鎖骨の痛みがずっと続く場合は整形外科へ!考えられる病気や対処法を徹底解説

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鎖骨が痛いとき、原因は何か心配になりますよね。ここではMedicalDoc監修医が、鎖骨が痛む症状で考えられる病気や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状が続く場合は、迷わず病院を受診してください。

監修医師:
村上 友太 医師(青森新都市病院)

医師、医学博士。福島県立医科大学医学部卒業。福島県立医科大学脳神経外科学講座助教として基礎・臨床研究、教育、臨床業務に従事した経験がある。現在、脳神経外科専門医として市中病院で勤務。
日本脳神経外科学会認定脳神経外科専門医、日本脳卒中学会認定脳卒中専門医、日本神経内視鏡学会認定神経内視鏡技術認定医。日本脳神経コングレス学会、日本認知症学会、抗加齢医学会などの各会員。

「鎖骨の痛み」の症状で考えられる病気と対処法

鎖骨の痛みがある場合、鎖骨付近の神経が圧迫されていたり、血流障害が起きたり、筋肉痛や五十肩、肩こりなどが起きていることが多いでしょう。しかし、なかには、肺の病気のサインだったり、鎖骨付近のリンパ節が腫れて感染症にかかっていたり、悪性疾患の可能性もあります。症状に合わせて病気と対処法をご紹介します。

鎖骨が痛いときの原因と治し方

腕をあげる動作の時に、鎖骨や肩甲骨周辺に痛みが出たり、手にしびれが生じる症状が当てはまります。このような場合、胸郭出口症候群などが疑われます。

胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)

胸郭出口とは鎖骨の下あたりに位置し、首と胸の間にある通路で神経や血管など多くの器官が混み合っています。この通路で神経や血管が圧迫されることによって、神経障害や血流障害を起こして、痛みやしびれを引き起こすのが胸郭出口症候群です。なで肩の女性や、重いものを持つ仕事をする人に多くみられます。すぐにできる処置としては、背筋を伸ばし、少し肩をすくめたような姿勢をとることです。鎖骨と肋骨の間に隙間ができ、圧迫が緩まり、症状が和らぐ可能性があります。腕をあげる動作や、重いものを持ち上げるような運動や動作を避けましょう。しびれや痛みが強い場合は、早めに整形外科を受診しましょう。

鎖骨の下のリンパ節が痛い、左右どちらかの周辺・リンパ節が痛いときの原因と治し方

鎖骨の下のリンパ節が腫れ、しこりができて、痛みを伴うことがあります。このような場合、細菌やウイルスなどの感染によってリンパ節が腫れている可能性と、悪性リンパ腫の可能性があります。左右どちらかのリンパ節が腫れている場合には、がんのリンパ節転移の可能性があります。
細菌やウイルス感染によるリンパ節の腫れは、多くの場合、押すと痛みがあります。感染が治れば自然に腫れと痛みは消えていきます。ウイルス感染には休養と栄養補給が重要です。

悪性リンパ腫

悪性リンパ腫は、リンパ球ががん化し増殖してしまう病気です。いつまでもリンパ節の腫れやしこりが続く、次第に大きくなるという特徴があります。また、体重減少や高熱、ひどい寝汗などの症状が出ることもあります。

がんのリンパ節転移

また、体の他の部分にがんがあり、それが鎖骨のリンパ節に転移して鎖骨付近のリンパ節が腫れたり痛みや痺れを引き起こすことがあります。右の鎖骨の近くのリンパ節が腫れる場合は肺や食道、胃などの消化器の癌が転移している可能性があり、左の鎖骨の近くのリンパ節が腫れる場合は胃や膵臓などの腹部の癌が転移している可能性が考えられます。
がんは早期の治療が大切ですので、疑わしい場合はできるだけ早く内科・血液内科を受診しましょう。

鎖骨の下が痛くて息苦しいときの原因と治し方

鎖骨の下が痛くて息苦しい、息切れがする、胸が痛むなどがこの症状の特徴です。この場合、気胸などが疑われます。

気胸(ききょう)

