クリス・ロックにビンタするウィル・スミス(写真:ロイター/アフロ)

 3月27日(日本時間28日)におこなわれた第94回アカデミー賞授賞式で、司会を務めたクリス・ロックにビンタ事件を起こしたウィル・スミス

 原因は、スミスの妻で女優のジェイダ・ピンケット・スミスをめぐるものだった。脱毛症に悩むジェイダについて、ロックは壇上から「次は『G.I.ジェーン』の続編を楽しみにしているよ」とからかった。『G.I.ジェーン』は、米海軍に所属する女性将校が丸坊主になって訓練する物語だ。

 このジョークに対し、スミスが激昂し、壇上のロックに歩み寄って平手打ちを見舞った。

 翌日、スミスは自身のインスタグラムを更新。「クリス、あなたに公式に謝罪したい。私が間違っていた」とし、「ジェイダへのジョークが耐えられず、感情的に反応してしまった」と謝罪の言葉を綴っている。

 世界中が注目するアカデミー賞授賞式での出来事でもあり、この騒動は世界中で話題となった。日本では、妻をかばおうとしたスミスに賞賛の声が集まっている。

《こりゃ100パー相手が悪いわ。妻の屈辱のために立ち上がったウィル、やっぱりかっこいい》

《俺がウィルの立場だったら当然同じ事するよ。ウィルは平手にしたのは頑張ったな。俺ならぐーで殴ってる。世界中が見てる中で愛する妻を侮辱されたんだぜ。耐えられんよ》

《誰になんと言われようとも、ウィルは正しいことをしたと思う。あのシーンを観て、そうはいっても暴力はよくないと考えるのは、思慮が浅く短絡的》

 ロックの行き過ぎたジョークが引き金になった今回の騒動だが、賞を主催するアカデミーは「昨夜の式典でのスミス氏の行動を非難する」との声明を発表。正式に調査を開始するとし、「内部規定や行動規範、カリフォルニア州法にのっとり今後の対応を検討していく」と説明。

 米紙『ロサンゼルス・タイムズ』は、スミスが『ドリームプラン』で受賞した主演男優賞を剥奪される可能性を指摘しており、今後の俳優人生に影響を与えかねない状況になっている。

 海外のエンタメに詳しい芸能ジャーナリストがこう話す。

「アメリカの調査会社がこの騒動でどちらが悪いのかアンケートしたところ、『ロックが悪い』52%、『スミスが悪い』48%と、五分五分でした。

 日本ではスミスに称賛の声が数多く上がっていますが、アメリカでは批判的な声も多いんです。

 たとえば、コメディアンのロージー・オドネルは『ナルシストの狂人のような、有害な男らしさ』と批判し、女優のミア・ファローも『これはただのジョーク。ジョークはクリス・ロックの仕事』とツイート。 ジャーナリストのマリア・シュライバーも『愛は暴力ではない』と非難しました」

 なぜスミスが悪いのか、日本人の感覚ではわかりにくいが、銃社会のアメリカでは、揉め合いがエスカレートして事件に発展しないよう、暴力が厳しく取り締まられている。いかなる暴力も犯罪と見なされており、それが有名人ならなおさらだ。

「さらに、アメリカのコメディ業界には『ロースト』という文化が根付いています。ローストは、著名で信頼のおける人物の短所をあえてネタにするもの。アカデミー賞のような伝統的な場面だからこそ、ロックがジェイダをネタにしたのではないかと言われています」(前出・芸能ジャーナリスト)

 今回の騒動で、ロックには大きな順風が吹いているという。

「ロックは、4月2日から『Ego Death World Tour』というコメディツアーが控えており、全米で公演がおこなわれる予定です。このツアーのチケットが、ビンタ騒動以降、大幅に値上がりしているんです。

 3月18日の時点で、チケットは最低46ドル(約5600円)でしたが、騒動後は341ドル(約4万2000円)まで跳ね上がりました。

 また、チケットの二次流通サイトでは、騒動が起きた27日の夜から翌日にかけて販売されたチケット枚数が、先月1カ月ぶんの販売枚数を上回ったことも明らかになっています」(同)

 賛否両論を巻き起こしたスミスの行為。結果的にはジョークを飛ばしたロックが勝ち組になった可能性が高いのだ。