけるヘイトスピーチや差別デモの動きが取り上げられていることを指摘。これにたいして、谷垣法務大臣は「寛容さ、おおらかさという言葉で表現していいかわかりませんが、そういうものが失われている状況に懸念が示されている。今まで私どもが日本のいいところとして誇りに思っていたところを否定されるようで、私も大変残念に思っている」と話した。また、谷垣大臣は事前に有田氏から提出された排外デモの様子を記録したDVDを見た感想として、「こういうような言い方がいいかどうかわかりませんが、一言で言って、『誇り高き日本人はどこにいってしまったんだろう』というような思いがした。本当に嫌悪の情を禁じえない面がある。単に嫌悪の情を禁じえないというわけはなく、社会の中に、あるいは世の中に対立感を引き起こしていくという風に私は思っております」と述べた。
有田議員は昨今の差別デモとそれに対する法務省の対応について質問した後に、「こうした問題は、一部の特殊な例ではなく、日本には差別の土壌があるのではないか」として、Jリーグで掲げられた差別横断幕の問題を取り上げた。
有田議員・Jリーグ横断幕問題関連質疑全文
有田芳生議員(以下、有田):2番目の問題に行きたいと思います。今日の新聞各紙でも報道されておりますが、サッカーの浦和レッズのサポーターが差別横断幕を掲示した問題。このことについてお聞きしたいと思います。まず文科省、細かい経過説明をお願いします。
文科科学大臣官房・永山審議官(スポーツ・青少年局担当):本件につきまして、浦和レッズが所属するJリーグから報告を受けてございます。3月14日の試合当日の経過ですけれども、まず当日17時ごろ、浦和レッズのクラブスタッフから浦和レッズ試合運営委員に対して、埼玉スタジアム内に、「JAPANESE ONLY」という横断幕が掲げられているという報告が入ったと。これを受けまして、17時9分浦和レッズ試合運営本部より、警備会社スタッフに対しまして、「速やかに横断幕を撤去するよう」指示を行った。ただ、横断幕の撤去にあたっては通常トラブルを防ぐために、当事者との合意の上、取り除く手順となっているが、試合中だったこともあり、当事者を特定することができず、最終的には試合終了後の18時4分に強制的に撤去することになった。以上でございます。
有田:この問題、なかなかそこまで報じられておりませんけれども、日本の新聞は今朝も報じていますけれども、実は例えば、外国で言えば、カナダ、オーストラリア、あるいは報道機関でいうとアルジャジーラ、韓国の報道メディアですね。世界的に報道されている。これまた、「日本はいったいどうなっているんだ」という問題として取り上げなければいけない。これ差別的行為じゃなくて、差別なんですよね。
はじめ浦和レッズの方は「差別的行為になるかもしれない。掲げた人間がどう考えていたのかわからない」というような対応だったのだけれども、皆様に資料1の左側にですね、その浦和レッズのサポーターが掲げた「JAPANESE ONLY」の写真です。その背景にチラッと出てますけれども、旭日旗もそこにあるんですね。これはビデオも含めて、現場にいった方々ならわかると思うんですけれども、日本全国で今なお続いている差別デモが、やはりあの旭日旗と共に行われている。しかも、この浦和レッズの問題はですね、これまでやはり土壌があったという風に、やはりクラブの方でも認識しつつあるということなんです。
これ非常に深刻な問題なのは、国際的に報じられているというだけではなく、浦和レッズの社長が昨日、記者会見をやりまして、「クラブの危機だ。あの状況は差別と捉えるしかない」と。差別なんだと。それを浦和レッズのサポーターが行ってしまったという、非常に危機感を示されていて、社長は横断幕に気付いたのに、試合が終わるまではずせなかったことが大きな問題だと。そういうしっかりとした対応をしてくださっているんですよね。
この差別横断幕を掲示したのは複数で、浦和レッズとしても何度か事情聴取を行って、その背景なども明らかにしながらですね、上部組織に報告をして、金曜日の報告という風にきいておりますけれども、厳正な処罰を行われるという風に、浦和レッズからも返事が来ております。
かつてもですね、浦和レッズからの文書によれば、2010年5月15日に宮城スタジアムで行われた試合で浦和のサポーター、これは極々小規模なんですけれども、本当に浦和レッズの真面目なサポーターの方々や選手の方々には、本当に不幸なことなんですが、当時も差別的発言が行われてですね、帰りのバス乗り場においても、仙台のチームバスにたいして、差別的発言があって、Jリーグから譴責および制裁金500万円が課せられた。非常に厳しいんですよ。これはFIFAも含めて、そういう差別事案については徹底してなくしていかなければいけないという立場ですから、そういう厳しい対応が行われている。
