トカゲが自切や外敵からの攻撃で尻尾を失っても、再生させることが可能なのはよく知られています。しかし、トカゲよりもはるかに巨大なは虫類であるワニも、尻尾を再生させる能力を有していることが研究により明らかになりました。研究者らは、この発見が人間の再生医療にも活用できるのではないかと期待しています。

Anatomical and histological analyses reveal that tail repair is coupled with regrowth in wild-caught, juvenile American alligators ( Alligator mississippiensis ) | Scientific Reports

https://www.nature.com/articles/s41598-020-77052-8

Not just lizards - new study reveals alligators can regrow their tails too | ASU Now: Access, Excellence, Impact

https://asunow.asu.edu/20201125-not-just-lizards-%E2%80%93-new-study-reveals-alligators-can-regrow-their-tails-too

In an Unexpected Twist It Turns Out Alligators Can Regrow Their Tails Too

https://www.sciencealert.com/it-s-not-just-little-lizards-young-alligators-can-regrow-their-tails-too



人間などの哺乳類はケガを修復する能力は持っているものの、トカゲやウーパールーパーとは違って欠損した付属肢を丸ごと再生することは不可能で、修復速度も非常にゆっくりです。また、こうして再生された傷跡の組織は、正常な組織に比べて機能や感度が低下し感染症リスクも高くなるなど、元通りというわけにもいきません。

そこで、アリゾナ州立大学の研究者であるCindy Xu氏らの研究チームは、は虫類が持つ再生能力の秘密を解明すべく、死後間もない野生のアメリカアリゲーターから、欠損してから再生したと見られる尾部を採取しました。

採取されたサンプルの1つが以下。尻尾の先端部を見ると、付け根の部分に比べてウロコが非常に細かくなっているほか、色合いにも違いがあることが分かります。Xu氏によると、これは1度失われてから再生した尻尾の特徴とのことです。



研究チームが、こうして得られた再生部分のサンプルを核磁気共鳴画像法(MRI)やX線写真で分析したところ、再生した尾の組織は非常に複雑な構造をしており、軟骨を中心とした骨格が血管や神経などに包まれている構造まできちんと再生されていることが確かめられました。一方、骨格筋は再生されていませんでしたが、代わりにコラーゲン繊維で構成された結合組織が形成されていたとのことです。また、再生された部位は最大約23cmで、体長の約18%も再生されていたケースがあったことも判明しています。

Xu氏はこの分析結果について、「軟骨・血管・神経・ウロコが再生できるというのは、研究室内で行われた過去の研究結果と一致しています。しかし、まるで傷跡が残るかのように、骨格筋の代わりに結合組織ができているのが分かったのには驚きました」とコメントしました。

以下は、再生された尾の組織を単純な図に表したものです。尻尾の付け根には、濃い茶色で示されている骨格筋がありますが、再生された先端部ではピンク色で示されている結合組織が、骨格筋の代わりに構築されていました。



論文の共同著者であるKenro Kusumi教授は、「ワニや恐竜、鳥類の祖先は、約2億5千万年前に分岐しました。ワニが複雑な尾を再生できる能力を保持している一方で鳥類がそれを失っているという我々の研究結果は、『進化の過程でいつこの能力が失われたのか?』という新たな疑問を投げかけています」と指摘しました。

また、共同研究者である解剖学者のレベッカ・フィッシャー氏は、「さまざまな動物がどのようにして体組織を修復・再生できるかを解明すれば、その知見を活用した新しい医療法を開発できるでしょう」と述べて、この分野の研究が将来的には再生医療の発展につながることが期待できるとの見方を示しました。