全国に複数ある「府中」という地名。元々は、律令時代に各国に存在した「国府」を表すもので、その名残から各地にこの名前が付いた場所が存在している。

なかでも、特に有名なのが東京都の府中市、広島県の府中市、広島県安芸郡府中町ではないだろうか。両市はそれぞれ広辞苑(第七版)にも掲載されているほか、安芸郡府中町も人口5万人を超えており、日本の町村内で推計人口が一番多い町だ。

神奈川県出身の筆者は、府中といわれると真っ先に東京の府中市を思い浮かべるが、他の地域では広島県の府中市、府中町、あるいはそれ以外の府中を思い浮かべるという人もいるだろう。

そこでJタウンネットは2020年7月14日から11月18日まで「府中といえば、どこ?」をテーマにアンケート調査を実施した。得票数は1万341票。果たして、その結果は――。

圧倒的に多いのは東京だけど...



こちらが、アンケート調査の結果をもとに、日本地図を塗り分けたものだ。

総得票数1万341票のうち、府中といえば東京都府中市という回答は6616票(64.0%)。広島県安芸郡府中町が1557票(15.0%)、広島県府中市が1488票(14.4%)、その他が680票(6.6%)だった。

地図を見てもわかるように、ほとんどの地域で一番多く選ばれていたのは東京都の府中市だった。中四国と近畿の一部(和歌山)を除き、全国の大部分が東京都府中市に染まっている。

そして、もうひとつの府中市がある広島県(総数661票)で1位となったのは、安芸郡府中町で400人(60.5%)。府中町は府中市よりも人口も多いため、県内での認知度もより高いのかもしれない。

広島県内では、地元の府中市が215票(32.5%)、東京の府中市が41票(6.2%)、その他が5票(0.8%)だった。

一方で、広島県を取り囲んでいる4県ではそれぞれ広島県府中市が1位に選ばれている。

広島県府中市への投票は、鳥取県では52.4%(11票/総数21票)、島根県では47.2%(17票/総数36票)、岡山県では41.8%(102票/総数244票)、山口県では40.4%(23票/総数57票)。地元と周辺地域で知名度が逆転するという興味深い結果となった。

ここで気になるのが、「その他」が一番多かった和歌山県、香川県、徳島県だ。

なぜ、「その他」が1位に輝いたのだろうか。不思議に思い調べてみると、県内の51.7%(15票/総数29票)の人がその他を選んだ和歌山県には、和歌山市府中という地名があった。

また、県内の55.6%(20票/総数36票)がその他を選んだ香川県にも、坂出市に府中町という場所が。ここにはJR四国予讃(よさん)線の讃岐府中駅や府中湖というダム湖もある。

そして最後に、県内の79.2%(38票/総数48票)と8割近くの人がその他を選んでいた徳島県。

こちらも例に漏れず、徳島市国府町府中という府中の地名が地元にあり、JR四国徳島線の「府中駅」という駅もある。ちなみに、徳島の府中は「ふちゅう」ではなく「こう」と読むらしい。

やはり、この3県で選ばれた一番票を集めた「その他」は、それぞれ地元の府中だったのだろう。

それ以外にも、岐阜県では28.1%(9票/総数32票)、静岡県では20.1%(27票/総数134票)、大阪府では27.2%(163票/総数599票)といった具合に、地元に府中の地名がある地域では、「その他」を選んだ人が一定数いた。