新型コロナウイルス感染拡大の影響で、3月26日と3月31日に開催される予定だった2022年W杯アジア2次予選2試合の延期が正式に発表されたのが、3月11日のこと。さらに、6月4日と6月9日の予選2試合分の延期も4月1日に正式に決まり、森保ジャパンの今後の見通しはすっかり立たなくなってしまった。


森保ジャパンは今度どのような強化を図っているのだろうか

 欧州組を含めた実質的A代表として最後に試合をしたのは、1−4で完敗を喫した昨年11月19日のベネズエラ戦。つまり、もう半年以上という長期にわたって活動がストップしていることになる。もちろん、これだけ長い空白期間は史上初のことだ。

 そんななか、AFC(アジアサッカー連盟)がW杯予選再開の新スケジュールをFIFA(国際サッカー連盟)に提出。AFCの提案によれば、現在4節を残しているアジア2次予選を今年10月と11月のIMD(インターナショナルマッチデイ)に開催する予定で、来年3月からはアジア最終予選がスタートする。


 この案の最終決定にはFIFAの承認が必要とされるが、アジアで再び新型コロナウイルスの感染が爆発的に拡大しなければ、提案どおりに進むはずだ。活動休止を強いられている森保ジャパンにとっては希望の光が見えてきた。

 しかし、手放しで喜んでばかりもいられない。

 なぜなら、今回発表された案でいくと、極めて限られた日程のなかでチームを強化し、予選突破を図らなければならないからだ。ほかの国も同じ条件とはいえ、予選突破はもちろん、本大会での好成績が求められる日本にとっては、かなり頭の痛いスケジュールだといえる。

 では、今後の森保ジャパンのスケジュールを確認してみよう。

 まず、今年10月8日にホームでミャンマー戦を、10月13日にアウェーでのモンゴル戦を戦ったあと、翌11月には12日のタジキスタン戦と17日のキルギス戦をいずれもホームで戦う。その試合を最後にアジア2次予選は終了する予定だ(各国の感染状況により、試合の順番や開催地変更の可能性あり)。


 日本は他の4チームより1試合消化が少ないうえに、現時点で2位キルギスタンと勝ち点5ポイント差をつけている。優位な形で首位に立っているため、たとえ予選以外に親善試合を組めないとしても、もはや2次予選突破は問題ないだろう。

 その後、おそらく12月にアジア最終予選(3次予選)の組み合わせ抽選が行なわれ、6チームによる2グループが決まるはずだ。ちなみに、今回も4.5枠が与えられているアジアでは、最終予選の各グループ上位2チームの計4チームが本大会にストレートインし、3位チーム同士の対決の勝者が大陸間プレーオフに出場することになる。

 来年3月から始まるアジア最終予選では、1チームにつき10試合を戦うことになるが、2021年度のIMDは10試合分しか用意されていない。そこで各チームは、3月、5月末から6月上旬、8月末から9月上旬、10月、そして11月と、5度の代表戦ウィークにそれぞれ2試合ずつをフルに戦い、最終予選の全日程を消化するしかない。


 さらに、W杯イヤーにあたる2022年度のスケジュールはまだ不透明のままだ。

 そもそも当初のFIFAのカレンダーでは、2022年3月の大陸間プレーオフで最後の2枠が決定され、翌4月に本大会の組み合わせ抽選会が予定されていた。そして翌5月末から6月14日までに4試合分、9月に2試合分のIMDが用意されており、11月14日から本大会に出場する代表選手が所属クラブからリリースされ、11月21日に開幕するW杯本番に臨む予定となっていた。

 ところが、予選の消化が大幅にずれ込んだため、アジア最終予選のグループ3位チーム同士で戦うホーム&アウェーの大陸間プレーオフ出場決定戦は、最速でも2022年3月に開催するしかない。となれば、大陸間プレーオフを5月末から6月14日までのIMDで消化せざるを得なくなり、本大会組み合わせ抽選会はそれ以降に行なう可能性も高くなる。

 そのあたりについては、各大陸の予選開催状況も影響してくるため、現時点では何とも言えない。ただ問題は、少なくとも最終予選が終了する2021年度まで予選以外の強化試合を1試合も組めないうえ、予選突破を果たしたとしても、その後に強化試合を組み込める日程がほとんど残されていないことだろう。


 たとえば前回ロシアW杯の時は、ハリルホジッチ監督率いる日本代表はアジア2次予選と最終予選の間に2試合、最終予選中も2試合と、本大会出場を決めるまでに計4つの強化試合を戦うことができた。さらに、W杯イヤー前年9月に最終予選の全日程を終了したことで、本大会までの約9カ月間で計12の強化試合を戦っている(E-1サッカー選手権3試合含む)。

 しかし森保ジャパンの場合、最終予選で2位以上を確保して本大会にストレートインできたとしても、2022年3月に2試合、5月末から6月上旬に4試合、そして9月に2試合と、最大でも8度の強化試合しか組めない状況だ。仮に本大会の組み合わせ抽選会が6月にずれ込んだ場合、本番を想定した相手との強化試合は9月の2試合だけとなる。

 このようなスケジュールであれば、レギュラーメンバーの固定化により拍車がかかることは必至だろう。欧州でプレーする選手が主流となっている現在、国内スケジュールの合間を縫って強化合宿を行なうこともできない。選手を集めて予選を戦うなかでチームを強化し、さらに新陳代謝を進めるためには、とりわけ監督の手腕が問われることになりそうだ。


 さらに森保監督は、来年に延期された東京五輪の代表チームの監督も兼任している。

 仮に来年7月からの東京五輪が無事開催されるとすれば、A代表のアジア最終予選と五輪代表の強化スケジュールがバッティングする可能性がこれまで以上に高くなる。これまで、両チームのスケジュールの問題から五輪代表の現場に足を運べなかったことを考えても、もはや二足のわらじを履くことは不可能だといわざるを得ない。

 本来なら、冬開催のカタール大会に向けて、いつもより余裕のあるスケジュールのなかでチーム強化を行なえるはずだった。しかし、状況が変わったのだから、それに対応するしかない。幸いアジアは他の大陸よりもいち早く新スケジュールを決めることができたので、そのアドバンテージを生かさない手はない。

 この苦境をプラスに持ち込むことができるか否か。そういう意味でも、新スケジュールが見えた現在、兼任監督問題解決を含めた日本サッカー協会の迅速な対応が求められる。