横浜港を発着し、京浜工業地帯の“工場夜景”を満喫するクルーズがリニューアル。新しい船は屋根上から360度の展望を楽しめるほか、川崎の工場地帯の最深部までルートが延びました。船上から見えるもの、その全てが超スケールです。

船、橋、煙突…すべてが超スケールの大スペクタクル 駅も!

 横浜港でレストラン船や水上バスを運航しているポートサービス(横浜市中区)が2022年1月8日から、夜の京浜工業地帯を海から眺める新ツアー「Kawasaki 超 工場夜景クルーズ」を始めます。就航したばかりの新型船「SEA BASS ACE」(19総トン)を投入し、山下公園から工場が立ち並ぶ川崎の大師運河までを約90分かけて巡ります。運航開始に先立つ2021年12月16日には関係者向けの試乗会が開かれました。


山下公園の船着場から見た横浜のイルミネーション。出だしでこのきらびやかさ(深水千翔撮影)。

 山下公園観光船乗り場を出発した「SEA BASS ACE」は一路、京浜運河へと向かいます。ここでは横浜港の玄関口である大さん橋客船ターミナル、そしてイルミネーションに彩られた、みなとみらいのビル群を見ることができます。運が良ければ、大さん橋から出港したばかりのクルーズ客船やレストラン船「ロイヤルウイング」の姿を捉えられるでしょう。

 イルミネーションの光が遠くなった頃、船は大黒大橋をくぐり京浜運河に入ります。この日は大黒ふ頭に商船三井の自動車運搬船「AMETHYST ACE」(6334台積み)が接岸しており、まるで巨大な壁のような迫力ある船体をすぐ近くで観察することができました。

 横浜市のゴミ焼却工場(鶴見工場)とLNG火力発電所「扇島パワーステーション」の煙突を左右に見ながら進んでいくと、左手に東芝エネルギーシステムズ京浜事業所の工場建屋、そして東芝グループの関係者しか乗降できない駅として有名なJR鶴見線の海芝浦駅が見えてきます。

 日本でも有数の「海に近い駅」である海芝浦駅の全景は、海側からしか撮れません。そこに差し掛かったらぜひ撮影に挑戦してみましょう。夜の海と工場の間に浮かび上がるプラットホームの明かりの良さはなかなかのものです。

 日清製粉の鶴見工場に近づくと川崎市に入り、外航バルカー(ばら積み貨物船)が接岸している様子を目にするようになります。扇町には海外から運んできた石炭の荷役を行う三井埠頭のアンローダーや、近未来的な青色の光が特徴的な川崎天然ガス発電所、少し奥にあるJR東日本川崎火力発電所などを見ることができ、ここが首都圏のエネルギーを支える場所であることが伺えます。

飛行機好きにもたまらない!?

 右手に並ぶ東亜石油オイルターミナルの石油タンクや、東扇島の岸壁に接岸した内航タンカーやRORO船を眺めていると、「SEA BASS ACE」は左に舵を切り、目的地である大師運河へと入っていきます。

 このあたりは絶好の工場夜景スポットで、船は速度を落として運航します。光に照らされ幻想的な雰囲気の昭和電工川崎事業所や日油大師工場、東亜石油水江発電所などを、じっくりと眺め、水面に映る明かりと絡めて写真を撮ることができました。羽田空港にも近いため、上を見上げれば航行灯を輝かせながら離陸していく旅客機が見られるのも魅力的です。

船の「屋根上」から夜景一望できるように!


速力15ノットで京浜運河を駆ける。ルーフトップから夜景を360度眺められる(深水千翔撮影)。

 ポートサービスは2009(平成21)年から山下公園発着の「京浜工場夜景とみなとみらいクルーズ」を運航していたものの、速力と時間の制約から南渡田運河までしか行けませんでした。

 今回の「Kawasaki 超 工場夜景クルーズ」は、そのリニューアル版。2021年10月に就航した「SEA BASS ACE」の運航速力は15ノット(約27.8km/h)と従来船に比べて5ノット程度のスピードアップが図られており、横浜から見て京浜工業地帯の最奥部といえる大師運河まで行けるようになったのです。

 また、同船はルーフトップデッキを備えており、屋根上から工場や埠頭の様子を360度たっぷりと見渡すことができるようになったのも大きな変化です。夜景スポットで止まった時に船が揺れないようにするため、アンチ・ローリング・ジャイロを搭載したほか、船内からも楽しめるように大きい窓を採用するとともに、さまざまな人に安心して乗ってもらえるようバリアフリーにも対応しています。

 このクルーズは金・土休日に実施。運航ダイヤは山下公園観光船乗り場17時10分発(10月〜2月の期間限定)、19時発の2便で、料金は大人4500円、子供3000円。ポートサービスでは今後、「SEA BASS ACE」を活用し、羽田空港クルーズや大岡川花見クルーズなどを企画していきたいとしています。