楽天・涌井秀章【写真:荒川祐史】

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自身は現役時代にヤクルトのエースとして5度の大役

 楽天は26日までに、開幕投手候補の田中将大、則本昂大、岸孝之、涌井秀章の4投手が1度ずつ実戦登坂した。今季からチームの指揮を執る石井一久GM兼監督は「なんとなくは決めた。近々、皆さん(報道陣)にお伝えできればと思います」と語った。自身も現役時代に大役を5度務めた指揮官が考える「開幕投手の条件」とは──。【宮脇広久】

 4人の候補のうち先陣を切って実戦登坂したのは、チームに8年ぶりに復帰した田中将だった。20日の日本ハムとの練習試合(金武)に先発し、2回4安打3失点。石井監督はこの時点で、開幕投手について「ある程度頭の中には描いていますが、それを言葉にする段階ではない。まだ(実戦で)投げていない投手もいるので、登板を1〜2回見たあたりで、各ローテーション投手には(公式戦での登板日を)伝えていきたい」と語っていた。

 その後、23日の日本ハム戦(名護)に先発した則本昂は、2回を1人の走者も許さずパーフェクトに抑えた。25日のDeNA戦(宜野湾)に先発した岸も、2回1安打無失点。26日のヤクルト戦(浦添)では涌井が2回無安打無失点、許した走者は味方のエラーによる1人だけだった。実戦初登板に関しては、軟らかいマウンドへの対応に苦戦した田中将以外は、相手に得点を許さなかった。

 石井監督はまず、先発ローテ入りの条件として「中6日で120球は投げてほしい」と各投手に伝えており、これは大前提。その上で、開幕投手について「基本的には昨年しっかり頑張れた人。そして、チームはシーズン約1500イニングを守ることになるが、そのうちどれだけの“パイ”を食べてくれるかという話。1番早く投げる投手には、どんどんイニングを食べていってほしい。そういう投手に任せたい」と語った。

求める開幕投手像は“イニングイーター”、最有力は涌井か

 4人の候補の中で、「昨年1番頑張った」と言えば涌井だろう。20試合に登板して11勝4敗で最多勝に輝き、防御率も3.60と安定していた。岸は7勝を挙げ無敗だったが、腰の違和感でシーズン序盤に出遅れて11試合登板にとどまった。則本昂は18試合で5勝止まり。田中将はコロナ禍でメジャーリーグのシーズンが大幅に短縮され、10試合で3勝3敗だった。

 そして指揮官は、開幕からどんどんイニング数を稼ぐことができるタフネスと安定感を求めている。その点でも、涌井は昨季チームでただひとり規定投球回数を突破し130回を投げた。岸は67回1/3、則本昂は109回だった。田中将の場合、昨季こそ10試合で48回の投球機会しか与えられなかったが、一昨年は中4日が基本のメジャーで32試合(うち先発は31試合)11勝9敗、182回も投げているから、指揮官が求める能力は実証済みと言える。

 石井監督自身、現役時代にはヤクルトのエースとして1998年から2001年まで4年連続で開幕投手を務め、4年間のメジャーを経て燕軍団に復帰した後も、2007年に1度務めている。そんな元左腕が指揮官として初めて指名する開幕投手は誰で、どんな理由を語るのか。新監督の野球観がそこに表れそうで興味深い。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)