好みの配合でつくったホットケーキ。毎日食べても飽きない<暮らしっく>
作家・作詞家として活躍する高橋久美子さんによる暮らしのエッセー。今回は、ふと食べたくなるホットケーキについてづつってくれました。
去年の秋、母から届いた野菜のダンボールの中に、愛媛県産の小麦粉が入っていた。うわあ、県産の粉、嬉しいなあ。そうだ、ホットケーキ食べたいなあ。私は久しぶりにホットケーキを作った。それがとっても美味しくて、美味しすぎて、ここのところ毎日のように朝ホットケーキをしている。なんてシンプルで幸せな食べ物だろう。
ホットケーキというと、子どもの頃のおやつの定番だった。7人家族で三姉妹の私の家は、フライパンでは間に合わず、ホットプレートで大きい丸や小さい丸を並べてはひっくり返して、山のように焼いて思う存分に食べた。
今は、フライパンに大きな丸を一枚。焼きたてほかほかを夫と半分ずつ食べるのが丁度いい。作り方は母が作ってくれていたのと同じだ。
こんなに食べ物にはまったのは、さぬきうどん以来だなあ。毎日食べても全然飽きない。
ホットケーキという響きにまた夢がある。“温かいケーキ”なんだもんなあ。あのまん丸きつね色の可愛らしきフォルム。でもちっとも気どらない素朴な味は、食パンの代わりに食べるのにも丁度いいんだなと作ってみて思った。時間も10分でできてしまう。
ホテル仕込みのホットケーキミックスもいいし、マリールゥの豆乳を入れて作るパンケーキも大好き。でも、どっちもやっぱり特別で、毎日となると、家にある簡単な材料でできるのが一番だ。作り方を工夫しながら自分のベストな味を探して実験する朝は、わくわくして楽しい。
私のたどり着いた好みの味。大きな一枚をフライパンで作る場合のレシピです。
小麦粉160gに砂糖大さじ1.5、ベーキングパウダー1g、重曹2g、塩1つまみを、ふるう。
ベーキングの量がこんなに少ないのに膨らむ? と思われた方もいるだろう。極限まで少なくしてみた。スコーンを焼いたとき舌がぴりぴりするなあと思ったのがきっかけだった。粉かな? と思い、小麦粉を変えたけどまだビリビリ。ふむ、ベーキングパウダーだな。ベーキングパウダーにはアルミが使われているということで家はアルミフリーのものを使っていたが、それでもやっぱり舌がぴりぴりする。人によるのかもしれないなあ。母は、ベーキングパウダーではなく昔ながらの重曹を使っているのだけれど、重曹は重曹で独特の匂いがあるので最後のとりでにするとして、毎日、ベーキングをどこまで減らすと膨らまなくなるかの実験をしていった。4g、膨らむがぴりぴり。3g、まあまあ膨らむちょっとぴりぴり。2g、お好み焼きみたい…でもぴりぴりは殆ど感じなくなった! じゃあ、ここにほんの少し重曹を足してみたらどうかな! ということで、黄金比ができた。ベーキングが1gに重曹2g!
さて、お次は液体の方を。牛乳150cc、卵1個。なんとシンプルなんだ。ポイントは、卵をふわふわになるくらいよく混ぜること。最近は牛乳を無調整豆乳に変えていて、これはもうホットケーキならぬ、豆腐ケーキという名前にしたいくらいに風味があって美味しい。
いよいよ、粉チームと混ぜる。一気に液体チームを粉チームに入れまして、ポイントはこねこねしないことですな。切るようにざっくりざっくりと合わせていきます。このときに簡単に混ざるようにするためにも、最初に粉を網でふるっておく(もしくは泡立て器で軽く混ぜておく)のは大切だ。硬いなと思ったら牛乳を足したり、ゆるいなと思ったら小麦粉を足したり、そのあたり適当にいきましょう。
その間に、フライパンを熱しておきます。一旦火を止めてバターをひとかけ入れまして、生地を流していきます。まん丸にする秘訣は、円の真ん中の一点にさーっと重ねて流し入れること。ぶれちゃいかんです。
再び点火しまして、中火弱で蓋をして焼いていきましょう。ぷつぷつと気泡ができてきたら、そーれいっと、日頃のうっぷんを晴らすべく一気にひっくり返す! 爽快です! ここからは蓋をせずに、弱火できつね色になるまで焼く。
朝ホットケーキの完成! すっごく大変に思えたかもしれないですが、慣れたら本当に10分でできる。牛乳なんて目分量でいけるようになる。やっぱりこれね、焼きたてが最高なんだな。煮たリンゴ
や、みかんのジャムを添えたり、ハチミツやメープルシロップも、ホットケーキはシンプルだからこそ何でも来い、いわば白飯なのだ。
子どもも大人も眠い冬の朝を包みこんでくれる幸せなホットケーキ。お家で過ごすことの多い毎日に、ちょっとした幸せな時間。ぜひお試しあれ!
