J1王者・川崎が解決すべき“最大の課題”!? データに浮かぶ“去りし功労者”の圧倒的貢献
開幕5試合でわずか1勝、対戦相手の徹底した対策に苦戦
J1リーグ王者の川崎フロンターレは、第5節終了時点で1勝3分1敗の10位とスタートダッシュに失敗した。
前節の松本山雅FC戦(2-0)でようやく今季リーグ戦初勝利を手にしたが、苦戦を強いられているのにはさまざまな理由がある。
まずは、連覇中の王者に対して相手が万全な対策を施してきていること。開幕戦のFC東京戦(0-0)、第2節・鹿島アントラーズ戦(1-1)はともに優勝候補同士の対決だったが、自陣にブロックを築く徹底した守備戦術で川崎にスペースを与えなかった。
そして新加入FWレアンドロ・ダミアンの存在も、苦戦の要因の一つに挙げられるだろう。ロンドン五輪で得点王に輝いた大物ストライカーを補強し、課題とされていた空中戦の強化に成功した一方、川崎の独特なパスサッカーにはまだ適応し切れていない。それでもL・ダミアンは、第3節の横浜F・マリノス戦(2-2)で2ゴールを奪うなどストライカーとして勝負強さを発揮しており、適応がさらに進んでいけば解決されるはずだ。
むしろ今季の川崎における課題は、右サイドバック(SB)にあるのかもしれない。昨季までそのポジションは、清水エスパルスへと移籍したブラジル人DFエウシーニョの“聖域”だった。
攻撃スタッツの多くでSBとしてリーグ1位 突出していたエウシーニョの数値
今季開幕戦のFC東京戦では、エウシーニョの後釜として加入した新戦力DFマギーニョが先発に抜擢されたが、空回りした印象が強く残った。試合後、元日本代表MF中村憲剛は右SBとしての“アピール”の必要性を説いている。
「彼の立ち位置もそうだし、信頼感もそう。まだまだマギーニョ自身、あそこでボールを受けてどうするかという部分が整理されていないところもあると思うので、自信を持ってやってくれれば全然ボールを持ってもらって構わないし。言ったら、成果を挙げていくしかない。ボールを受けて何かしてくれれば、自然とボールは回ってくる。そういうところで言えば、回数はまだまだ少ないし、だからもっともっと積極的にオーバーラップしていい。そういうのはもう、マギーニョ自身が覚えていくしかない」
一方、“前任者”のエウシーニョは川崎へやってきた2015年の開幕戦(横浜F・マリノス/3-1)で、試合開始3分にいきなりデビュー弾を決める強烈なインパクトを残した。アピールに成功した助っ人は1年目からレギュラーに定着すると、34試合8ゴールとサイドバックとして圧倒的な攻撃力を発揮。16年、17年もそれぞれ5ゴールを記録してみせた。
昨季は2ゴールに止まったものの、エウシーニョは突出したプレー数値を残している。データ分析会社「InStat」によると、総プレー時間が全試合の5割以上という条件の下、総シュート数28本、枠内シュート数13本、1試合平均パス成功数51本、1試合平均キーパス成功数0.9本を記録。これらはいずれも、J1の右SBで1位だった。
なかでも、エウシーニョが武器としていたのはペナルティーエリア内への侵入であり、昨季のボックス内でのプレー成功率は38.0%、ボックス内へのパス成功率は47.2%を記録している。今季川崎の右SBとして最も出場しているDF馬渡和彰はそれぞれ30.8%、37.5%と比較しても大幅に上回る数値となっている。超攻撃的SBとして、川崎の攻撃面でも計り知れない貢献を残していたのは間違いない。
左SBの車屋も認めるエウシーニョの重要性 「今季は点を取れていないというのも…」
不動の右SBがクラブを去り、最も変化を感じている選手の1人が左SBのDF車屋紳太郎だ。SBとしてコンビを組んできた車屋も、エウシーニョの存在は大きかったという。
「エウシーニョに対して、チームとして頼っていた部分が多かった。彼のゴールやアシストは勝利に直結しているものだったので、それがなくなった分、全員のコンビネーションで崩すのがより重要になった。今季は点を取れていないというのもあるし、そういうものが理由としてあるのかもしれない」
もっとも、車屋はチーム全体の連係が高まれば補完できるとも考えている。
「全員がもっと連係の精度を高めれば得点は増やしていけると思っている。(鬼木達)監督からもエウシーニョが抜けた分、しっかり周りとのコンビネーションを上手くやって対処してほしいという要求はされているし、やっていきたいと思っている」
新加入のDF馬渡和彰が右足関節捻挫で負傷離脱したこともあり、右SBは開幕5試合で馬渡が210分、MF鈴木雄斗が180分、マギーニョが55分間プレーしている。現在の川崎において、最もフラットな定位置争いが繰り広げられているポジションと言っていい。エウシーニョの穴を埋めるうえで、どの選手が主力に定着するのか。今後川崎が挽回していくための重要な鍵となりそうだ。(Football ZONE web編集部・城福達也 / Tatsuya Jofuku)