栃木のランナー191人がつないだ聖火は、全国に引き継がれ、およそ1万人が灯した火が東京オリンピックの開会式を目指します。

ランナーたちは聖火にそれぞれの思いを乗せてトーチを運びました。  

大役を終えたあるランナーを追いました。

栃木県内のランナー191人がつないだ聖火が県庁にゴールしたちょうど24時間前。

1日目の最終地点、那須烏山市に一世一代の大役を果たしたランナーがいました。

栃木県那珂川町と茨城県の県境にある理容店。

県内最高齢の聖火ランナー箱石シツイさん104歳です。

聖火リレー当日の昼過ぎ、いつものように笑顔で出迎えてくれました。

1916年大正5年に生まれた箱石さん。キャリア85年、今でも店でハサミを握る現役の理容師です。

最初に聖火ランナーに選ばれたのが2年前の12月。

ランナーに応募してから、毎日のトレーニングが日課になり、トーチと同じ重さの棒を持って練習を重ねました。

そんな中、聖火リレーは新型コロナウイルスの影響で1年延期されることになったのです。

たくさんの応援を受け、ランナーに集中するため、店を臨時休業して備えていただけに気持ちが沈んでしまった時期もありました。

あれから1年。箱石さんは、訓練をやめませんでした。

自宅の周辺を千歩以上歩く練習も毎日続けました。

箱石さんを支えてきた家族も、この日を待ちわびていました。

午後3時ごろ、山間ののどかな場所にある自宅には報道陣が大勢集まりました。

ドイツのメディアからも取材を受けました。

箱石さんには聖火ランナーとして走るもうひとつの理由があります。

夫の二郎さんを戦争で亡くしたのです。大正、昭和、平成、令和と4つの時代を生き、常に平和を願ってきました。

箱石さんが走る那須烏山市へ出発する直前、二郎さんに見守ってもらえるようお願いしました。

箱石さん、この日のために新品の靴をおろしました。

準備はばっちり、本番まではあと4時間集合場所に向かいました。

ルート付近では、夕方から激しい雨。

箱石さんが到着する会場には、サプライズで娘の充子さんが宇都宮市から駆け付けていました。

午後8時ごろ、間もなく箱石さんの所に聖火が届きます。  

英政さんと一緒に、その時を待ちました。

箱石さんが聖火をつなぐ会場で、充子さんがその勇姿を見届けるためにいまかいまかと待っています、

そして、およそ200メートルを一歩一歩しっかりした足取りで歩き切りました。

大勢の観客に見守られた中、大役を終えました。   

その姿は、しっかりと会場の皆に届いていました。

今後は、理容師の仕事を生涯現役でいることが目標と語る箱石さん。

こうして、県内最高齢ランナーの長い1日、最高の1日は幕を閉じました。