1982年、愛媛県生まれ。作家・作詞家。1月29日に旅エッセイ集『旅を栖とす
』(KADOKAWA)を発表。
近著に、詩画集「今夜 凶暴だから わたし」
(ちいさいミシマ社)、絵本『あしたが きらいな うさぎ』
(マイクロマガジン社)。主な著書にエッセイ集「いっぴき」
(ちくま文庫)、など。翻訳絵本「おかあさんはね」
(マイクロマガジン社)で、ようちえん絵本大賞受賞。原田知世、大原櫻子、ももいろクローバーZなどアーティストへの歌詞提供も多数。公式HP:んふふのふ
第38回「ホットケーキ作ろうよ!」
●毎日食べても飽きないホットケーキの味
去年の秋、母から届いた野菜のダンボールの中に、愛媛県産の小麦粉が入っていた。うわあ、県産の粉、嬉しいなあ。そうだ、ホットケーキ食べたいなあ。私は久しぶりにホットケーキを作った。それがとっても美味しくて、美味しすぎて、ここのところ毎日のように朝ホットケーキをしている。なんてシンプルで幸せな食べ物だろう。
ホットケーキというと、子どもの頃のおやつの定番だった。7人家族で三姉妹の私の家は、フライパンでは間に合わず、ホットプレートで大きい丸や小さい丸を並べてはひっくり返して、山のように焼いて思う存分に食べた。
今は、フライパンに大きな丸を一枚。焼きたてほかほかを夫と半分ずつ食べるのが丁度いい。作り方は母が作ってくれていたのと同じだ。
こんなに食べ物にはまったのは、さぬきうどん以来だなあ。毎日食べても全然飽きない。
ホットケーキという響きにまた夢がある。“温かいケーキ”なんだもんなあ。あのまん丸きつね色の可愛らしきフォルム。でもちっとも気どらない素朴な味は、食パンの代わりに食べるのにも丁度いいんだなと作ってみて思った。時間も10分でできてしまう。
ホテル仕込みのホットケーキミックスもいいし、マリールゥの豆乳を入れて作るパンケーキも大好き。でも、どっちもやっぱり特別で、毎日となると、家にある簡単な材料でできるのが一番だ。作り方を工夫しながら自分のベストな味を探して実験する朝は、わくわくして楽しい。
●試行錯誤を重ねてできた生地の黄金比。焼きたてが最高
私のたどり着いた好みの味。大きな一枚をフライパンで作る場合のレシピです。
小麦粉160gに砂糖大さじ1.5、ベーキングパウダー1g、重曹2g、塩1つまみを、ふるう。
ベーキングの量がこんなに少ないのに膨らむ? と思われた方もいるだろう。極限まで少なくしてみた。スコーンを焼いたとき舌がぴりぴりするなあと思ったのがきっかけだった。粉かな? と思い、小麦粉を変えたけどまだビリビリ。ふむ、ベーキングパウダーだな。ベーキングパウダーにはアルミが使われているということで家はアルミフリーのものを使っていたが、それでもやっぱり舌がぴりぴりする。人によるのかもしれないなあ。母は、ベーキングパウダーではなく昔ながらの重曹を使っているのだけれど、重曹は重曹で独特の匂いがあるので最後のとりでにするとして、毎日、ベーキングをどこまで減らすと膨らまなくなるかの実験をしていった。4g、膨らむがぴりぴり。3g、まあまあ膨らむちょっとぴりぴり。2g、お好み焼きみたい…でもぴりぴりは殆ど感じなくなった! じゃあ、ここにほんの少し重曹を足してみたらどうかな! ということで、黄金比ができた。ベーキングが1gに重曹2g!
さて、お次は液体の方を。牛乳150cc、卵1個。なんとシンプルなんだ。ポイントは、卵をふわふわになるくらいよく混ぜること。最近は牛乳を無調整豆乳に変えていて、これはもうホットケーキならぬ、豆腐ケーキという名前にしたいくらいに風味があって美味しい。
いよいよ、粉チームと混ぜる。一気に液体チームを粉チームに入れまして、ポイントはこねこねしないことですな。切るようにざっくりざっくりと合わせていきます。このときに簡単に混ざるようにするためにも、最初に粉を網でふるっておく(もしくは泡立て器で軽く混ぜておく)のは大切だ。硬いなと思ったら牛乳を足したり、ゆるいなと思ったら小麦粉を足したり、そのあたり適当にいきましょう。
その間に、フライパンを熱しておきます。一旦火を止めてバターをひとかけ入れまして、生地を流していきます。まん丸にする秘訣は、円の真ん中の一点にさーっと重ねて流し入れること。ぶれちゃいかんです。
再び点火しまして、中火弱で蓋をして焼いていきましょう。ぷつぷつと気泡ができてきたら、そーれいっと、日頃のうっぷんを晴らすべく一気にひっくり返す! 爽快です! ここからは蓋をせずに、弱火できつね色になるまで焼く。
朝ホットケーキの完成! すっごく大変に思えたかもしれないですが、慣れたら本当に10分でできる。牛乳なんて目分量でいけるようになる。やっぱりこれね、焼きたてが最高なんだな。煮たリンゴ
や、みかんのジャムを添えたり、ハチミツやメープルシロップも、ホットケーキはシンプルだからこそ何でも来い、いわば白飯なのだ。
子どもも大人も眠い冬の朝を包みこんでくれる幸せなホットケーキ。お家で過ごすことの多い毎日に、ちょっとした幸せな時間。ぜひお試しあれ!
【高橋久美子さん】
1982年、愛媛県生まれ。作家・作詞家。1月29日に旅エッセイ集『旅を栖とす
』(KADOKAWA)を発表。
近著に、詩画集「今夜 凶暴だから わたし」
(ちいさいミシマ社)、絵本『あしたが きらいな うさぎ』
(マイクロマガジン社)。主な著書にエッセイ集「いっぴき」
(ちくま文庫)、など。翻訳絵本「おかあさんはね」
(マイクロマガジン社)で、ようちえん絵本大賞受賞。原田知世、大原櫻子、ももいろクローバーZなどアーティストへの歌詞提供も多数。公式HP:んふふのふ