肩甲骨の痛みは隠れ膵炎のサイン!?背中の痛みの原因や対処法を解説!

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肩甲骨の痛みが突然起こったり、繰り返し起こったり、ずっと続いたりすると原因は何か心配になりますよね。
ここでは肩甲骨の痛みへの対処方法や、改善のためのストレッチをMedical DOC監修医が解説します。

監修医師:
村上 友太 医師(青森新都市病院)

医師、医学博士。福島県立医科大学医学部卒業。福島県立医科大学脳神経外科学講座助教として基礎・臨床研究、教育、臨床業務に従事した経験がある。現在、脳神経外科専門医として市中病院で勤務。
日本脳神経外科学会認定脳神経外科専門医、日本脳卒中学会認定脳卒中専門医、日本神経内視鏡学会認定神経内視鏡技術認定医。日本脳神経コングレス学会、日本認知症学会、抗加齢医学会などの各会員。

「肩甲骨の痛み」で考えられる病気と対処法

肩甲骨の痛みは、肩や腕の使いすぎが原因と思われがちですが、それ以外にも神経の病気や、心臓や膵臓などの病気が隠れていることもあり、放置すると危険な場合もあります。さまざまな肩甲骨の痛みの症状に合わせ、考えられる病気とその対処法をご紹介します。

肩甲骨が突然痛みだした場合の原因と治し方

突然、左の肩甲骨が痛みだすのがこの症状の特徴です。胸が締め付けられるように痛んだり、息苦しさを感じることもあります。
この場合、狭心症心筋梗塞などが疑われます。

狭心症(きょうしんしょう)

狭心症とは、心臓の筋肉に血液を送っている冠動脈が動脈硬化や血栓などで狭くなり、血液の流れが悪くなり、心臓の筋肉に必要な酸素や栄養が行き渡りにくくなる病気です。特に左側の腕や背中に痛みや圧迫感が生じます。高血圧や糖尿病、肥満、喫煙などが危険因子とされています。
狭心症の発作が起きた時は、安静にするのが大切です。多くの場合、狭心症の発作は数分から15分程度で収まりますが、放置すると血管が完全に詰まる心筋梗塞という命に関わる病気に進行してしまい大変危険です。症状が一時的なものであっても、できるだけ早めに循環器内科を受診した方がいいでしょう。

肩甲骨が痛くて息苦しい場合の原因と治し方

肩甲骨のあたりが痛く、息苦しさをともなうことがあります。この場合、気胸の可能性が疑われます。

気胸(ききょう)

気胸とは肺から空気が漏れ、胸の中に逃げ場のない空気がたまり、肺がしぼんでしまう病気です。背が高く痩せている男性によく見られます。突然胸から肩や背中にかけて痛くなり、呼吸がうまくできないなどの症状が現れます。軽度の気胸は安静にすることが大切ですが、中程度以降の気胸は胸の外からチューブを入れて胸の中に溜まった空気をぬく治療が必要です。主な診療科は内科・呼吸器内科です。呼吸ができないほど苦しい場合は救急車を呼びましょう。そうでない場合も、放置すると危険ですので早めに受診しましょう。

肩甲骨が痛くてしびれる場合の原因と治し方

肩甲骨や首、肩などに痛みやしびれが出現することがあります。
このような場合、頚椎椎間板ヘルニアなどが疑われます。

頚椎椎間板ヘルニア

頚椎椎間板ヘルニアとは、背骨の中にある椎間板という組織が加齢などで変形し、突出することにより脊髄や神経が圧迫され痛みやしびれが生じる病気です。悪い姿勢での仕事やスポーツが原因となることもあります。
痛みが強い場合は首を安静にすることが大切です。主な診療科は整形外科です。症状が進行すると歩行障害や排尿障害をきたすこともあるので早めに病院を受診しましょう。

左・右どちらかの肩甲骨が痛い原因と治し方

左・右どちらかの肩甲骨が痛むのがこの症状の特徴です。
片側の肩甲骨が痛む場合、内臓の病気の可能性が疑われます。左の肩甲骨が痛む場合は狭心症心筋梗塞などの心臓の病気や膵臓の病気、右の肩甲骨が痛む場合は胆石症肝臓病などが考えられます。内臓の病気は自力で対処することが困難なため、いずれも早めに病院に行くことが大切です。心臓関連の病気は循環器内科、胆石症膵炎肝臓病などは消化器内科を受診しましょう。特に心臓に関わる病気は一刻を争うことも多いため、痛みが激しい場合は夜間でも救急外来を受診しましょう。

肩甲骨の痛みが繰り返し起こる場合の原因と治し方

肩甲骨の痛みが繰り返し起こり治らない、夜間も痛み睡眠が取れない、拳を上げる時にジョリジョリという音がするなどの症状が当てはまります。このような場合、肩腱板断裂などが疑われます。

肩腱板断裂(かたけんばんだんれつ)

