2019年上半期(1月〜6月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。ビジネス部門の第4位は、こちら!(初公開日 2019年2月7日)。

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 ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子です。今年も確定申告の季節になりました。平成30年分の確定申告の相談及び申告の受付は、平成31年2月18日(月)から3月15日(金)までです。

 会社員だし、確定申告は関係ないと思っている人も多いかもしれません。ですが、会社員でも申告をしなければならないケースがあるのをご存知でしょうか。実際に、会社員でうっかり忘れたり、漏れたりして税務調査に入られた…という話を時々耳にします。平成30年は副業元年とも言われますが、今年は特に、会社員が確定申告の「落とし穴」にハマってしまう可能性があるので、注意が必要です。


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会社員でも確定申告をしなければいけない3つのケース

 会社員の場合、一般に年末調整によって所得税額が確定し、納税も完了するので確定申告の必要はありません。会社員でも確定申告が必要になるのは、主に次の3つのケースです。

パターン1:給与の年間収入金額が2000万円を超える人
パターン2:1か所から給与の支払いを受けている人で、給与所得(退職所得)以外の所得の合計額が20万円を超える人
パターン3:2か所以上の給与の支払いを受けている人で、メインの給与以外の給与(収入金額)とその他の所得(給与・退職所得以外)の金額の合計額が20万円を超える人

 国税庁ホームページ 給与所得者で確定申告が必要な人

 つまり、副業・兼業を行い、20万円を超える副収入がある場合は、企業による年末調整だけではなく、個人による確定申告が必要になります。ちなみに20万円は所得ベースなので必要経費を引いた後の所得になります。

 例えば、不動産所得、株の売買で得た利益(譲渡所得)、仮想通貨の所得(雑所得)などがよくあるパターンです。また、会社員だけどカメラマンとして副収入があるというケースなどは、一般に雑所得もしくは事業所得となります。

 不動産所得を申告しなければならないのを知らずに数年間申告をしていなくて税務調査に入られた会社員の話を聞いたことがあります。また、株式の売買も申告不要の口座(源泉徴収される)に入れていないために、一カ所で申告漏れをして呼び出しを受けたという話などもありました。

ネットオークションやフリマでの収入はどうなる? 

 ネットオークションやフリマで得た収入も雑所得となる場合もあります。売上から仕入れや経費を除いて得た所得が20万円を超えると申告が必要になるからです。業者のように安く仕入れて高く売るなどの売買をして利益を得ているという人は注意が必要になります。

 販売した物が、洋服、家具、食器など自宅にあって使わなくなった物の場合には、生活用動産として所得が20万円を超えても確定申告の必要がない場合もあります。他方で、宝石、貴金属、アートなどの場合で1点が30万円を超えると、経費を引いた後の所得は原則として課税対象となります。

 その他、パートの掛け持ちをしているという人も、パターン3に当てはまる場合は確定申告が必要になってきます。例えば、メインの会社で80万円の収入があって、もう一つの会社でも50万円収入があるといったケースなど。サブの会社の収入が少ない場合も、その他の所得(例えば、不動産所得など)を合わせると20万円以上になる場合は申告がいります。パートだからと言って済まない場合も出てくるのです。

「億り人」たちの申告漏れも見ている

 株式やFXなどへの投資によって1億円以上の資産を築いた人物のことを「億り人(おくりびと)」と言いますが、若くして億り人となってシンガポールに来ているニューリッチ達を見かけることがあります。

 仮想通貨を初期から始めていてひと財産を築いたという人もいるかもしれませんが、仮想通貨を売却して得た利益が1億円を超えたとしても、1億円がまるまる手取りとして残るわけではありません。実際には仮想通貨への投資によって得た利益は雑所得として確定申告をする必要があり、大まかにその半分程度を納税することになるのです。

 仮想通貨の取引で得た利益は雑所得に分類され、会社員で利益が20万円を超える場合は確定申告の必要があります。

 雑所得は総合課税の対象で、給与所得などほかの収入と合算した額に応じて税率が決まります。所得税は収入に応じて課税率が上がっていく累進課税で最高税率は45%です。利益が多額となれば、累進課税によって所得税の税率は最大45%までアップして、住民税10%と合計して最大55%になるからです。仮想通貨の取引は業者を通じて行うので国税がデータを入手することも容易です。

100万円を超える海外送金は税務署に筒抜け

 また、海外投資に関しても以前は把握がしにくかったようですが、時代はすっかり変わりました。

 まずは入り口で把握する仕組みで、1回当たり100万円を超える海外送金は「国外送金等調書」で把握されています。送金者、受領者、本人口座番号、取次金融機関、金額、送金目的などを記載したデータを、送金元の国内の金融機関が税務署に提出するよう義務付けられているからです。適正な課税の確保のために行われており、100万円超の送金は税務署に筒抜けなのです。

 また、CRS(共通報告基準)という経済協力開発機構(OECD)が策定をした共通報告基準(Common Reporting Standard/CRS)という制度があって、外国の金融機関に保有する口座を利用した国際的な租税回避を防止するために、金融口座情報を各国が自動交換しているのです。つまり、各国が協力をして脱税を防止する仕組みが確立されており、タックスヘイブンに資産を逃したところで意味はなく、資産運用の儲けをしっかり申告しなければいけない時代に変わっているのです。

 所得の申告漏れや申告忘れがあると、GW明けなどに税務署から呼び出しを受けることがあるかもしれません。大型連休を満喫し、さあ仕事に取り掛かろうというときに、そうなってしまったら溜まったものではありません。

支払った税金が「戻ってくる」ケースも

 また、この記事ではあまり触れていませんが、年間10万円以上の医療費を支払っている人(総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額)の「医療費控除」、ふるさと納税など寄付をしている人「寄附金控除」、災害や盗難などで資産に損害を受けた人「雑損控除」、給与所得者で通勤費や転居費や研修費など会社の経費にならずに一定の要件を満たした場合に受けられる「特定支出控除」などがある人は、還付が受けられ、支払った税金が「戻ってくる」ケースも。会社員だと、確定申告に無頓着になりがちですが、家計のためにも控除や還付金はきちんと受けておきたいものです。

「税務署はおっかない」というイメージを持っている人も多いかもしれません。それは悪質な人に対してです。善意の一般人に対しては親身に相談に乗ってくれるところなのです。「こういった時はどうすればいいんだろう?」「間違っていたらどうしよう」といった不明点は匿名で税務署に相談をすることもでき、親切に丁寧に教えてもらうこともできます。ただし、急ぎの案件以外は確定申告シーズンで忙しい時期は避けた方がよいでしょう。

 税についての相談窓口

 情報社会の現代は全てが把握され、「分からないだろう」では済まされません。後から加算税などのペナルティが取られるということがないように、しっかりと申告期間中に処理をしたいものです。

(花輪 陽子)