首都高の上限料金なくなる? 首都圏の高速道路料金 国が見直し検討「公平な料金に」
国が首都圏における高速道路料金の見直しを検討しています。2016年に、路線ごとの料金の違いを整理した統一的な体系が導入されましたが、それをさらに改定する方針。その焦点のひとつが、首都高などに設定されている上限料金です。
示された「首都圏の新たな高速道路料金」骨子案
国が首都圏における高速道路の料金体系の見直しを検討しています。2021年2月5日に国土交通省で開催された有識者会議「社会資本整備審議会 国土幹線道路部会」のなかで、同省道路局から、その具体方針の骨子案が提示されました。
首都圏の高速道路料金をめぐっては、2016(平成28)年4月、建設経緯の違いから路線ごとに異なっていた料金体系を整理した新たな体系が導入されました。このときは、圏央道や横浜横須賀道路など割高な路線の料金を引き下げるなどして、首都高を含めて料金水準の統一を図りつつ、「同一起終点であれば迂回しても基本的に同料金」という形に。都心部を通過する交通を、圏央道や外環道などへ迂回しやすくすることに主眼が置かれていました。
首都高の用賀料金所。上限料金が見直される見込み(画像:写真AC)。
ただこの際、首都高や京葉道路、第三京浜など、大幅な値上げになる路線に対しては「激変緩和措置」が導入され、上限料金や割安な料金体系が設定されています。首都高は現在、利用距離に応じて普通車で300円から1320円まで料金が加算されていきますが(東名と横浜北西線を連続利用した場合を除く)、1320円ぶん以上走っても料金は据え置きです。たとえば、さいたま市から横浜市まで走った場合、本来ならば3000円程度かかります。
国土交通省道路局によると、新しい料金体系は、こうした激変緩和措置による上限料金の設定などを見直す方針だそうです。会議の資料では、各道路管理者からの意見も記載されており、首都高速道路の意見として次のように書かれています。
「上限料金があることによって、長トリップになるほど距離当たり単価が低くなっており、不公平感が存在。また、上限距離を超えた部分は無料で走行することができるため、損傷者負担の原則に合致しない」(一部抜粋)
現に、首都高経由と外環道経由とでも料金の差異が生じるケースがあるとのこと。資料では首都高速道路の意見としてさらに、「その結果、首都圏高速道路において同程度の利用距離であっても経路によって利用料金に大きな差が生まれ、首都高の特定経路へ交通を集中させている可能性がある」と続いています。
深夜割引・休日割引なども見直しか
神奈川県からも料金の差異が渋滞を助長させるという指摘があるほか、会議の委員からは「原則、対距離制にするため、首都高速の上限料金を撤廃すべき」「激変緩和のための割引は撤廃すべき。首都圏の新たな高速道路料金の導入から5年経過しており、またそれによって混雑が発生しているので、そろそろ激変緩和は終了しても良いのではないか」といった意見が寄せられています。
このため、首都圏の料金体系の見直し骨子案には、「混雑している経路からの転換を促進するため、経路間の料金に一定の差を設ける」といったイメージも提示されています。
そして将来的には、「混雑状況に応じて変動する機動的な料金の導入」を目指すとしていますが、国土交通省道路局は、「まずは、完全に公平にはなっていない路線ごとの料金の差異をなくす」ことを主軸に、この春にも新たな料金の具体方針案を公表する予定だそうです。
2016年4月、路線ごとに異なっていた料金水準が原則として統一されたが、完全に同一にはならなかった路線もある(画像:国土交通省)。
これとは別に、深夜割引や休日割引、トラック事業者などに提供される大口・多頻度割引といった個別の割引制度も見直される見通しです。たとえば、「深夜割引を受けるためにトラックが休憩施設などで待機することでSA・PAが混雑する」という問題が起きているほか、「休日割引は観光の振興が目的であれば、高速道路利用と宿泊がセットの場合のみ割り引く制度にすべきではないか」といった意見が寄せられています。
現行の料金施策が引き起こす混雑箇所の解消や、空いている夜への利用転換を促すなど、「戦略的な料金施策を実現する」と国土交通省道路局は話します。