川の上に茶室が浮かんでいる――そんな非現実的な光景がツイッターで注目を集めた。

川の真ん中に、四角い何かがある。その中には、人間が入っているようだ。道を歩いているときに見かけたら、思わず目を疑ってしまうことだろう。

この川は、浄土宗の総本山・知恩院(京都市東山区)の前を流れる白川。2021年10月2日、あるユーザーがその様子を写真に撮ってツイッターに投稿したところ、

「素敵」
「発想がすごい」
「見た目も涼やかで気持ちよさそう」
「ここでお茶飲んでみたい」

といった驚きや称賛のコメントが寄せられるなど、話題となった。

実はこれ、建築とインテリアデザインの専門学校「スペースデザインカレッジ」の学生たちの作品。10月1日から3日まで展示されていた期間限定の茶室で、「竹禅庵(ちくぜんあん)」という名前がついている。

いったいどうして、白川の上に茶室を作ることになったのか。Jタウンネット記者は12日、スペースデザインカレッジ京都校を取材した。

コロナ禍でも会話を楽しめるような空間を意識

同校によれば、この展示は白川あかり茶の湯の会(京都市左京区)という団体が主催する「白川あかり茶の湯プログラム」の一環。白川エリアの文化的景観の魅力の発信と、水に親しむ文化の継承を目的に川床での茶の湯を行うものだ(不定期開催)。

同校では14年度から毎年、学生のデザイン制作の場として、このプログラムに参加しているという。

今年は「ウィズコロナの時代の新しい茶室」というテーマを掲げ、大阪校と京都校のインテリアデザイン設計科2年、スペースデザイン設計科2年の学生22人がデザインを考案。選考の結果、大阪校・スペースデザイン設計科2年の泉百合菜さんの案が選ばれ、講師からの指導を受けながら学生たちが制作した。

なお、例年は作った茶室で一般客が参加可能な茶会が実施されるが、今年は新型コロナウイルスの流行を鑑み、茶会の一般参加は見送られた。同校によると、通りすがりの人々が興味深そうに見学したり、質問したりしていたという。

デザインを行った泉さんは「竹禅庵」について、以下のようにコメントしている。

「デザインを考えるにあたって軸としたのは、禅にならい簡素で機能的であること、施工の実現性、全体のスケール感、空間の内と外の繋がり方です。
繋がり方に関しては、 竹編みに光があたった時の落ち方や、風が通り抜けるパーテーション、ガラス越しに見える川の流れが美しく見えるようにこだわりました。
またコロナ禍での新しい茶室ということで、茶人と客人の距離を保ちつつ、会話を楽しめるような空間を意識しました」

確かに、通気性もよく、ところどころに段差が設けられていることで、人同士の距離も保てそう。まさに「ウィズコロナ」にぴったりの新しい形といえるだろう。

3日間だけ出現した不思議な茶室「竹禅庵」。

もしかすると、来年も白川周辺に新たな茶室が現れるのだろうか。1年後を楽しみに待ちたい。