ベントレーの高級SUV「ベンテイガ・ハイブリッド」高速道路ではガソリンV8の同型車より燃費が悪いことが明らかに
同じ車種であれば、ガソリンV8エンジンよりも、排気量と気筒数が少ないエンジンに電気モーターを組み合わせたハイブリッドの方が燃費がいい......とは、必ずしも言えないようです。

英国の高級車メーカー、ベントレーが販売するプラグイン・ハイブリッドSUV「ベンテイガ・ハイブリッド」の燃費が、米国環境保護庁から発表されました。それによると、欧州複合モード燃費で3.6L/100km(約27.8km/L)を謳う同車も、米国の高速道路ではV8ガソリン・エンジン(だけ)を搭載する「ベンテイガ V8」より、燃費が悪いことが明らかになりました。

米国環境保護庁の試験値によると、排気量3.0リッターのV6エンジンと電気モーターを搭載するベンテイガ・ハイブリッドの高速道路燃費は20 US mpg(約8.5km/L)。これに対し、4.0リッターV8エンジン搭載のベンテイガ V8は、23 US mpg(約9.8km/L)でした。

ベンテイガ・ハイブリッドは、システム合計で最高出力449psと最大トルク700Nmを発生し、0-100km/hを5.2秒で加速します。一方、ベンテイガ V8は最高出力550ps、最大トルク770Nm、0-100km/h加速4.4秒と、動力性能もはるかに強力です。



もちろん、市街地ではガソリンを1滴も燃やさずに40km前後の距離を走れるハイブリッドの方が、環境に優しいことは確かです。米国環境保護庁による市街地/高速道路を組み合わせた試験では、ベンテイガ・ハイブリッドはガソリン等価換算燃費で45 MPGe(約19.1km/L)を記録しました。ただし、家庭のコンセントや充電ステーションで蓄えたバッテリーの電気を使い果たした後は、19 US mpg(約8.1km/L)に留まるとのこと。ベンテイガ V8の17 US mpg(約7.2km/L)と比べると、エンジンの大きさが4分の3に減った割には、差が少ない印象を受けます。



米国環境保護庁による試験は、欧州の試験基準よりも厳し目の数値が出ることが多いのですが、それでも欧州複合モードの約27.8km/Lという数字に期待して購入すると、実際の燃費にがっかりするかもしれません。ベントレーの大型SUVを選ぶ人は、高速道路を走る機会が少なくないと思われるからです。



日本ではまだベンテイガ・ハイブリッドは販売されていませんが、米国における車両価格は16万ドル(約1720万円)から。一方、ベンテイガ V8は17万1,025ドル(約1840万円)からとなっています。モーターとバッテリーよりも、シリンダー2本の方が高価になるようです。

ちなみに、ベンテイガ・ハイブリッドの高速道路燃費は、同時期に米国環境保護庁から燃費が発表された新型シボレー・コルベット(21 US mpge ≒ 8.9km/L)よりも劣りました。空気抵抗の大きな車体に、さらに重い電池を搭載することが、高速走行では不利に働くためでしょう。



しかし、ベンテイガと比べるとラグジュアリー度は下がるものの、ボルボのプラグイン・ハイブリッドSUV「XC90 T8 Twin Engine」(上の写真)は、米国の高速道路で28 US mpg(約11.9km/L)という燃費を達成しています。

こちらもベンテイガと同様に4輪駆動の大型SUVですが、電気モーターと組み合わせるエンジンが、より小さな2.0リッター直列4気筒ということも燃費に貢献しているはず。とはいえ、合計最高出力400ps、0-100km/h加速5.8秒という動力性能は十分と言えるでしょう。価格は6万7,500ドル(約725万円)からと、ベンテイガよりも大幅に安い...なんていうことは、ベントレーを購入する人にとってまったく意味のない情報かもしれませんね。失礼しました。



なお、ベントレーにとってプラグイン・ハイブリッドはあくまでも過渡的措置に過ぎないようで、同社のエイドリアン・ホールマーク会長兼CEOは「2025年までに純粋な電気自動車を登場させる」と宣言しています。2019年7月には創立100周年記念の一環として、同社の将来を予見させるフル電動コンセプトカー「EXP 100 GT」(上の写真)を公開しました。ベントレーの電気パワートレイン専門エンジニアたちは、もはやプラグイン・ハイブリッドの効率を上げることよりも、そちらの開発で忙しいのかもしれません。

Source: Green Car Reports, www.fueleconomy.gov