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コロナ禍の時短要請や酒類提供の制限などによって、飲食業界はかつてない危機に陥っている。民間調査会社である東京商工リサーチの調査によると、「コロナ倒産」が最も多い業種は飲食業だ。このような状況の中、飲食店の顧客満足度ランキングはビフォーコロナから現在にかけて、どう変化したのだろうか。

■JCSIの飲食店ランキングの推移は?

この記事では、公益財団法人「日本生産性本部」が毎年発表している「JCSI(日本版顧客満足度指数)」の飲食店ランキングを紹介する。

ビフォーコロナの時期に調査された2018年版のランキングから、最新版である2021年版のランキングまでの順位の変動を見てみよう。2018年版、2019年版、2020年版、2021年版におけるトップ5は以下のとおりだ。

ビフォーコロナから現在にかけて順位を大きく上げたのは、「サイゼリヤ」と「餃子の王将」だ。2018年はサイゼリヤが5位、餃子の王将は2020年までトップ5に入っていなかったが、2021年は両社が1位タイとなった。

モスバーガー」の順位も近年は上昇傾向にある。2019年はトップ5圏外だったが、2020年は4位にランクインし、2021年はさらに順位を1つ上げて3位となっている。「びっくりドンキー」は、2020年は1位だったが2021年は順位を3つ下げて4位だった。

■餃子の王将に対する評価とこれまでの取り組み

ランキングでは、餃子の王将とサイゼリヤが1位タイとなった。まずは、餃子の王将に対する評価を詳しく見ていこう。

日本生産性本部はこのランキングの作成に際し、「顧客期待」「知覚品質」「知覚価値」「推奨意向」「ロイヤルティ」という項目でも評価を行っている。餃子の王将は評価対象となった21の企業・ブランドのうち、知覚価値が3位、ロイヤルティが5位と高かった。

知覚価値は、支払った金額に見合った品質かどうか、品質に見合った金額かどうかを示す指標で、餃子の王将がこの項目で高い評価を得たということは、安くて美味しい料理を提供できているということだろう。

餃子の王将は豚肉やキャベツはすべて国産を使用し、味にこだわっている。安さに関しては、餃子の餡と皮は自社工場で製造し、各店舗に届けることでコスト削減を図っている。このような努力が実を結び、顧客満足度ランキングでトップになったのだろう。

店内での手作り調理にこだわっていることや、店舗ごとに味のオリジナリティを出す取り組みを行っていることも、餃子の王将の特徴だ。特に店舗ごとに味のオリジナリティを出すことは、エリアによって好まれる味が異なる点を見事にカバーしている。

また、コロナ禍においてテイクアウトやデリバリーといった店外サービスを拡充させたことも要因のひとつだろう。

■サイゼリヤに対する評価とこれまでの取り組み

今回、餃子の王将と並んで1位となったサイゼリヤ。「知覚価値」の評価は餃子の王将を上回り1位で、ロイヤルティも2位と高かった。

ロイヤルティは、優先してその店に行きたいと思うか、頻繁に利用したいと思うか、これからも継続して利用したいと思うか、などに関する評価項目だ。この項目の評価が高かったということは、サイゼリヤには熱烈なファンが多くいるということだろう。

サイゼリヤは1品ごとの量を少なくすることで単価を抑え、あまりお金をかけなくてもさまざまな料理を楽しめるようにしている。安さに関しては、店舗で行う調理作業がなるべく少なく済むようにし、人件費の抑制に努めている。

こうした企業努力が実を結び、サイゼリヤのファンが増えているのだろう。ちなみに、サイゼリヤはコロナ対策としてお釣りのやり取りが減るよう、メニューの約9割を1円値上げし、税込価格で端数が出ないようにした。値上げとなったが、サイゼリヤのファンから批判の声はあまり上がらなかったようだ。

■餃子の王将とサイゼリヤ、今後はどう順位が変わっていく?

餃子の王将もサイゼリヤも、細かい工夫の積み重ねによって高い顧客満足度を実現していることがわかった。しかし、ライバルも顧客満足度向上のために努力しているため、来年のランキングでは順位が大きく変動するかもしれない。

近年は日本経済の調子は良いとはいえず、コスパの良い飲食店が好まれる傾向にある。その観点では、餃子の王将とサイゼリヤは引き続き上位に入る可能性が高い。来年、そして再来年のランキングの結果にも注目したい。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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