「疲労困憊ですよ」「いつ電気が...」停電13万軒の千葉 住民は表情硬くつぶやいた
台風15号が首都圏を直撃してから最初の週末となった2019年9月14日、J-CASTニュースはいまだに停電が解消されない千葉県君津市と鴨川市を取材した。
記者が訪れた場所では、一見すると主要な道路や駅前をはじめ信号はほぼすべて点灯し、交通の混乱は起きていなかった。一方で停電が続く地域の住民に話を聞くと、疲れや怒り、不安といった感情のこもった言葉が出てきた。
ようやく見られたテレビは「停電以外の話題ばかり」
「すみません、営業していますか」
千葉県君津市、片倉ダムと笹川湖に近い道の駅にある「きみつふるさと物産館」は、扉が開いているが中は薄暗い。ほどなく、「いらっしゃいませ」と女性の声が聞こえた。建物が暗いのは、停電中のためで、トイレも使用禁止となっていた。自然が豊かで風光明媚なこの一帯は、通常なら3連休の初日で訪れる人が多いだろうが、客は誰もいない。
店員の2人の女性は、自宅も停電したままだと嘆く。「入浴できないのがつらい。体を拭いてしのいでいる」「断水も続いているので、給水車を頼っている」「ガソリンを入れるのに、1時間も待った」。厳しい生活の様子が、次々と明かされる。最後は2人とも、硬い表情でこうつぶやいた。
「疲労困憊ですよ」
「(停電解消の時期が)いろいろ言われているけれど、いつ電気がくるんだか......」
怒りとも諦めとも聞こえるようだった。
物産館から15分ほど歩いた場所にある「レンタルボートもとよし」を訪ねた。湖での釣り客にボートを貸し出している。店主の本吉順一さん(53)は、「きのう(9月13日)電気は通ったんですけど、まだ水が使えません」と話した。台風でボートが次々とひっくり返り、穴が開いて使用不可能になったボートもある。3連休で見込んでいた客足に影響が出て、頭が痛い。
本吉さんは「もっと大変な人がいます。停電が解消しただけでもありがたい」と前向きだ。それでも停電中は通信手段が遮断され、情報が全く入ってこず不便を極めた。自宅では携帯電話も「圏外」となり、買い物ついでに15分ほど車を走らせた「電波の届く場所」でようやく通話やデータ通信が可能となった。4日以上耐えてようやく電気は戻ってきたが、「テレビを見ても停電以外の話題ばかり。『こりゃダメだ』と消してしまいました(苦笑)」。
停電中は、いつ通電するか見通しが分からなかった。「『今、この地域で作業中』といった、きめの細かい情報を提供してもらえたらありがたかったですね」と振り返った。
精神的ダメージに加えて経済損失も
君津市の南に位置する鴨川市。中心部から電車で6分ほどの天津(あまつ)は9月14日午前中までに、ツイッターで「停電が解消されていない地域が多い」との投稿が複数見られた地域だ。取材の途中、隣の家に「停電、大丈夫ですか」と声を掛ける住民や、天津小湊公民館で食料や水を配布している様子が目に入った。
海岸近くで会った女性に聞くと、「今朝(14日の朝)、やっと電気が来ました」と話した。「大変でしたね」と声を掛けると、「ええ、なにせ5日間(の停電)ですからね」と疲れた表情で応じた。
JR安房天津駅の近くで食料品店を営む男性は取材に対し、「停電が解消したのは、13日の夜です」と答えた。「台風の後は猛暑が2日ほど続いたのでつらかった。窓を開けっぱなしにするしかありません。真っ暗なのも怖かったですね」。
停電のため、男性の店ではアイスクリームが冷やせないのをはじめ営業面の損害が出た。海の街・鴨川は、漁業関連の従事者が多い。鮮魚店や水産加工業者にとっては、魚を保存する冷蔵庫が使えなくなるなど大きな支障となった。「こうした経済損失が積み重なって、産業面では大きな被害になると思います」と指摘した。
天津の住民は高齢者が多いと男性は説明する。「停電中、夜は真っ暗でした。そして耐え難い暑さ。精神的なダメージは大きかった。ひとり暮らしのお年寄りのなかには、耐えられなく人がいてもおかしくありません」と表情を曇らせた。
東京電力が発表した千葉県内の停電軒数は、9月15日15時時点で約13万1000軒。熱帯低気圧の影響で、千葉県では15日夜から16日明け方にかけて大雨になるとの予報が出ており、心配な状況が続く。
(J-CASTニュース編集部 荻 仁)