コロナ禍で生きるには 視覚障がい者苦悩
新型コロナウイルスの陽性者が栃木県内で確認されてから1年以上が経ち、こまめな消毒や3密の回避など新しい生活様式が日常になりました。
しかし、こうした日常になじむのが難しい人たちがいます。
視力がまったくない全盲の女性を取材しました。
日光市木和田島に住む大久保扶美子さん(69)と盲導犬のオージ君(6)です。
大久保さんは18年前、多発性硬化症という病気によって、突然すべての視力を失いました。
当時は、光を失ったばかりか右半身も動かない状態で泣いてばかりの毎日でしたが、盲導犬との出会いが立ち直るきっかけになりました。
リハビリを続け、自らの足で好きなところに出かけられるようになりました。
そんな暮らしが再び大きく変わる出来事がありました。
新型コロナウイルスの流行です。
日課の散歩では自宅の周辺を歩いて巡ります。
ダンスや日本舞踊など体を動かすことが大好きだった大久保さん。
20代のころにはボウリングの全国大会で優勝した経験もあります。
しかし、感染予防のため人との密接を避けることが求められる今、散歩で巡る数キロ圏内だけが大久保さんの世界です。
一緒に住む家族を感染させてはいけないとの思いから、この1年のほとんどを自宅で過ごしてきました。
オージ君を派遣している東日本盲導犬協会には、盲導犬ユーザーからさまざまな声が寄せられます。
電話や直接訪問などでケアしていますが、生活のすべてを支援するのは難しいのが現実で、大久保さんのように孤立してしまう人も少なくありません。
そんな大久保さんが訪れる数少ない店があります。
声を聞いて駆け付けたのはスタッフの阿久津明美さん。
大久保さんがこの店に訪れる理由の一つです。
テスターで使い心地を確かめたり、商品の値段を比べたり。
大久保さんにとっては「特別な時間」です。
阿久津さんは大久保さんとの出会いで、コロナ禍で障がい者が生活する大変さに改めて気づかされました。
同時に、接客する側の難しさも感じています。
私たちにとって日常となった新しい様式での生活を送るには周囲の人たちの気遣いが欠かせません。