とりわけ「黒歴史」と言えるのが2年連続で7位に終わった09-10からの2シーズン。前述したF・メロに加えて、独りよがりのドリブル突破だけが武器で、しかも好不調の波が大きく信頼性を欠いたサイドアタッカーのミロシュ・クラシッチは、ユベンティーニがこの時期の苦い思い出と共に記憶している名前だ。

 そのユベントスで絶対的なディフェンスリーダーとして君臨するレオナルド・ボヌッチをリストに加えたのは、マッシミリアーノ・アッレーグリ監督との不仲でユーベを飛び出しながら、新加入でキャプテンに収まったミランでまったくリーダーシップを発揮できず、パフォーマンスもガタ落ちしてそれまでの評価を台無しにした1年ゆえ。

 アトレティコ・マドリーで長年最終ラインを支え、やはり絶対的なリーダー候補としてインテル入りしながら、21歳のアレッサンドロ・バストーニにポジションを奪われて終わったディエゴ・ゴディンも、与えた失望の大きさではひけを取らない。このふたりと3バックを形成するウラティスラフ・グレスコは、2001-02シーズンにインテルが最終節でスクデットを自ら放り出した「5月5日」のシンボルとして記憶されている気の毒な左SBだ。
 
 GKは、バルセロナ流のポゼッションサッカーをローマに移植するという壮大な野望の下、ルイス・エンリケ監督たっての要望でアヤックスから獲得されたマールテン・ステケレンブルフ。安定した足下のテクニックとは裏腹に肝心のゴールキーピングでミスが目立ち、監督がズデネク・ゼーマンに代わった翌シーズンは、無名のウルグアイ人GKマウロ・ゴイコエチェアにポジションを奪われるという末路を辿った。

 リストの最後を飾る監督は、選手時代の輝かしい実績とは裏腹に、ミラン、ボローニャの監督としてセリエAでは残念な結果しか残せずにいるフィリッポ・インザーギだ。

 特にボローニャでは、失点を避けることしか頭にないような消極的な戦術を採用した末に降格圏で解任されたうえ、後任のシニシャ・ミハイロビッチがチームを即座に立て直して10位でシーズンを終えたことで、評価をさらに下げる結果に終わった。今シーズンはセリエBでベネベントを昇格目前まで導いているだけに、今後のキャリアに期待したいところではある。

文●片野道郎

【著者プロフィール】
1962年生まれ、宮城県仙台市出身。1995年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中だ。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させている。『ワールドサッカーダイジェスト』誌では現役監督とのコラボレーションによる戦術解説や選手分析が好評を博す。