【MLB】イチロー、「新型打撃フォーム」を支える幾つもの思い 45歳で目論む「裏切り」
「力を溜めて呼び込む」新型打撃フォームの意図は…「言わなくてもいいんじゃない」
マリナーズとマイナー契約を交わし、招待選手として大リーグ19年目を目指すイチローが16日(日本時間17日)、キャンプ初日を迎えた。一番の興味は、前日15日の自主練習で行ったケージ内打撃を遠巻きにして気付いた、「新型打撃フォーム」のお披露目だった。
冷たい風が吹くフィールドのケージに入ったイチローは、漆黒のバットをいくぶん投手寄りに傾け構える。少し落とした両膝は投手のモーションに合わせたテークバックとともにさらに沈み始動。ベールを脱いだ「フルモデルチェンジ」の打法にカメラのシャッター音が一斉に響く。
ボールを待つ動作に「柔らかさ」があった従来型とは異なり新型は「力を溜めて呼び込む」印象がある。そのフォームから繰り出した鋭い25スイングで、5本の柵越えを放った。練習後、この打法に水を向けられたイチローは笑い交じりに返した。
「そんなこと言わなくてもいいんじゃない」
技術に関して、イチローはこれまでも多くは語っていない。それが手探り状態であればなおさらである。そして、この改良が「19年型」の確約ともならない。
「安易な責任のない意見、そういうものを裏切りたい」
01年のデビューから続けていた年間200安打は10年で途切れ、2011年は184安打に終わった。翌2012年のキャンプだった。イチローはスイングの際の右足の踏み出しをごくわずかに留める「ノーステップ」に近い打法を試みている。が、途中で踵を浮かせるタイミングの取り方にあっさりと戻してしまった。
「自分のセンスを信じる」。あの時イチローはそっと言った。
この日お披露目となった打法には、下半身が不安定だと振りまけるデメリットがあり、鍛え上げた肉体がなければ到底無理な改良である。45歳の挑戦者、イチローは言う。
「安易な責任のない意見、そういうものを裏切りたいと思っています」
単に年齢で判断されることへの反逆のメッセージに続けて、胸奥の思いも吐露した。
「誰かがやったことがあることよりは誰もやったことがないことの方が飛び込んでいくという選択になる」
新打法を支える幾つもの思い。「裏切り」を目論むイチローが動き出した。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)