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プロ野球では毎年多くの外国人選手が来日する。現役メジャー選手やマイナー選手、韓国球界などから富と名声を求めて日本球界に飛び込んでくる。日本でブレイクした選手もいれば、結果を残せず日本を後にした選手も。来日した外国人選手の明暗を分けるものは何か。J-CASTニュース編集部は、元楽天のヘッドコーチで、巨人、西武、ヤクルトでコーチを務めた橋上秀樹氏(54)に話を聞いた。

「私が見てきた外国人選手の中でも一番頭の良い選手」

橋上氏は1983年のドラフトでヤクルトから3位指名を受けて入団。ヤクルト時代は故野村克也氏の指導を受け、現役引退後は野村氏が率いる楽天でヘッドコーチに就任した。その後は、巨人で戦略コーチ、西武、ヤクルトでコーチを務めるなど長きにわたって日本球界に携わってきた。中でも楽天時代はヘッドコーチとして野村氏を支え、野球戦術における評価は高い。

選手、指導者として数々の外国人選手と接してきた橋上氏が、最も高く評価するのが、ヤクルト時代にチームメイトだったトーマス・オマリー(米国)だ。橋上氏は「私が見てきた外国人選手の中でも一番頭の良い選手でした」と振り返る。

橋上氏によると、オマリーの優れていた点は「配球を読む力」だったという。現役時代のある試合でのことだ。打席には古田敦也氏が入っていた。カウントは2ボール2ストライク。相手投手の決め球はフォークとチェンジアップだ。オマリーは橋上氏に「次はストレートだ」とつぶやいた。橋上氏がなぜかと問うと、「ここでウイニングショットは使わない。勝負はツースリーからだ」と言い切ったという。

オマリーの言葉通り、その投手が投じたストレートはコースを外れてカウントは3ボール2ストライクに。そして決め球にフォークを投じて古田氏を打ち取ったという。オマリーは「あのピッチャーは同じ球種を2球続けて投げたくないはず。だからストレートで一度外してからウイニングショットで決めてくると思った」と説明した。橋上氏は、オマリーの配球の読みの鋭さは、野村氏にも匹敵するほどだったと感心する。

「スレッジの集中力はすごいものがありました」

橋上氏によると、日本で活躍した外国人選手が共通して持っていたのは「柔軟な頭」だという。「よく野球とベースボールの違いが指摘されますが、日本野球の配球に苦労する外国人選手は多いです。オマリーのように柔らかい考え方を持って、いかに日本の野球に対応することが出来るかが成功するポイントのひとつだと思います。オマリーにはスマートさ、シャープさがありました」と話す。

橋上氏がコーチ時代、オマリーに重なって見えたのが、日ハムなどで活躍したターメル・スレッジ(米国)だったという。スレッジといえば、2009年のパ・リーグ、クライマックスシリーズ第2ステージ第1戦(対楽天)で、逆転サヨナラ満塁本塁打を放ったことで知られる。当時、楽天のベンチにいた橋上氏は「完全に配球を読まれていたと思います」と振り返った。

スレッジの特徴は、配球を読む力に加えて勝負強さにあったという。当時、相手ベンチからスレッジを見ていた橋上氏は「球種を絞ってくる時もありましたし、コースを狙っている時もありました。得点圏内にランナーがいると読みが冴えるタイプでしたね。ランナーがいる時のほうが読みやすかったのかもしれませんが、スレッジの集中力はすごいものがありました」と語った。

「ペタジーニほどの期待はなかったと思います」

また、柔軟な頭の持ち主として橋上氏が挙げるのが、現DeNAの監督であるアレックス・ラミレスだ。「ラミレスがヤクルトに入団した当時は、ペタジーニがいましたから、ペタジーニほどの期待はなかったと思います。ただ、ペタジーニという良い見本がいたことで、学んだことは多かったと思います」と振り返る。

橋上氏によると、ラミレスはどうしたら日本のメディアが喜ぶかを考え、チームメイトに聞きながら実践したという。日本の文化に溶け込み、日本の野球を研究してきた結果、多くの引き出しを作り出して長きにわたって日本球界で活躍出来た要因であると指摘する。

「ラミレスはヤクルトから巨人に移籍しても数字が落ちなかった。他球団から巨人に移籍した多くの外国人選手は成績を落としましたが、ラミレスは違った。私は巨人の歴代外国人選手の中でもラミレスはトップクラスの選手だったと思います。ラミレスがこれほど長く日本球界で活躍して監督にまでなるとは当時は想像も出来ませんでしたが、本人の努力と人間性もあるでしょう。いまや人気球団を率いる監督ですから立派だと思います」(橋上氏)