JR東日本の駅から中間改札、通称「のりかえ改札」が消滅します。京浜東北線から分岐する鶴見線では、さらに自動券売機の運用も終了し、駅でのICカードのチャージすら不可に。一方、JR西日本ではのりかえ改札機を新たに設置するという、逆の流れになっています。

鶴見線のりかえ改札機はなぜ必要だったのか?

 JR東日本が鶴見駅の「鶴見線のりかえ改札機」について、2022年2月28日をもって撤去する予定です。これにより、JR東日本の駅では中間改札、通称「のりかえ改札機」が消滅することになります。そもそもこの改札機、なぜ必要だったのでしょうか。

 結論から言うと、鶴見線の各駅が無人駅になっているためです。京浜東北線から乗り換える始発の鶴見駅にのりかえ改札機を設けることで、鶴見線の各駅から京浜東北線への乗車、または京浜東北線から鶴見線各駅への切符のチェックをまとめて行っています。


2022年2月28日をもって撤去される鶴見駅の「のりかえ改札機」(2022年2月、柴田東吾撮影)。

 かつては、のりかえ改札機がある場所に有人の精算所も設けられていたのですが、1990年代に自動改札機が導入され、少し奥まったところで運賃・切符の精算もできるようになっていました。その後、改札機自体は更新が行われて新しいタイプに交換されています

自動改札機のない鶴見線

 JR東日本では2001(平成13)年11月から「Suica」(スイカ)のサービスがスタートしましたが、鶴見線への導入は翌年3月でした。鶴見線では、鶴見駅を除き自動改札機を設置せず、簡易Suica改札機を設けて対応しています。


海芝浦駅に設置の簡易Suica改札機(2013年6月、柴田東吾撮影)。

 鶴見線は、鶴見駅を経由して沿線の工場などに通勤している利用者が圧倒的に多く、鶴見線内だけを利用する乗客がほとんど見られないのが現状です。鶴見線にSuicaが導入されてから20年が経過しようとしている現在、駅の利用者を観察している限りでは、大半の乗客がSuicaを利用しているように見られます。

キャッシュレス化がはじまる鶴見線

 今回、鶴見線では鶴見駅のりかえ改札機の撤去とあわせて、各駅における自動券売機の取り扱いも終了します。鶴見駅をのぞき、線内の駅では切符の購入やICカードへのチャージができなくなるのです。


鶴見駅に掲示されている鶴見線自動券売機取り扱い終了の告示(2022年2月、柴田東吾撮影)。

 鶴見線の各駅からの乗車にあたっては、Suicaをはじめとする交通系ICカードを利用するか、乗車駅証明書発行機で乗車駅証明書を発行する形などで対応することになります。

 結果として、鶴見駅を除く鶴見線各駅では現金の取り扱いがなくなり、キャッシュレス化が実現します。「IT・Suicaサービス」の拡充と業務効率化が目的のようです

増加するJR西日本ののりかえ改札機

 一方、JR西日本のアーバンネットワーク・近畿エリアの各路線では、ICカードとして「ICOCA」(イコカ)の導入が進められ、利用エリアが順次拡大しました。のりかえ改札の撤去を進めてきたJR東日本とは対照的に、JR西日本ではのりかえ改札機の設置が進行し、なかにはICOCAの導入に合わせてのりかえ改札機を設置した例もあります。

 たとえばJR神戸線(山陽本線)の兵庫、加古川、姫路の各駅、阪和線の和歌山駅に、のりかえ改札機があります。兵庫駅では、和田岬線とも呼ばれる山陽本線の支線が分岐していますが、終点の和田岬駅は無人駅のため兵庫駅で和田岬線の精算ができるようにしているのです。


姫路駅に設置の姫新線・播但線とののりかえ改札機(2016年10月、柴田東吾撮影)。

 加古川駅では加古川線が分岐していますが、加古川線も無人駅が多く、鶴見線と同じようなかたちで加古川駅にのりかえ改札機を設けています。JR神戸線と加古川線の間で乗り換えを行う利用者の切符をチェックしているのです。

 姫路駅も同様な事情で、こちらは山陽本線から分岐する姫新線や播但線の利用者の切符をチェックしています。姫新線と播但線では2016(平成28)年3月から姫路方の一部の駅でICOCAが利用できるようになりましたが、これと合わせてのりかえ改札機が設置されました。

 和歌山駅では、阪和線と和歌山線などが接続していますが、2018年3月に和歌山線側へのりかえ改札機が設置されました。和歌山線内も無人駅が多いために、和歌山線の利用者に対して切符をチェックしています。なお、和歌山線の全線でICOCAが利用できるようになったのは2020年からです。

 このように、JR西日本では分岐する路線に無人駅が多いことから、のりかえ改札機を増やしているようです。