貫地谷しほり 撮影/佐藤靖彦

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「20代のころは現場に行くだけで楽しかったんです。周りの期待に応えられたときのうれしさみたいなものもあって。つまずいたとしても、ネガティブな自分の気持ちは全部無視して、とにかく突っ走ってきました。でも今は“待つ”。落ち込んだら、まずはそういう気持ちがあることを知って、それも味わってよかったと思えるようになれるといいなって。少しは大人になりました(笑)」

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 先日まで放送されていた『なつぞら』での好演が話題となった貫地谷しほり。かつては自らが朝ドラのヒロインを務めていた彼女も、今や33歳。

 少女から大人の女性へ――。そんな彼女が次に挑んだのは、DVや乳児遺棄、不妊治療や養子縁組制度といった問題を真正面から描いた話題の映画『夕陽のあと』。貧困からわが子を手放す選択をせざるをえなくなった主人公を演じ、“とにかくつらかった”と撮影期間を振り返る。

「こういった問題って、誰にでも起こりうるものだなと。もしかしたら隣の人がそうかもしれない。当事者にしかわからないつらさがあると思うんですが、わからないのに“悪”と決めつけてしまうのも違うなと思ったんです」

 劇中で描かれる不妊治療については、

「周りに不妊治療をしている人はいないんですが、友達とは卵子凍結とか、高齢出産のリスクについて話題に上がったりすることも増えてきて。生きるうえで、社会のことを考えることは切っても切れない。決して他人事ではない問題なので、多くの方に見ていただきたいです」

いつか“お母さん”になれたら

 そんな貫地谷、今年9月に結婚を発表したばかり。映画ではすっかり母親の表情を見せていたが、自身の母親願望は?

「いつか、お母さんになれたらいいなぁという淡い願望はあります。30代半ば過ぎには……ってもう、すぐですね(笑)。母親って何事も子どもが基準になるじゃないですか。でも私は自分軸で生きてるから、まだまだかもしれないです」

 昔から、両親や周りの大人たちに大切に育てられてきたという彼女。キュートな笑顔を見せ、

「私、しつこい親になるんじゃないかな」

 と、思いを馳せる。

「幸せなことなんですが、両親の愛が過剰なくらいで(笑)。子どものころは、あれもこれも心配されて、友達との旅行でもひとりだけ荷物が多くなっちゃうタイプの子でした。大人になった今でも、実家に帰ると2人がトイレまで追いかけてきてしゃべってくるんですよ。私も母親になったら、わが子に口うるさく言っちゃいそうですね(笑)」

■父、号泣!?

「両親が私のことを大事に思ってくれるのはいいんですが、前に映画で、最後に亡くなってしまう役を演じたときに、作品を見たお父さんが大泣きしながら電話をかけてきて(笑)。激しく感情移入してしまったらしく、映画館から帰宅したとたんにひざから崩れ落ちたとか。“私は生きてるよ!”って必死に慰めました(笑)」

11月8日(金)より全国順次ロードショー
映画『夕陽のあと』
鹿児島県長島町。夫とブリの養殖業を営む五月(山田真歩)は、7歳になる里子・豊和の“本当の母親”になれる期待に胸をふくらませていた。そんな中、1年前から島の食堂で働く茜(貫地谷しほり)が、豊和の生みの母親であることが発覚し――。

<スタイリスト/番場直美、ヘアメイク/北一騎>