日産、新型クロスオーバーSUV型EV「アリア」の市販モデルを7月に発表すると予告
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日産自動車が、クロスオーバーSUV型電気自動車「Ariya(アリア)」の市販モデルを、2020年7月に公開すると予告しました。

これは日産が米国市場向けに発表したニュースリリースで明らかになったもの。「For Nissan, the concept is just the first step to reality(日産にとって、コンセプトカーはまさに現実への第一歩です)」と題されたこのニュースリリースでは、これまで日産がモーターショーに出展してきたコンセプトカーと、それをベースにした市販モデルの画像が見比べられるようになっています。

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2015年の東京モーターショーに出展した「IDS コンセプト」が…

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2017年に2代目「リーフ」として市販モデルに。

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2015年のフランクフルト・モーターショーに出展した「Gripz コンセプト」が…

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2019年に欧州で発表された2代目「ジューク」に。

そしてその最後には、東京モーターショー2019で公開された「アリア・コンセプト」と、まだ暗い影の中に隠されている「アリア市販モデル」の画像が掲載されており、後者には「2020年7月」と書かれています。

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全体像は文字どおり闇の中ですが、角形のLED(と思われる)ライトが並んだ薄型ヘッドランプと、その下からフロントグリルの両端を縁取るライティング・ストリップは、コンセプトカーから受け継がれていることが確認できます。

しかし、それ以外はさっぱり分からないので画像をもう少し明るくしてみましょう。

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これで全体のシルエットも認識できるようになりました。

SUVとしては傾斜の強いフロントガラスとリアウィンドウも、コンセプトカーを踏襲していることが分かります。ルーフより低い位置に備わるリアスポイラーも残っているので、日産が「スリーク」と表現するクーペのようなルーフラインは市販モデルも変わらないようです。

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ただし、コンセプトカーはルーフと前後のウィンドウガラスがシームレスにつながっているデザインでしたが、市販モデルのシルエットには明らかにルーフとフロントガラスの間に繋ぎ目のような角が見られます。ルーフはガラス製ではなく、一般的な金属製パネルになるのかもしれません。ルーフの後端に加えられたシャークフィン型アンテナも市販モデルらしい現実味を感じさせます。

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そして衝突安全性を確保するためでしょうか、リア・バンパーもコンセプトカーより張り出しているので、ヘラで削ぎ落としたようなアリア・コンセプトのすっきりした後ろ姿は、諦めざるを得ない可能性が高そうです。

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また、コンセプトカーの塗装は何層も重ねた塗料の中にガラスビーズのような細かいフレークが入っており、光の加減でシルバーにもコバルトブルーにも見える美しいものでしたが(「彗星ブルー」というロマンチックな名前が付けられていました)、東京モーターショーで開発者の方からうかがった話によれば、この塗装は「ショーカー・スペシャルの一品物とお考えください」とのことでしたので、市販モデルにそのまま採用されることはないはずです。

ツインモーターの4輪駆動が濃厚

さらに気になる中身については、今のところほとんど明らかにされていません。とはいえ、東京モーターショーに出展されたコンセプトは、前後に1基ずつ、合計2基のモーターを搭載し、それぞれ前輪と後輪を個別に駆動する4輪駆動を大々的にフィーチャーしていたので、市販モデルも"電動ヨンク"になると予想されます。

現在日産が販売している電気自動車の「リーフ」はモーターを1基だけ搭載する前輪駆動しかないため、特に雪国にお住まいの方は地上高が高くて4輪駆動のEVを待ち望んでいるのではないでしょうか。フロントに内燃エンジンを搭載するクルマとは違い、ツインモーターの4輪駆動EVは後輪に駆動力を伝えるプロペラシャフトが不要です。そのため、車内のフロアをフラットにすることができ、乗員の足元が広々とした室内を実現できるという利点があります。

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モーターやバッテリーに関しては、東京モーターショーで「何馬力とかスペックははっきりと申し上げられないのですが、リーフ以上に進化しています。是非、市販モデル発表時のスペックを楽しみにしていただきたい」というお言葉を聞きました。是非とも7月の発表を期待して待つことにしましょう。ちなみに日産リーフの高性能版「e+」は、容量62kWhのリチウムイオン・バッテリーを搭載し、モーターの最高出力は160kW(218ps)となっています。

また、現行型リーフのバッテリー冷却システムは空冷式ですが、噂によれば新世代のEVプラットフォームを使用するアリアは、より緻密にバッテリーの温度管理が可能な液冷式を採用すると言われています。それが事実であれば、よりバッテリーが安定した性能を発揮でき、劣化も抑えられるという意味でも、"進化"が期待できます。

グリルではなく「シールド」

現代の新型車には欠かせない運転支援技術の面でも、アリアはリーフより先進的な機能が搭載されるはずです。フロントのV字型に発光するフロントグリルは、実は正確に言えば"グリル"ではありません。エンジンに冷却風を取り入れる必要のないEVのアリアでは、この裏側にラジエターではなく、運転支援技術の最新版「プロパイロット2.0」に必要なレーダー、カメラ、ソナーが搭載される見込みです。そのため、日産ではこの部分をグリルではなく「シールド」と呼んでいます。

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日産のプロパイロット2.0は、これらの車載センサーから得た情報に加え、GPSと3D高精度地図データを利用。高速道路上で前走車と適切な車間距離を保つようにアクセルとブレーキを制御したり、車線の中央を維持するようにハンドル操作をサポートするだけでなく、カーブでは曲率に合わせて減速し、目的の高速道路出口に近づけば車線変更操作も支援してくれます。

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前述のようにニュースリリースには「2020年7月」としか書かれていませんが、EV情報サイト『InsideEVs』によると、アリア市販モデルは7月15日に日本の横浜(日産自動車のグローバル本社がある場所)で発表予定とのこと。市販モデルが公開されたら、また改めてお伝えします。

ライバルは多い

実用的な量販EVの先駆けとなった日産リーフは、2020年1月に世界累計販売台数45万台突破が報じられたものの、近年はテスラが(比較的)安価な「モデル3」を投入したことや、中国製EVの躍進に押され、やや苦戦を強いられています。EVのパイオニアを自認する日産としては、世界的に流行が続くクロスオーバーSUV型ボディに最新技術を注ぎ込んだアリアで巻き返しを図りたいところ。しかし、そのライバルは少なくありません。

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テスラはミッドサイズSUVの新型「モデルY」を今年3月に納車開始。ドイツ勢ではアウディの「e-tron」、メルセデス・ベンツの「EQC」(上の画像)に続き、間もなくBMWが「iX3」、フォルクスワーゲンは「ID.4」を発売します。他にも既に販売中のジャガーの「I-PACE」や、欧州等で受注が始まったボルボの「XC40リチャージ」、プジョーの「e-2008」と、同じPSAグループから日本への導入も正式に決まった「DS3 クロスバック E-TENSE」、そしてマツダの「MX-30」にレクサスの「UX300e」等々、日本で馴染み深いブランドだけでも、発売または発表済みのクロスオーバーSUV型EVは枚挙に暇がないほどです。そんな中、「技術の日産」は45万台超のリーフで築いた実績を後ろ盾に、どれだけ存在感を示すことができるでしょうか。

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Source: Nissan USA, InsideEVs