気胸とは、肺を包む膜に穴が空いてしまい、空気が漏れ出て、肺が縮んでしまう病気です。息を吸ってもうまく酸素が肺に取り込めず、重症な場合は呼吸困難に陥ることもあります。若い痩せ型の男性に多くみられます。すぐにできる対処法は、無理な姿勢や運動をしないで安静にすることですが、痛みが激しい時や息苦しさがひどい時は緊急で呼吸器内科を受診しましょう。呼吸に関わる病気ですので、症状が軽い人も早めに受診したほうがいいでしょう。また、気胸は再発を繰り返すことの多い病気ですので、一度かかった人は引き続き注意が必要です。

腕を上げたり肩を下げると鎖骨が痛い、首から鎖骨にかけて痛い場合の原因と治し方

腕の上げ下げなど、肩の周りを動かす時に痛みが出ることがあります。また、首筋、首の付け根から鎖骨や肩、背中にかけて痛みがある、張った感じがするなどの症状をきたすことがあります。
このような場合、肩関節周囲炎肩こりなどが疑われます。

肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)

肩関節周囲炎とは、肩関節を構成する上腕骨、肩甲骨、鎖骨の三つの骨と、その周りの組織の軟骨、靭帯、腱が老化し、周囲の組織に炎症を起こす病気です。一般には五十肩とも呼ばれ、40-50代に多くみられます。痛みのため腕や肩の動きが悪くなったり、さらに進行すると肩関節の可動域が狭くなり腕が後ろまで回らなくなったりします。対処法としては、痛みが強い時は安静にし、消炎鎮痛剤を内服することが有効とされています。肩関節周囲炎は自然に治ることもある病気ですが、回復までに1年ほどかかることもあります。

肩こり

肩こりは、首や背中が緊張するような姿勢での作業や猫背、なで肩、ストレス、運動不足などが原因と考えられています。肩を上下させる体操や、蒸しタオルなどで肩を温めると症状が和らぐ可能性があります。緊急性は高くありませんが、生活に支障がある場合は整形外科を受診しましょう。

鎖骨の真ん中のくぼみを押すと痛い場合の原因と治し方

鎖骨の真ん中のくぼみあたりが痛い、腫れるという症状が当てはまります。このような場合、関節リウマチ掌蹠膿疱症性関節炎などが疑われます。

関節リウマチ

関節リウマチは、免疫の異常により体の関節が腫れたり傷んだりする病気です。朝方に関節の周囲がこわばることが多く、30-50歳代の女性に起こりやすい病気です。関節リウマチというと手や足指の関節に症状が見られるイメージですが、鎖骨の関節に現れることもあります。初期は自然治癒することもありますが、進行すると骨や軟骨が破壊され動かせなくなるため、早期治療が重要です。早めに内科・膠原病内科・リウマチ科を受診しましょう。

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)

掌蹠膿疱症とは、手のひらや足の裏に水膨れや膿が繰り返しできる病気です。この病気の合併症で関節の炎症が起きることが知られています。鎖骨の真ん中は最も掌蹠膿疱症の合併症の関節炎が出やすい場所で、鎖骨の間が腫れたり痛む症状が見られます。原因は不明ですが、喫煙や扁桃炎、ストレスなどと関わりがあると考えられています。病院での治療が主な対処法であるため、皮膚科や整形外科を受診しましょう。

すぐに病院へ行くべき「鎖骨の痛み」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

鎖骨が痛くて呼吸困難がある場合は、救急科へ

突然の胸の痛みと呼吸しづらくなることが特徴的な症状で、皮膚が青っぽく変色することもあります。
このような場合は、緊張性気胸が疑われます。気胸は、肺の空気がもれ、息を吸っても肺が広がらず呼吸がうまくできなくなる病気ですが、緊張性気胸は、その漏れてしまった空気が肺や心血管を圧迫している状態です。放置すると呼吸状態が悪化するだけでなく、ショック状態になるため致命的な病気です。緊急で治療が必要であるため、すぐに救急車を呼びましょう。

