選挙のシーズンが近づくとテレビや新聞、SNSなどが政治の話題で多くなりがちですが、「政治の話題を見たり聞いたりしすぎることは幸福を損なう原因になる」とハーバード・ケネディスクールの教員であるアーサー・C・ブルックス氏が指摘しています。

Reading Too Much Political News Is Bad for Happiness - The Atlantic

https://www.theatlantic.com/family/archive/2020/10/reading-too-much-political-news-bad-happiness/616651/

政治に対して強い思想を持っている人について、ブルックス氏は「選挙シーズンになると、一部の人々は自分の政治的な意見に、まるで貯金でも守るかのように執着するようになります。孤独でケチな彼らは自分の信念に固執し、誰かに非難されると怒りに任せて暴れるのです。これは、政治的に執着している人だけでなく、他のすべての人にとっても、多くの苦しみの源となっているでしょう」と指摘しています。

ブルックス氏によると「政治に対する関心」と「幸福」の間にある直接的な関係についての研究はほとんど行われていないものの、間接的な証拠はいくつかの調査で示されているとのこと。例えば、2014年に行われた総合的社会調査(GSS)で家計所得、教育、年齢、性別、人種、婚姻状況、政治的見解の関連を調べた結果、政治に関心が高い人は、政治に関心が低い人に比べて、「人生にあまり満足していない」という傾向が強いことが明らかになりました。

また、2017年にオランダで「政治的なニュースが幸福感にどのような影響を与えるか」を調査した結果、テレビで政治に関するニュース番組を1週間見るごとに幸福度が平均で6.1%低下することが明らかになっています。この研究では、ニュース番組では主にネガティブな話題が多く、視聴者は悪いニュースばかり見聞きして不幸な気分を増した可能性があると指摘されています。



幸福だけでなく、友情や家族の絆も政治的な意見の相違によって損なわれる場合があります。アメリカで2017年に行われた世論調査によると、アメリカ国内の約6人に1人が、2016年の選挙のために友人や家族との交流を断ったとのこと。この原因の多くが、友人や家族間で政治思想が対立したことによるものでした。

「しかし、政治的に意見が一致していても、激しい意見を表明したり、政治のことを延々と話したりすることは、人間関係に悪影響を与えます」ともブルックス氏は指摘。雑誌Political Opinion Quarterlyで2018年に発表されたデータでは「ある党を強く支持する人の中には、たとえ同意できる議論であったとしても多すぎる政治的な議論を嫌う傾向がある」と報告されていました。

また、ブルックス氏は「特定の政治思想のめり込みすぎることは、自身の無知を引き起こす原因になる」とも指摘しています。実際、フェアリー・ディキンソン大学が2012年に実施した「ニュースに触れる習慣」を調査した結果によると、政治的に偏ったニュースをよく見る人ほど、ほとんどニュースを見ていない人に比べて「世界の出来事についての知識が少ない」ということが明らかになっています。



「要するに、選挙シーズン中お気に入りの政党に関する報道に釘付けになって、ソーシャルメディアで政治的な怒りを読んだり共有したりして、あらゆる機会を利用して政治についてフルに発言するようになると、幸福度や好感度などが低下してしまう可能性があるということです」とブルックス氏は語りました。

なお、政治思想にのめり込みすぎてはいけないと指摘する一方で、ブルックス氏は政治への関心を捨ててはいけないとも主張。ブルックス氏は、幸福度と政治への関わりの両方を維持する方法として「政治的な議論に参加する際は、愚痴ではなく前向きな意見を推し進める」「政治に関わる時間を制限する」「政治思想の偏りが強いニュースソースは見ない」という3つの方法を提案しています。

「私は、すべての人が政治に関心を持つのを止めることを支持しているわけではありません。善良な市民たちは政治的な過程にも関心を持っており積極的です。しかし、人生の質のため、あなたや他人のために、政治に費やす時間と感情的なエネルギーは制限した方がいいでしょう」とブルックス氏はコメントしています。