東京オートサロンに出展されたS2 Racing「ジムリィ」(筆者撮影)

1月10〜12日に幕張メッセで開催された東京オートサロン。久しぶりに足を運んで驚いたことの1つは、昔に比べて出展車種のジャンルが増えていたことだった。昔のオートサロンはスポーツモデルが中心だったが、今はSUVやワンボックスが多くなり、輸入車も目につくようになった。


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その中でも個人的に印象に残ったのが、スズキ「ジムニージムニーシエラ」(以下総称する場合はジムニーと記す)だった。ざっと数えただけでも20台以上はあったのではないだろうか。

ジムニーはカスタムの内容もバリエーションに富んでいた。ジムニーのカスタムというと、オフロード走破性を高めるべくサスペンションやタイヤに手を入れるという内容がこれまでの主流だった。もちろんそのような内容の出展車両もあったが、ボディ中心のカスタムも目立っていた。さらにはジムニーのボディやメカニズムを他車種に移植した実例もあり、3段活用という言葉を使いたくなるほどたった。

現行ジムニーの顔をコンバートした車も

昨年のオートサロンの時点で1つのトレンドになっていたのが、フロントマスクをメルセデス・ベンツ「Gクラス」やランドローバー「ディフェンダー」などに似せたカスタムだった。今年は初代ジムニー風の顔つきを与えた「ザ・ルーツ」もあった。


APIO×DAMD「ザ・ルーツ」(筆者撮影)

ジムニーのスペシャリストとして知られるAPIOと、Gクラスやディフェンダー風のカスタムをリリースしていたDAMDのコラボ作品で、今回はSUVのパイオニアの1台である1960年代の初代フォード・ブロンコ風の顔を持つ「ドロンコ」も展示していた。

でも現行ジムニーの顔が好かれていないというわけではない。その証拠に、ほかの車種にジムニーの顔をコンバートしたカスタムもいくつかあった。


日本自動車大学校「イージーキャンパー」(筆者撮影)

S2 Racingは同じスズキの軽ワンボックスワゴン「エブリィ」の顔をジムニーにコンバートしたその名も「ジムリィ」を出展。さらに驚いたのは、日本自動車大学校が出展した「イージーキャンパー」だった。

隣に走破性を高めるべく車高を上げ大径タイヤを履いた現行ジムニーシエラが置かれていたので、逆に車高を限界まで下げたものだと思いつつ製作した学生に聞くと、ベースは「ラパン」であり、アウトドアテイストを高めるためにジムニー顔を移植したとのことだった。

逆にジムニーのメカニズムを他車種のボディに移植した例も複数あった。ご存じの方もいるとは思うが、ジムニーは初代から現行型に至るまで、ハードなオフロード走行に対処してボディとは別体のラダーフレームを持っており、エンジンやサスペンションはこのフレームに固定している。自動車修理に精通した人であれば、ボディとフレームは切り離すことが可能だ。

この構造を活用して、異なるボディを組み合わせた実例は古くからあった。1990年代のパリ〜ダカールラリーには、三菱自動車工業のSUVの代表格「パジェロ」のフレームに、三菱が1930年代に試作した4WD「PX33」のレプリカボディを合体させたカスタムマシンが出走し、何度か完走を記録していた。

若者らしい自由な遊び心を感じる車

会場にも同じような構成を持つカスタムが複数あった。


ZEALエブリィ+ジムニー(筆者撮影)

現実的な例としては、4WDスペシャリストのZEALがエブリィのボディと組み合わせた車両で、展示車両は大径タイヤを履いていたが、ノーマルタイヤであれば軽自動車公認登録が可能とのことだった。

ZEALではスズキとダイハツの軽トラック・ワンボックス全車種に対応可能としている。ジムニーの走破性とワンボックスの広い車内、あるいはトラックの荷台を両立したいと思うユーザーに最適だろう。


埼玉自動車大学校「S-ROCK」(筆者撮影)

今回のオートサロンでマイナーチェンジモデルを発表した本田技研工業の軽スポーツカー「S660」のボディとジムニーの足回りを組み合わせたカスタムを出展したのは埼玉自動車大学校だった。

オフロードスポーツカーというコンセプトであり、エンジンが積まれていたキャビン背後はピックアップ風の荷台として、リアキャリアには原付バイクを積載していた。S-ROCKという名前ともども、若者らしい自由な遊び心に感心した。

ここまでジムニーのカスタムが多くなった理由の1つに、最近になって新規にジムニーを手がけたカスタムビルダーが多いことがあるようだ。その1つが、VIPカーと呼ばれる高級セダンのカスタムで知られているK-BREAKで、JIMRIDEという新たなブランドまで用意していた。


K-BREAK「JIMRIDE」(筆者撮影)

担当者に話を伺うと、もともとジムニーのオーナーであり、自分たちらしいカスタムができないかと考えた結果とのことで、ホイールはハイエース用に設定していたスティール製を装着し、ビレットグリルと呼ばれる細かい横ざんのグリルや専用設計のオーバーフェンダーなどによって、アメリカンな雰囲気を持たせたという。

エンジンチューニングでは、CAR STYLEのジムニーシエラが圧巻だった。カスタムカー業界では老舗と言えるTRUSTのターボを装着し、ノーマルの3倍近くにあたる300psを目指しているという。渋いモノトーンでまとめたスタイリングともども、ハイパフォーマンスを追求したカスタムであることが伝わってきた。

ジムニーが放つ「独特の存在感」

本家であるスズキも「ジムニーシエラ・マリンスタイル」と銘打った、マリンスポーツのパートナーに似合いそうなカスタムを出してきていた。


スズキ「ジムニーシエラ・マリンスタイル」(筆者撮影)

しかしスズキのブースには、モデルチェンジ直後のハスラーをストリートスポーツの基地に仕立てた「ハスラーストリートベース」や、同じスズキの大型モーターサイクル「KATANA」のイメージを「スイフトスポーツ」に重ねた「スイフトスポーツ・カタナエディション」などもあり、ジムニーが主役というわけではなかった。

これ以外にタイヤやエレクトロニクス系のメーカーも、ブースにジムニーを置いていた。そんな光景を見ながら思ったのは、ランボルギーニなどのスーパーカーと比べても、小さいけれど四角くて背が高いフォルムが独特の存在感を放っていたことだ。出展社438、車両800台というオートサロンにとって、この存在感は重要だ。しかもカスタムビルダーにとってもユーザーにとっても手が届きやすい。これもまた親近感を寄せやすいという意味で、注目の対象になる。

しかもジムニーには小型車枠のジムニーシエラもあるので軽自動車枠の制約を受けることはないし、前述のようにボディとフレームが別体であるなど、構造面でもカスタムに有利である。市販型はいまだに長期納車待ちという状況が続いているようだが、カスタムの世界でもしばらくジムニー人気は続いていきそうだ。