「鎖骨の痛み」が特徴的な病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「鎖骨の痛み」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

鎖骨骨折

鎖骨に痛みがある場合、鎖骨を骨折している可能性があります。
鎖骨骨折は全骨折中10%を占めるほど多く見られる骨折です。スポーツや交通事故、転倒などによって、肩や腕に衝撃を受けて折れることがあります。骨折部には皮下出血や腫れ、痛みが生じます。ヒビが入った程度の軽い骨折だと、折れているかは外見からはわからないので、画像検査をする必要があります。骨折を放置しておくといつまでも痛みが続く、骨が変形したまま癒合してしまうこともあります。骨折を疑った時は必ず整形外科を受診しましょう。

「鎖骨の痛み」を和らげるストレッチを紹介!

鎖骨の痛みの原因が、胸郭出口症候群の場合のストレッチ方法をご紹介します。
胸郭出口症候群とは、首から鎖骨部分にある血管や神経が圧迫されることで痛みやしびれを生じる病気です。

ストレッチの方法
ストレッチを行う時は、タオル、運動着、水分などを用意しておくといいでしょう。
①壁などに手のひらを引っ掛ける
②反対の手や腕を後ろに動かし、胸を開いていくような動作を行う。
30秒程度を3セットしましょう。

痛みが激しい場合、痛みが強くなる場合は、ストレッチを中止してください。
鎖骨を骨折している可能性がある時は、ストレッチは逆効果です。患部を触らず動かさないようにして、早急に整形外科を受診しましょう。

「鎖骨の痛み」があるときに飲んでも良い・塗っても良い市販薬は?

鎖骨の痛みが肩関節周囲炎など、筋肉や関節に炎症を起こしていることが原因である場合は、病院を受診するのが一番ですが、すぐに受診できない時は市販薬を使用してもいいでしょう。
炎症を抑える貼り薬・湿布薬などがあります。ジクロフェナクナトリウムという鎮痛成分などを含む貼り薬は、市販薬の中では鎮痛効果が高く、痛みが激しい場合には効果が期待できます。湿布薬のほか、ローションやゲルなどの塗り薬でもいいでしょう。
貼り薬が苦手な場合は、ロキソプロフェンなどの鎮痛成分を配合する飲み薬を使用することが可能ですが、胃に負担がかかるので、胃腸が弱っている時は注意が必要です。また、市販の鎮痛成分の入った飲み薬は、他の解熱鎮痛剤や風邪薬、痛み止め、貼り薬と併用できないことが多くあります。市販薬を使用する時は、薬を自己判断で二種類以上使用することは過剰摂取につながる恐れがあるため避けましょう。さまざまな症状にそれぞれ薬を使用したい時は、医療機関を受診して病院で薬を処方してもらいましょう。

「鎖骨の痛み」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「鎖骨の痛み」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

鎖骨の痛みとストレスは関係がありますか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

鎖骨の痛みがストレスと関係することもあると考えられています。
ストレスが多い生活を送ると、自己免疫力が落ちたり、自律神経が乱れて血流が悪くなり、五十肩(肩関節周囲炎)や肩こりの原因となってしまう可能性があります。鎖骨に痛み、凝り、違和感を生じることもあります。
痛みが出てしまった場合は、鎮痛成分のある湿布薬を活用するなどの対処法がありますが、良くならない場合は整形外科を受診しましょう。
日頃から睡眠を十分にとり、バランスの良い食事を取り、無理のない範囲で適度な運動を取り入れ、ストレスが溜まらないよう気をつけましょう。筋肉の疲れをとるビタミンB群、血行を良くするビタミンE群を含む食事を心がけましょう。
冷房などで体を冷やしすぎないようにすることや、同じ姿勢を長く続けないようにすることも重要です。

