NHKドラマ10「この声をきみに」のスピンオフオリジナル舞台に出演する佐津川愛美さん

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2020年3月12日〜22日東京にて上演される、2017年に竹野内豊さん主演で放送されたNHKドラマ10「この声をきみに」のスピンオフオリジナル舞台化が決定。この作品に出演する佐津川愛美さんに、舞台に向けての意気込みを聞かせていただきました。

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■ 演じるキャラクターが朗読しているのでやっぱり心が二重になっていると感じる

――出演が決まったときのお気持ちを教えて下さい。

【佐津川愛美】出演が決まったときは、朗読教室のお話だからほっこりできる作品なのかな、自分も癒されたいなと思っていたんですけど、稽古が始まったらちょっと違いましたね。実際はとても大変でした(笑)。

技術的なことはこれからもっと習ったりすると思いますが、セリフにも出てくるんですけど、読んでいる人のことが見えるように読むと、声とか雰囲気からその人となりがわかるように読むというのが大変です。

自分が表現できていることと違うというか、単純に自分が朗読しているわけじゃなくて、演じる今日子先生が朗読しているのでやっぱり心が二重になっているというか、私が演じている今日子先生が朗読するキャラクターを感じさせなくちゃいけない。ふたつ、いつもとは違うフィルターみたいなものがあるなと感じています。

私だったらこう読むけど、今日子先生だったらこう読むだろうなと。普段はこの人だったらこうかなって演じているんですが、その先にもうひとつ難しいことがあるというのが、表現するうえで大変だなと思っています。

これまではふたりペアの朗読劇が多かったのですが、今回はみんなで朗読する舞台なので、みんなの朗読を聞いたりするのも初めてで、こんなに朗読するだけでキャラクターが現れるんだって感じています。客観的に見えるというか、今までにない経験をさせてもらっています。

■ ふたりの恋愛に対して、空気とかで作れたらいいなと思う

――今回演じる役について、改めて教えて下さい。

【佐津川愛美】年齢は32歳で私に近いです。ちょっと天然で空気が読めないというか。もともと本が好きな文学少女で、紆余曲折あって挫折して悲観的になってしまったときに朗読に出会い、『灯火親』(朗読教室)に来て先生になっている。

今日子先生が悩んで変わっていくみたいなお話ではなく、今日子先生や朗読教室のみんなと出会った考史(尾上右近さん演じる岩瀬考史)が変わっていくお話しなので、どちらかといえば導くような役割かなと思います。相手のことをどういう風に見ているのかなというのを稽古で作っていく感じです。

演出の岸本(鮎佳)さんとも話していますが、軸としては孝史と今日子先生の物語がある。そして、みんなそれぞれのお話もある。なので、私達の物語はほっこりするというか、少しはキュンとするような要素があるといいねという話をしています。それをどう演じていくかというのを、もっと深めていきたいです。

セリフで、二人の恋愛事情が分かりやすいところはあまりないのですが、空気で作れたらいいなと思います。

今回ストレートな言葉がいっぱいあるんですけど、全部は言っていないというか…、分かりやすいストレートな言葉もあるんですが、そこに表現していないものもたくさんある。そのバランスが面白いなと思います。

■ 言葉って難しいなってここ最近改めて思っている

――朗読を題材にした作品ですが、“言葉”についてどう感じていますか。

【佐津川愛美】ひとつのことをみんなで楽しめる、ことばの響きの面白さを感じるシーンを、みんなで楽しく発声練習したんです。そのシーンをやったときに、台本を読んだだけじゃ分からなかったんですが、稽古をしたときに本当に面白いなと思って、言葉って普段絶対使っているものじゃないですか。

でも、この響き面白いよねとか、そういう視点では見てなかったので、これだけ言葉を使っているのにそういう面が見えてくるっていうのは面白かったし、いつもこうやって使っているからこそ大事にできていないこともあるんだなと思いますね。

自分が話す言葉はすごく考えちゃいます。ここ数日ずっと、なんでこんなこと言っちゃったんだろうなとか、あの言い方がなければとか。同じ言葉でもああいう感情で言わなくちゃとか、言葉って難しいなと改めて思っています。

――稽古の様子はいかがですか。

【佐津川愛美】小野(武彦)さんは本当に素敵でチャーミングです。自分以外のところでも提案してくれたり、疑問などを沢山投げかけてくださるんです。お陰でみんなも質問しやすく、話しやすくなりました。

小野さんといると元気になります(笑)。大先輩なのに一番アグレッシブだし、急に可愛いハプニングが起こったりしてみんな笑っちゃう。楽しいし、私達ももっと頑張らなくちゃ!って思わせてくれます。

まだ台本が全部出来ていない段階から、ディスカッション的な時間がもてたことで、みんなと共通認識を持て、シーンごとなんとなくの空気感がわかったり。単純にみんなとの仲が深まっていい雰囲気を作れていると思うし、面白い積み重ね方ができていると思います。

■ 舞台ってその時にしか感じられない感情を共有できる

――作品の見どころについて教えて下さい。

【佐津川愛美】朗読するシーンもたくさん出てくるので、その時の読むメンバーで読む感情がこんなに違うんだっていう面白さもあると思うし、わりとキャラクターが個性豊かな感じなので、楽しんでもらえたらいいなと思います。

――改めて舞台の魅力について聞かせて下さい。

【佐津川愛美】舞台って、その時にしか感じられない感情を共有できるという良さがあると思います。共有するということが舞台がでは一番なのかなと。映像は、自分のなかで考えることが多いと思うんですけど、舞台はその時の気持ちを共有して、観に来てくださるお客様もみんな一緒になってその時間を過ごせるっていうのが魅力。そして、みんなで作り上げるものだと思うので、そういう良さを感じてもらえる作品になればいいなと思います。

――最後にひと言お願いします。

【佐津川愛美】綺麗な言葉をちゃんと伝えられる時間になればなと。

難しいことや色んな事がある毎日ですが、私も含めこの作品で少しでも優しくなれるといいなと思います。ぜひ観に来て頂ければ嬉しいです。

撮影=槇野翔太(東京ウォーカー(全国版)・ウォーカープラス/野木原晃一)