人気のない集落に突如大勢の老人が出現→カカシでした どうしてこんなにリアルなの?制作者に聞いた
畑の作物を荒らす鳥や動物を追い払うために設置されている案山子(かかし)。人がいるように見せかけるのが目的ではあるが、滋賀県東近江市にはあまりにもリアルすぎる案山子が、しかもたくさんいる場所がある、とツイッターで話題になっている。
その実際の様子がこちらだ。
ありふれた風景に見えるが...(画像はdalissime@carol_pianoさん提供)
腰かけて作業をする女性や畑の奥に集まる男性たち、キャリーカートを押すおばあちゃん......。活気のある田舎の風景が広がっている。
これは2020年11月8日、ツイッターユーザーのdalissime(@carol_piano)さんが投稿した写真。
ツイートで、
「リアルすぎて二度見する『案山子街道(滋賀)』
以前真夜中に通りがかりわらわら現れる老人の群に恐怖した。メイン会場の畑には15体以上、住宅敷地内や道端にも趣向を凝らした佇まいでいろいろ居る。道路沿いで手押し車を押してるおばあちゃんは本物かと思って思わずこちらの車のスピードを落としたよ笑」
と説明している。
そう、ここに映っているのは全て本物の人間ではなく、案山子なのだ。
これも全部案山子(画像はdalissime@carol_pianoさん提供)
案山子だと思って見ても、なかなか信じられないほどとてもよくできている。
完成度の高い案山子がこんなにたくさんいる光景、圧巻だ。
この投稿に、ツイッターでは
「案山子としてはものすごく仕事してるなw」
「夜中に見たら絶対この世のモノでは無いと思っちゃう」
「えっこれ全部案山子なの...?!リアルすぎる...
知らずに夜に車で走ってて手押し車のおばあちゃん見たらフルブレーキ踏むわ...」
といった反応が寄せられている。
「作り手のこだわりをとても感じました」
Jタウンネットが10日、投稿者のdalissimeさんに取材したところ、この写真の撮影日は1日。場所は滋賀県の「案山子街道」と呼ばれている場所だという。
dalissimeさんがこの場所を訪れたのは今回で2度目。ツイートにもあるように、最初に訪れたときは真夜中、カーナビに従って走行していたところ、この道を進むよう案内されたという。
「人気の無いはずの田舎の集落に突然大勢のご老人が現れたので心底びっくりしました。パッと見、案山子とは分からず...しかし微動だにしないその姿に『全部人形か!』と気付きました。その時も車を降りて見学したい気持ちもありましたが、真っ暗で写真撮影が難しいことと正直怖かったのでその日はさっと通り過ぎてしまいました」
とdalissimeさん。
リアルすぎて二度見する【案山子街道(滋賀)】以前真夜中に通りがかりわらわら現れる老人の群に恐怖した。メイン会場の畑には15体以上、住宅敷地内や道端にも趣向を凝らした佇まいでいろいろ居る。道路沿いで手押し車を押してるおばあちゃんは本物かと思って思わずこちらの車のスピードを落としたよ笑 pic.twitter.com/tkPT4YU8Hv
— dalissime (@carol_piano) November 8, 2020
普段から、このような面白いスポットを巡ることを趣味としているということで、今回「リベンジしよう」と思い、改めてこの場所を訪れたそう。
その感想を聞くと
「明るい時間に見てみると想像以上に人形の数が多かったこと、また見れば見るほどリアルで、身体つきや関節の角度などが本当にリアルだと思いました。
案山子というと十字の身体にへのへのもへじの顔と衣服を簡単に着せただけのイメージが強いですが、こちらの一体一体にはそれぞれの個性があり、作り手のこだわりをとても感じました」
とのこと。また、
「ただ、現地の看板にも記載されていましたが、この一帯は集落であること、道幅も広くはないこと等ありますので、近隣の方々のご迷惑にならないよう訪れていただければ幸いです」
ともしていた。
それにしても、どのような経緯でこんなにたくさんの、しかもクオリティの高すぎる案山子が作られたのだろうか......?
Jタウンネットではカカシたちの制作者から、その詳細を聞くことができた。
「案山子を見て笑顔になってくれたら」
この案山子を作ったのは、案山子街道がある集落に住む小西節雄さん(73)。
案山子を初めて設置したのは2012年ごろで、畑のカラス除けのために制作したという。
そのときは、1、2体ほどだったという案山子は、その頃からリアルな見た目だったそう。その理由を
「そっちの方が面白いと思ったから」
と小西さんは話す。
そのリアルさは、やはりユニークだと近所でも評判になり、どんどん数を増やしていったそうだ。今ではその評判を聞きつけて、県外からも見に来る人がいるほどだという。
2020年11月現在は、約40メートル四方の畑や周辺のバス停、道路などあわせて全部でおよそ30体の案山子がおり、その全てを小西さんが一人で管理している。
小西さんは、
「服が悪くなったらすぐに着せ替えてやったり、そんなことをしています。そのときの流行りにあわせて、ピコ太郎の格好をさせたり、アメリカのトランプの格好をさせたりもしてます」
と話す。このリアルすぎる案山子の気になる作り方を聞いてみると
「足は垂木という木材で、あばら骨も木で組んでます。膝と腰にはボルトを入れて、体の膨らみは荷物とかに入ってるプチプチで作ってますね。あと腕は針金で作って、ちょうどいい形に曲げたりしてます」
とのこと。もはや案山子というより本格的な人形といってもいいほど丁寧に手の込んだ作られ方をしていて驚く。これほどリアルに見えるにはそれだけの工夫が必要なのだろう。
人間と見間違えてしまう立ち姿だ(画像は画像はdalissime@carol_pianoさん提供)
以前は会社員として働いていた小西さん。
退職後に畑を引き継ぎ、案山子づくりもそれから始めたのだという。
小西さんは、
「ここを通る人や見に来てくれた人が、この案山子を見て面白いねって笑顔になってくれたらそれが一番だね、それが何より嬉しいよ」
と話した。