「専業主婦になりたい人」が知らない高すぎる壁
男性のパートナーに対する考え方はどのように変化しているのでしょうか(写真:Ushico / PIXTA)
以前掲載の『晩婚化も「女性の結婚ピークは26歳」という現実』でもお伝えしましたが、「平均初婚年齢」が29歳超というデータからイメージされる「アラサー結婚」よりも、実際の初婚女性の結婚ピークは3年早く訪れます。男性でも初婚のピーク年齢は27歳(『独身男性が驚く「27歳が結婚ピーク」という現実』参照)ですので、いかに平均初婚年齢がライフデザイン設計においてあてにならないかがわかると思います。
令和時代の婚活男女の皆さんが「こんなはずじゃなかったのに……」と後悔しないために、高齢化社会だからこそ起こるデータの罠にも負けない強い頭脳をもって活動していただきたいと思いますし、そのために役立つデータ提供をすることで皆さんを応援していきたいと思っています。
今回は、アラサー以上の婚活女性から時折でてくる「結婚したら仕事は辞めてもいいと思っているんです。育児に専念したいですし」といった発言について、それは思った以上にリスキーな発言ですよ、ということが伝わるデータを示してみたいと思います。
若い男性がパートナーに求めるもの
今回使用するのは、国立社会保障・人口問題研究所の大規模調査「第15回出生動向基本調査」のデータになります。18歳から34歳までの若い未婚(結婚歴がない)男性の「パートナーに望むライフコース」を知ることができます(図表1)。
ちなみに、男性がパートナーに望むライフコースについて、第9〜12回調査では、「女性にはどのようなタイプの人生を送ってほしいと思いますか」、第13〜15回調査では、「パートナー(あるいは妻)となる女性にはどのようなタイプの人生を送ってほしいと思いますか」と質問しています。
今の若い男性が、いったいどんな生き方の女性とともに生きたい、と考えているかがわかる非常に興味深い質問です。早速、結果を見てみましょう。
下のグラフを見て、びっくり仰天する婚活女性や親世代、祖父母世代の読者も多いのではないでしょうか。1987年、いまから34年前の若い男性(今の50代から60代の男性)は3人に1人以上が女性に専業主婦になることを期待していました。
ずっと共働きすることを示す「両立」を女性の生き方に期待していた男性は1割でした。しかし、その後10年ごとに、当時の若い男性たちに大きな価値観の変化が起こっている様子がグラフからは見てとれます。
時代とともに変化する男性の価値観
1997年、今から24年前の若い男性(今の40代から50代)になると、女性に専業主婦を期待していた男性は5人に1人程度に激減しています。その一方で、「両立」を女性に期待する男性が5人に1人程度まで増加したのです。
そして、直近の2015年調査(6年前)では、女性に専業主婦を期待している男性はわずか10.1%、10人に1人まで減少するという結果となっています。その一方で、「両立」を期待する男性の割合は増加の一途をたどり、3人に1人以上の男性がパートナーに「両立」を期待していることが見てとれます。
つまり、34歳までの若い男性を結婚相手にターゲティングしている女性の場合、「結婚したら仕事を辞めてもいいんです」発言は、9割の男性から「期待外れ」とされる禁句ということになります。相手の考え方を知らないうちに容易に口に出すには、あまりにもリスキーな発言(発想)と言うことが統計的にはできるでしょう。
こういう話を聞くと、「それってしょせん経済的にゆとりのない男性の話でしょう? 専業主婦になりたい私が狙っているのは高学歴で高収入の男性だから、高学歴な男性ほど、きっとパートナーに専業主婦を期待する男性は多いはず」という一見、中高年の親世代からすれば「そのとおりかも」と思えるような解釈する女性もいるかもしれません。
しかし、データを見ると、令和時代の若い男性の考え方をあまりにも知らなさすぎる発言と言えるようです(図表2)。
大卒・大学院卒の男性であっても、パートナーに専業主婦を期待している男性は10.8%にすぎません。それもそのはず、今の20代の男女は4大進学率がほぼ一緒ですので、「どうして同じ勉強をしていて、女性だからといって働かないの?」と、論理的思考を持つ高学歴な男性ほど考えるかもしれません。
また、1990年代半ば以降、共働き世帯が専業主婦世帯を超え、今や非農林業世帯では7割が共働き世帯です。若い男性ほど両親が共働きしている人が多数派となっていますので、女性が働かないことが当然という環境に育ってきていないのです。
専業主婦を期待する男性が多いグループ
興味深い結果としては、中卒の男性だけは専業主婦を期待する男性がいまだに5人に1人程度います(回答母数はそれなりに確保されており、他の学歴グループより極めて少ない人数の結果、ということはありません)。
中卒男性は、他の学歴グループに比べて専業主婦になりたい女性にかなりマッチした考え方となっています。むしろ、専業主婦をどうしても、という戦略を持つのであれば、大卒狙いではなくて、中卒狙いが適切、と言えるかもしれません。
いずれにしても、令和時代において生涯のパートナーを持つ視点として、「誰かに養ってもらう」という視点は、成婚への大きな壁となるようだ、ということを女性の皆さん、そのご両親に心にとめておいていただきたいと思います。
また、若い男性を雇用する経営者も「結婚したら家のことは嫁さんに支えてもらって」といった発想に基づく男性社員の働かせ方は、労働者サイドのライフデザインの変化によって加速的に受け入れられなくなってきていることを理解する必要があるでしょう。