センサーやカメラ、AI技術の進化によって、人間ではなくコンピューターが車を運転する「自動運転システム」の技術も日進月歩で進んでいます。そんな自動運転システムをなんと二輪走行の自転車に実装することに成功したと、18歳で電子科技大学を卒業し、HuaweiのAIエンジニアとして活躍する稚晖氏がムービーで報告しています。

【自制】我把自行车做成了 自 动 驾 驶 !!【硬核】 - YouTube

稚晖氏が自動運転自転車を開発したきっかけは、稚晖氏自身が雨の日に自転車に乗って転倒し、顔面にケガを負ってしまったことにあります。



自動運転車のポイントは「運転席が無人でも車が走行できる」ということ。一方、自動運転自転車の場合は「運転席が無人だと自立できない」という点に課題があります。一般的な自動車は4輪なので十分自立できますが、2輪しかない自転車の場合、人間が乗って重心を移動させることでバランスを保ちます。完全無人の場合は一定以上の速度を出さなければ自立できません。



そこで、稚晖氏は自身の自転車に自動運転システムを実装するため……



円盤の回転モーメントを利用した姿勢制御モジュールを採用しました。



同様の姿勢制御モジュールは人工衛星などにも応用されているとのこと。



自動運転自転車では高精度の小型センサーで傾きを検知し、データを姿勢制御モジュールにフィードバックして、自立できるようにします。



また、自動運転を可能にするために、トップチューブには周囲の物体をパルスレーザーで認識するLIDARセンサーを取り付けます。



ハンドルバーには画像認識用のカメラを搭載しています。



さらにペダルをこがずに、後輪を直接モーターで回転させるシステムを採用しました。



CADで必要なパーツを設計し、作成します。



シートチューブに備え付けられた後輪駆動モジュールはこんな感じ。



後輪駆動モジュールの上に収納されているのは、自動運転用のコンピューターボードです。



このボードは、電子工作が趣味という稚晖氏が設計したもの。



AI用プロセッサは、HuaweiのAscend310です。



実際に製造したボードがこれ。自動運転用のAIはHuaweiのApplication Orchestration Serviceを利用して、稚晖氏が独自に開発したもの。



また、ハンドルはトップチューブに取り付けられたモーターとワイヤーを使って動かす仕組みです。



完成した自動運転自転車がこんな感じ。



バランサーのテストを自室で行った後……



実際に屋外でテストを行います。



稚晖氏が自転車のスタンドを上げると……



誰もまたがっていない自転車がその場でぴたりと、見事に自立しています。





稚晖氏が自転車を指でちょんと押しても、倒れる気配はありません。



ハンドルの片側に荷物の入った紙袋を下げても……



バランスは一切崩れません。



姿勢制御モジュールによるバランス制御は完璧で、幅数cmしかないようなフェンスの上でも問題なく自立し、微動だにしません。



姿勢制御モジュールはトップチューブに固定することも可能で……



前輪を上げて一輪車のような状態でバランスを保つこともできます。



そして、自動走行のテスト。



自転車はゆっくりですが、問題なく走行しています。車線に描かれた交通標識も認識し、右折する時は右折車線を走ります。



カメラで前方の物体を認識するので、路上にある障害物や……



路肩に止まっている車を認識しながら、自動でコース取りして走行します。



LIDARで周囲の壁を認識できるので、自転車は狭い廊下もスイスイと進みます。



また、ムービーでは坂道でのバック走行も実演されています。なお、稚晖氏はこの自転車自動運転システムをExtremely Unnatural Auto-Navigation(XUAN)と名付けており、ソースコードをGitHubで公開しています。