ヤクルトから戦力外となり現役を引退した山中浩史【写真:荒川祐史】

写真拡大

球界のトレンド“高速化”と逆行? 技で強打者抑える投手たち

 見るものをワクワクさせてくれる剛速球。ソフトバンクの千賀滉大投手や西武の平良海馬投手、阪神の藤浪晋太郎投手など、日本人でも160キロを超える投手が出てきており、投手の“高速化”は球界のトレンドとなっていると言える。

 ただ、それとは対照的に、制球力や投球術、緩急で打者を牛耳るのも投手の魅力の1つと言える。では、今季のプロ野球でアベレージの球速が遅かった投手は一体、誰なのだろうか。スピードだけではない投球術で厳しいプロ野球界を生き抜く投手を、セイバーメトリクスの指標を用い分析などを行う株式会社DELTAのデータを基に検証してみる。なお、対象は20イニング以上を投げている投手に限定した。

 12球団で最もストレートの平均球速が遅かったのはヤクルトの山中浩史投手だ。今季でヤクルトから戦力外となり現役を引退したサブマリン右腕のストレートは平均120.5キロ。今季は6試合に先発して1勝2敗という成績だった。

 山中の後には西武の與座海人投手、楽天の牧田和久投手、ソフトバンクの高橋礼投手とサブマリン投手が並ぶ。與座は126.3キロ、牧田は128.5キロと平均球速は120キロ台で、高橋礼は132.6キロと130キロ台に。アンダースローの投手は球速は出ないが、その独特の球筋が武器になる。

上位4人はサブマリンがずらり…5位には燕のベテラン左腕

 この4人に続くのがヤクルトのベテラン左腕・石川雅規投手と西武の“左キラー”小川龍也投手でアベレージ球速は133.7キロ。40歳になった石川だが、その老獪な投球術は健在。今季は2勝止まりだったものの、19年連続勝利という偉業を成し遂げた。

 2018年途中に中日から西武へとトレードで移籍した小川は中継ぎとして不可欠な存在に。2019年にはキャリア最多の55試合に登板してチームの2連覇に貢献した。今季の平均球速は133.7キロ。スピードはなくとも、角度のあるボールで打者を封じている。

 石川、小川に続くのはオリックスの齋藤綱記投手(134.2キロ)、楽天の辛島航投手(134.3キロ)とここまで左腕が続く。サブマリン以外の右投手で最も平均球速が遅かったのは広島の野村祐輔投手で136.0キロ。西武の榎田大樹投手(136.4キロ)を挟み、阪神の秋山拓巳投手の137.4キロが入る。

 平均球速の遅い20人のうち、左投手が13人を占めるという結果に。サブマリンの牧田や高橋礼はもちろん、石川や秋山、日本ハムの宮西尚生投手(139.2キロ、19位)のように、球速が速くなくとも結果を残している選手は数多くいる。(Full-Count編集部 データ提供:DELTA)

データ提供:DELTA
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1〜3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』も運営する。