肩腱板断裂とは、上腕の骨と肩甲骨を繋ぐ腱が切れている状態です。転んだり肩を打ったりするなどの外傷が原因となる場合と、はっきりとした原因がなく日常動作の中で断裂が起きる場合があります。野球など肩を使うスポーツが原因となることもあります。できる対処法としては、安静にし、痛む部分に湿布を貼る、鎮痛剤を内服することなどが挙げられます。
主な診療科は整形外科です。肩腱板断裂は腱が切れているため痛みがいつまでも続くことがあります。症状が治らない、痛みが続く場合は医療機関を受診しましょう。

肩甲骨の痛みがずっと続く場合の原因と治し方

肩甲骨の痛みがずっと続く、首筋や首の付け根や肩から背中にかけて、凝った、痛いなどの感じがするのがこの症状です。
このような場合、肩こりの可能性が疑われます。肩こりは、首から肩にかけての筋肉が姿勢を保つために緊張し、結構が悪くなり凝りや痛みを引き起こします。
デスクワークなど長時間同じ姿勢をとっていたり、長時間冷房の効いた部屋にいて体が冷えていたりすると、筋肉が疲労して肩こりが起こりやすくなります。蒸しタオルなどで肩を温めて筋肉の血行を良くして疲労を取ること、同じ姿勢を長く続けないことなどで肩こりを予防することが大切です。痛みが出た時は、肩を上げ下げする体操や、消炎鎮痛成分を配合した湿布などが効果的と言われています。主な診療科は整形外科です。肩こりは頚椎疾患や眼疾患、耳鼻咽喉科疾患、高血圧症などが原因で肩こりが起こることもあり、他の診療科を紹介される可能性もあります。

すぐに病院へ行くべき「肩甲骨の痛み」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

突然、肩や胸に激しい痛みが起きた場合は、救急科へ

なんの前触れもなく突然、肩甲骨の間や胸部や背中に激痛が生じるのがこの症状の特徴です。この場合は大動脈解離の可能性が疑われます。
大動脈とは、心臓から送り出された血液が最初に通る人体の中で最も太い血管です。大動脈解離は、その大動脈の壁の内側が破れてしまう病気で、すぐに命に関わる大変危険な病気です。高血圧が危険因子として知られています。突然の胸や背中の激痛がある場合は一刻も早く救急車を呼びましょう。

「肩甲骨の痛み」が特徴的な病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「肩甲骨の痛み」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

胆石症(たんせきしょう)

胆石症は、胆道に石ができて、痛みなどを引き起こす病気です。みぞおちが激しく痛む、右肩や背中が痛むなどの症状が特徴的で、発熱や嘔吐なども現れることがあります。
肝臓では、食事で摂取した脂肪分やビタミンの消化・吸収を助ける消化液である胆汁が作られており、胆汁は十二指腸に排出されます。胆道とは、この胆汁が流れる道のことです。脂肪の多い食事をとった後や、食べ過ぎた後に痛みがでる発作が起きやすくなります。
主な診療科は内科・消化器内科です。痛みがある場合は胆石ができているだけでなく、胆石により胆汁の流れが滞り細菌感染や炎症が起きている可能性もあります。早めに医療機関を受診しましょう。

「肩甲骨の痛み」を和らげるストレッチを紹介!

肩甲骨の痛みの原因が肩こりである場合、肩甲骨のストレッチを試してみるのもいいでしょう。肩甲骨周辺の筋肉が凝り固まっていると血行が悪くなり痛みを引き起こしている可能性があります。

ストレッチに必要な道具は特にありません。
腕を動かせるくらいのスペースがある場所で取り組んでみましょう。

両ひじをまげて肩より上にあげ、手は軽く握り鎖骨のあたりに置きましょう。

両ひじの位置を下げないままゆっくり後ろに引き、寄せます。その後、肩甲骨を寄せたまま肘を下げ脱力しましょう。このような動きを5回程度繰り返してみましょう。

ストレッチの他には、入浴や温めたタオルをあてることなどで、血行を良くすることが肩こりの解消につながると考えられています。また、同じ姿勢を長く続けないことや、適度な運動をすることや、リラックスする時間を取ることなども肩こりの予防に重要です。
なかなか症状が良くならない場合は、原因が肩こりではなく肩の腱が切れている腱板断裂や、椎間板ヘルニアなど、他の病気の可能性もありますので、医療機関を受診した方がいいでしょう。

「肩甲骨の痛み」があるときに飲んでも良い・塗ってもいい市販薬は?

肩甲骨の痛みの原因が、筋肉の炎症の場合は、消炎鎮痛効果のある市販薬を使用するのも良いでしょう。ロキソプロフェンなどの成分を含む内服薬、貼り薬、塗り薬などを使用しましょう。
肩甲骨の痛みがしびれを伴う場合、神経の病気が疑われます。また、痛みが激しい場合や、胸の痛みを伴う場合は内臓の病気が疑われます。このような場合はできるだけ早く医療機関を受診しましょう。

肩甲骨に痛みがあらわれる症状についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「肩甲骨の痛み」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

