岡山県備前市で「市役所前」バス停を確認する飯島さん=昨年12月(本人提供)

 全国にある「市役所前」をひたすら探し求める男性がいる。川崎市川崎区の飯島正之さん(37)は13年間で580超のまちを訪れ、市役所近くにあるバス停の名前を確認。「市役所前バス停プロジェクト」と銘打ち、父親の経営する金物店で働く傍ら「リサーチの旅」を続けている。「同じ事をやってる人はいないはず。やるからには全国を制覇したい」。4文字にこだわる情熱は尽きない。

 「日本で一番多いバス停の名前は『市役所前』ではないか」。2007年3月、北海道を旅行中にこんな考えが頭をよぎった。翌日、帯広市役所を訪ねると庁舎の前に「市役所前」と書かれたバス停。「これは面白い」と、その日から検証の旅が始まった。

 全国の市役所を訪ね、庁舎近くのバス停の名前を確認。「市役所前」と書かれたバス停を見つけたら写真を撮影していく。「県庁・市役所前」や「横浜市役所前」といった名前はカウントせず、ひたすら「市役所前」の4文字を追い続ける。「市などの固有名詞が付くと、その場所にしかないから」と飯島さん。現時点で175カ所を写真に収め、東日本は残り3市にまでたどり着いた。これまでの足跡は冊子やブログで紹介している。

 バス停を探し求める旅は、いわば「市の中心部」を巡る旅でもある。全国各地に足を運ぶ中で、それぞれの都市が直面する課題にも思いを寄せてきた。

 過疎が進む地方を訪れた時は、翌月にバスの運行が終了することを知った。一方、市民が多く集まりそうな市役所でもバス便がないケースもあった。ホームページ(HP)に掲載されていないバス便があったり、バス停の名称がHPの記載と異なるケースも多く、「直接目で確認するのが醍醐味(だいごみ)」という。

 各地での出会いも魅力の一つだ。タクシー運転手らに声を掛けられるなどして「市役所前巡り」と話すと初対面でもすぐに打ち解けるといい、飯島さんは「みなさん必ず興味を持ってもらえます」。

 日本国内には現在792市あり、ゴールまでは200市以上ある。交通の利便性が良くない「離島にある市も意外と多い」上に、現在の仕事の休みは日曜だけと達成へのハードルは高い。それでも、飯島さんは歩みを止めない。「市町村合併や庁舎の移転など常に変化している。一生掛かるかもしれないが続けていきたい」