朝起きたら鎖骨が痛い場合の対処法を教えてください。

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

朝起きたら鎖骨が痛い場合は、寝違えや関節リウマチの可能性が考えられます。
寝違えであれば、痛む方向に動かさないようにしましょう。数時間から数日で痛みが改善していくことが多いのですが、痛みが強い場合や痛みが続く場合は、別の病気の可能性がありますので、整形外科を受診しましょう。
関節リウマチは朝にこわばりや痛みが見られることが多いです。30-40代の女性に多く発症し、貧血や微熱が出ることもあります。関節リウマチは自己免疫疾患の一つであると考えられており、病院での検査・治療が中心となります。早めに整形外科・リウマチ科を受診しましょう。

鎖骨が痛くてひびが入っているかもしれない場合は何科を受診したら良いですか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

肩や腕を打った後に鎖骨に痛みが残っているなど、骨折が疑わしい場合は患部を触らずに安静にし、早めに整形外科を受診しましょう。

まとめ

鎖骨は、内側は胸骨につながり、外側は肩甲骨につながり肩や胸、腕、背中を連結し動きを助ける重要な役割を果たしています。神経や血管も多く、鎖骨の周りに痛みが生じる場合は、肩や腕の動きに支障が出る場合も多く、生活の質にも大きく関わります。鎖骨の痛みや腫れの中には肺の病気や、癌のサインであることもあり、注意が必要です。痛みや異常がある場合は、放置せず原因を究明して早めの治療を心がけましょう。

「鎖骨の痛み」で考えられる病気

「鎖骨の痛み」から医師が考えられる病気は22個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedicalDOCの解説記事をご覧ください。

整形外科の病気

胸郭出口症候群

鎖骨骨折

椎間板ヘルニア

頚椎症

脊髄腫瘍

胸鎖関節脱臼

肩鎖関節炎

変形性肩鎖関節症

関節リウマチ

筋肉痛

肩こり

肩関節周囲炎

五十肩

寝違え


内科の病気

化膿性リンパ節炎

結核性リンパ節炎

伝染性単核球症

悪性リンパ腫

がんの転移

膠原病
皮膚科・呼吸器科の病気

掌蹠膿疱症性関節炎

自然気胸

緊急性気胸

鎖骨の痛みということで、主に骨の部分が痛むので整形外科の病気が多くなりますが、内科的に早めに治療を要する病気も考えられます。

「鎖骨の痛み」に似ている症状・関連する症状

「鎖骨の痛み」と関連している、似ている症状は9個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについては詳細はリンクからMedicalDOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

鎖骨の近くにしこりがある

鎖骨の近くが腫れる

腕が痺れる

手が痺れる

腕が上がらない

肩が凝る

右肩が痛い左肩が痛い肩が痛い

「鎖骨の痛み」症状の他に、これらの症状がある場合「胸郭出口症候群」「悪性リンパ腫」「がんのリンパ節転移」「気胸」「肩関節周囲炎」「掌蹠膿疱症」「関節リウマチ」「鎖骨骨折」などの疾患の可能性が考えられます。
複数併発している場合は、なるべく早く医療機関への受診をおすすめします。

【参考文献】
・日本整形外科学会胸郭出口症候群
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/thoracic_outlet_syndrome.html
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/sprained_neck.html
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/rheumatoid_arthritis.html
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/frozen_shoulder.html
・神奈川県立循環器呼吸器病センター気胸センター
http://junko.kanagawa-pho.jp/patient/kikyou/index.html
・日本呼吸器学会気胸
https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=35
・千葉市医師会肩関節周囲炎とは
https://www.chiba-city-med.or.jp/column/118.html
・日本骨折治療学会鎖骨骨折
https://www.jsfr.jp/ippan/condition/ip03.html
・明大前整形外科クリニック胸郭出口症候群トレーニングやストレッチ
https://ar-ex.jp/meidaimae/500845419232/-胸郭出口症候群-