肩甲骨の痛みから隠れ膵炎だとわかることがあるの?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

可能性はあります。
左の肩甲骨付近、左の背中や肋骨の下あたりが痛む場合、膵臓の病気の可能性が疑われます。
痛みは、違和感を感じる程度から、鈍痛、差し込むような痛みなどさまざまです。膵臓は胃の裏側に位置する臓器で、食べ物の消化を助ける働きを持つ膵液を分泌したり、ホルモンを分泌して血糖値の濃度をコントロールする役割を果たしています。大量飲酒などの影響で膵臓が炎症を起こした状態が膵炎です。高熱がある、痛みが激しい場合は緊急性が高いのですぐに医療機関を受診しましょう。また症状が軽くても、膵炎は放置しておくと進行して危険ですので、早めに内科・消化器内科に行くといいでしょう。

更年期障害と肩甲骨の痛みには関係があるの?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

更年期障害と肩甲骨の痛みは関連する場合があります。
更年期障害の原因は、女性ホルモンの分泌の急激な低下です。頭痛やめまい、不眠、イライラ感などの症状に加え、肩こりや腰痛などの症状も多く現れることが知られています。
女性ホルモンの分泌低下により自律神経の乱れが起き血行不良を招き肩こりになったり、加齢によって関節を支える筋力が低下し痛みを引き起こしたりします。
緊急性は高くありませんが、日常生活に支障がある場合は婦人科か整形外科を受診しましょう。更年期障害の症状は非常に多岐に渡るため、症状が更年期障害によるものか、別の病気なのか調べることは大変重要です。
更年期障害は一種の生理現象ですので、それ自体を治すのではなく、出た症状に対して対症療法を行います。
肩こりの原因は血行不良が考えられますので、ぬるめのお風呂でゆっくり体を温めたり、冷房で体が冷えないよう気をつけましょう。長時間同じ姿勢を取らないように気をつけ、定期的に休憩を取り、肩や背中を動かすよう心がけましょう。

首を後ろに倒すと肩甲骨が痛む症状は何が原因?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

首を後ろに倒すと肩甲骨が痛い場合の原因は、頚椎症性神経根症が考えられます。
頚椎症性神経根症(けいついしょうせい しんけいこんしょう)とは、首の部分の骨の中の椎間板が変形したりすることなどにより神経が圧迫されて、肩や腕の痛みやしびれを引き起こす病気です。中年以降によく見られ、遠近両用メガネでパソコンの画面などを見る際に首をそらせることが原因となることもあります。緊急性はそれほど高くないので、日中に整形外科を受診しましょう。痛みが出ないようにするためには、首を後ろにそらせないように気をつけて日常生活を送りましょう。

まとめ

肩甲骨の痛みは、肩甲骨周りの筋肉や関節の病気から、神経の病気や内臓系の病気まで様々な可能性が考えられます。非常に多くの人が悩まされている症状ですが、肩こりやただの疲労だと放置されていることも多いのではないでしょうか。中には心臓や膵臓などの病気が隠れていることもあるので、痛みがある場合は原因をしっかり探ることが大変重要です。

「肩甲骨の痛み」で考えられる病気と特徴

「肩甲骨の痛み」から医師が考えられる病気は13個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedicalDOCの解説記事をご覧ください。

循環器・呼吸器系の病気

狭心症心筋梗塞大動脈解離

気胸

整形外科の病気

肩こり

肩関節周囲炎

頚椎椎間板ヘルニア

頚椎症

頚椎症性神経根症

肩腱板断裂

消化器系の病気

膵炎

胆のう炎

胆石症

循環器呼吸器系の病気は激しい痛みと息苦しさを伴うことが多く、緊急度も高いので早めの受診を心がけましょう。

「肩甲骨の痛み」に似ている症状・関連する症状

「肩甲骨の痛み」と関連している、似ている症状は9個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについては詳細はリンクからMedicalDOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

肩甲骨が突然痛みだした

肩甲骨が痛くて息苦しい

肩甲骨が痛くてしびれる

左・右どちらかの肩甲骨が痛い

肩甲骨の痛みが繰り返し起こる

肩甲骨の痛みがずっと続く

肩が痛い右肩が痛い左肩が痛い

「肩甲骨の痛み」症状の他に、これらの症状がある場合も「狭心症」「気胸」「頚椎椎間板ヘルニア」「膵炎」「胆石症」などの疾患の可能性が考えられます。
複数併発している場合は、なるべく早く医療機関への受診をおすすめします。

【参考文献】

■国立循環器病研究センター
・虚血性心疾患
・大動脈瘤と大動脈解離

■神奈川県立循環器呼吸器病センター
・気胸センター

■日本整形外科学会
・頸椎椎間板ヘルニア
・肩腱板断裂
・肩こり
・頚椎症性神経根症

■平畑クリニック
・膵臓の「未病」について

■東京メディカルクリニック
・胆石症

■名鉄病院
・肩腱板断裂(かたけんばんだんれつ)

■クスリと健康の情報局
・くすりで肩こりの痛みを抑えるしくみ

■サワイ健康促進課
・肩こりの特効薬は肩甲骨ストレッチだった!

■消化器学会ガイドライン
・慢性膵炎ってどんな病気ですか?

■中村記念愛成病院
・更年期障害