タマネギを切ると涙が出てくるのは、壊れた細胞に含まれる酵素の働きで揮発性の催涙成分が合成されるためです。ところが、アメリカでは2018年から涙の出ないタマネギ「Sunions」が販売されており、2022年からはイギリスでも販売が開始されるとして話題になっています。

No More Tears - Sunions® Are Here

http://www.iheartsunions.com/

No goggles required: ‘Tearless’ onions go on sale in UK supermarkets | Retail industry | The Guardian

https://www.theguardian.com/business/2022/jan/11/no-goggles-required-tearless-onions-go-on-sale-in-uk-supermarkets

タマネギを切ると涙が出てくるのは多くの人にとって悩みの種であり、「ゴーグルを付ける」「鼻にティッシュを詰める」「切ったタマネギを水につける」といった多様な対策が考案されています。タマネギを切った際に催涙成分が作られるメカニズムについては、ハウス食品グループの研究者である今井真介氏が2002年に論文を発表しており、2007年には遺伝子組み換え技術で催涙成分合成酵素を抑制した「涙の出ないタマネギ」が開発されました。今井氏はこの業績を評価されて、2013年にイグノーベル賞の化学賞を受賞しています。

なお、遺伝子組み換え技術を使って催涙成分合成酵素を抑制した涙の出ないタマネギは市場に出荷されていませんが、ハウス食品グループは品種改良で作った「スマイルボール」という涙の出ないタマネギを販売しています。

涙の出ない玉ねぎ”スマイルボール”の栽培研究

https://housefoods-group.com/kenkyu/researchactivitiescase/smileball.html

アメリカでも、遺伝子組み換えではなく30年にわたる品種改良で作られた「Sunions」という涙の出ないタマネギが、食料品店へ出荷するために栽培されています。辛みや涙を誘発する成分が少ないSunionsは、オハイオ州立大学や化学メーカーのBASFによって「涙が出ない」と認定されており、通常のタマネギよりも甘みがあって食べやすい味とのこと。



YouTubeで公開されている「Sunions」のCMがこれ。

Why We Cry - Introducing Sunions™ - America's First Tearless Onion - YouTube

世の中は「涙が出てしまう出来事」にあふれています。



たとえば、うっかりアイスクリームを落としてしまったり……



気合を入れて描いていた絵に鳥のフンがかかったり





誕生日ケーキが落ちてしまったりと、もう泣くしかない状況もあります。





しかし、「タマネギを切る」という行為は別に悲しいわけではなく、できれば泣かずに済ませたいもの。



Sunionsは切っても涙が出ない、甘くておいしいタマネギです。



タマネギをSunionsに切り替えて節約した涙は……



「本当に泣きたい時」に流せます。



アメリカの食料品店では2018年からSunionsが販売されてきましたが、2022年からはイギリスのスーパーマーケットであるWaitroseでもSunionsの販売が始まると報じられました。WaitroseのタマネギバイヤーであるPaul Bidwell氏は、「Sunionsのようなタマネギの甘さは、サラダから温かい料理までさまざまな料理に完璧に適しています」と話しています。

しかし、Sunionsは特別なタマネギなだけあって、Waitroseが販売する自社ブランドのタマネギより1個当たりの価格が3倍ほど高いとのこと。イギリスの大手日刊紙であるThe Guardianは、「Sunionsは普通のタマネギよりずっと高価なので、とにかく食材費が上がっている中であなたに涙を流させるかもしれません」と述べました。

なお、ハウス食品グループが開発したスマイルボールは日本でも購入可能ですが、2021年産の販売はすでに終了しており、次回は2022年秋頃の販売を予定しているとのことです。

スマイルボールを購入できる場所 | ハウス食品グループ本社

https://housefoods-group.com/activity/smileball/shop/index.html