しかも問題なのは、「JAPANESE ONLY」という掲示がなされただけではなくて、特定の選手にたいするブーイング、差別的発言が行われているんですよ、これまでも。先日も、この「JAPANESE ONLY」が掲げられたときも、今浦和レッズが調べているんですけれども、韓国人で在日4世の選手で日本に帰化した方なんですけれども、その選手にたいして差別的な発言が行われている。ただ、そのこともスタンド内に配置した警備会社スタッフから試合中に差別的な発言が聞こえたとの報告を受けており、今浦和レッズは事実確認をしているというんですね。こういうことが起きている。
FIFAとか日本サッカー連盟、Jリーグの規約とか、サッカー協会の懲罰規定、いろいろありますけれども非常に厳しい対応をとるという、そういうことが浦和レッズは今取り組んでいらっしゃる。
何度も繰り返しますが、本当にごくごく一部の差別行為によって、多くのサッカーファンに非常に衝撃を与えているだけではなく、国際的にも繰り返しになりますけれども報じられてしまってる。そういう状況の下で、「『JAPANESE ONLY』って、これ日本選手ががんばってくれっていうことじゃないの?」とかそういうような解釈をする方がメディアにもいて、新聞社なんかもTwitterでそういう発言をしてたのですけれども、果たしてそうなのか。その新聞記者は後で謝罪、訂正をしておりますけれども、外務省にお聞きをします。これまで「WHITE ONLY」、資料の一番右側に写真を掲げておきましたけれども、アメリカの黒人差別あるいは南アフリカのアパルトヘイトなど、この「WHITE ONLY」というのは、どういう意味合いで歴史的に使われてきたんでしょうか?
木原誠二外務大臣政務官:お答え申し上げます。既に委員の方から答弁のかなりの部分をおっしゃっていただいたかと思いますが、「WHITE ONLY」とは正に米国やアパルトヘイト政策がとられた南アフリカにおいて、かつて公共交通機関や施設の利用、そういったことにあたって、白人のみを優遇するためにとられていた政策であると、このように理解をしております。
イギリスには、「サッカー犯罪法」がある
有田:差別ですよね。そういうことが歴史的にも「WHITE ONLY」という掲示で行われてきた中で、日本で「JAPANESE ONLY」ということが、今日もマスコミの問題にあがっている。しかしですね、確かにFIFA、日本サッカー協会、Jリーグなどが、非常に厳しい対応をとってくださるということは、非常に差別をなくしていく上で、啓発としても、現実的な対応としても、重大な措置だと思いますが、例えばですね、法務省にお聞きをしたいのですが、イギリスにサッカー犯罪法というものがあるのはお聞きでしょうか?
萩原人権擁護局長:ただいまのご質問については、まだ把握をしてございません。
有田:申し訳ございません。把握していないとわかっていて、ちょっと意地悪だったかもしれませんが、お聞きをしました。
つまり、まだまだ出発点に我々はあるということだと思うんですが、イギリスは公共秩序法というものが元々あって、それに基づいてサッカーのフーリガンの対策で、そういうものは厳しく対処するということがあったんですが、ただし公共秩序法では差別的な野次などには対処できないということで、1991年にサッカー犯罪法というのを作ったんですよ。それで法務長官による同意が不要で軽犯罪として起訴ができるようになったんです。ただし、サッカー場で一斉にはやし立てたら、誰が言ったのかわからない、ということになりますから、ある特定の人物が人種差別的な発言を行った場合には、その人だけでも起訴できるというように1999年にサッカー犯罪法は変わりました。そういう法律が、イギリスにはあって、例えば2010年から2011年度の一年間で、サッカー犯罪法によって起訴されたのは11件あるんですよ。そういうものが、イギリスには例えばある。
今回の浦和レッズの問題についても、日本にそういう法律はないですか、「困ったもんです」というサッカー関係者もいっらっしゃるわけで、これはまた新たなテーマとして人種差別撤廃条約に基づいて、4条のA項、B項を留保している日本だけれども、そこでいいのかどうかという新しい法的な対応。つまり、あの法規制の是非について、谷垣大臣も含めて、これからやはり日本は議論していかなければいけない段階だという風に思っております。
ーこの後、有田議員は、こうした「JAPANESE ONLY」の掲示は、日本全国の飲食店などに現在でも存在することを指摘している。
■出典:参議院インターネット審議中継