沖縄の空の玄関口である那覇空港には、さまざまな航空会社から整備などを引き受ける「MRO Japan」の格納庫があります。コロナ禍でも黒字化の同社、なぜ沖縄にあり、なぜ堅調なのでしょうか。

コロナ禍も追い風に

 沖縄の空の玄関口である那覇空港、旅客ターミナルから見て、滑走路を挟んだところに、日本初の施設があります。さまざまな航空会社から整備や修理などを引き受ける企業「MRO Japan」の格納庫です。

 これまで国内の整備作業は、航空会社ごとにそれぞれが自社で格納庫をもち、整備するといった方法が主流でした。そうでないところは提携する航空会社や海外で整備を実施するといった方法です。

 一方このMRO JapanはANA(全日空)が出資するものの、主眼はそれ以外の国内、海外のさまざまな航空会社から整備を引き受ける「航空整備を専門とする会社」。海外ではドイツのルフトハンザ・テクニークやデルタTechOpsなど多数の会社がありますが、日本では新たなスタイルの会社です。


那覇空港にあるMRO Japanの格納庫(乗りものニュース編集部撮影)。

 同社は2020年度から黒字化。新型コロナウイルスの影響で航空業界の苦境が続くなかでも、黒字化が続いており「立ち上げから心配をおかけしたが、事業が成り立つことが一歩進められた」(MRO Japan中司 直己社長)と話します。

「黒字化はコロナ禍の影響で海外での整備が難しくなり、ANA以外のさまざまな航空会社での国内での整備作業が増えたことも一因です。ただこれは『国内でもMRO事業の会社がある』ということで、私達を知っていただくきっかけにもなったと思います」(MRO Japan臼田洋樹取締役)

 臼田洋樹取締役によると「ここ1、2年で、ANAグループ外の航空会社から整備を受けることも増えてきている」とのこと。「ANA品質の高い整備レベル」をうたい、それを維持しつつも、あくまで「MRO Japan」として独立した会社であるというのもポイントとしています。

 そしてこの東京から遠く離れた沖縄に”本陣”を構えたというのも、さまざまな理由がありそうです。

なぜ沖縄>”本陣”に

 那覇空港に拠点を構えた理由については「沖縄県は飛行機が移動のメインで、歴史からアジアの拠点のひとつになっています。航空の交通量が多く、この効率の良さを強みとして地域に根ざして育てていきたいと思っています」(MRO Japan臼田洋樹取締役)としています。

 なお、格納庫施設については、沖縄県側が用意したものを使用。県側も同社の発展の後押しをしていることもあり、MRO Japanの躍進を支えています。

 一方MRO Japanも、沖縄に根付いた企業へ成長しつつあり、従業員300人のうち、同県出身者は約3分の1にものぼるとのことです。


MRO Japan中司 直己社長(乗りものニュース編集部撮影)。

 コロナ禍でも航空機整備で業績を伸ばしつつある企業、MRO Japan。日本では唯一のさまざまな航空会社からの整備委託について、「いろいろな会社の仕様に対応できるよう、それに対する整備方法やマニュアルの体系、作業手順書などを作る専門チームを作り、現場の整備士についても、会社ごとに柔軟な対応ができるよう訓練をしております」(MRO Japan臼田洋樹取締役)としています。