『ビール・ストリートの恋人たち』監督が初来日、小津安二郎監督の『東京物語』にインスパイア受ける
映画『ビール・ストリートの恋人たち』公開記念トークショーが13日、都内・TOHOシネマズシャンテにて行われ、初来日となったバリー・ジェンキンス監督が出席。ゲストとしてコムアイ(水曜日のカンパネラ)が隣席した。
前作『ムーンライト』で第89回アカデミー賞®作品賞を受賞したバリー・ジェンキンス監督。2作品連続で見事本年度アカデミー賞®3部門(脚色賞/助演女優賞/作曲賞)ノミネートを果たした最新作『ビール・ストリートの恋人たち』。1970年代のニューヨークを舞台に、人種や社会階層に対する差別の問題を根底にしながらも、どんな時も愛を諦めない恋人たちのラブストーリーをみずみずしく描いたジェイムズ・ボールドウィンの原作を映画化したジェンキンス監督待望の最新作だ。
本年度アカデミー賞3部門ノミネート(脚色賞、助演女優賞、作曲賞)を果たしている本作。今回が初来日となったジェンキンス監督は「とても美しい。飛行機で(日本の上空に)入った時の景色が綺麗でした」とコメント。
現地時間2月25日に授賞式を控えているが、今の心境を聞かれると「とてもワクワクしています。ただ、2年前はいろいろあったからね(笑)ちょっとPTSDを抱えての今回のアカデミー賞になりそうです」と、前作『ムーンライト』でアカデミー賞作品賞受賞発表時に起こったハプニングについて触れ、笑いをさらった。
イベントには、ジェンキンス監督作品の大ファンというコムアイ(水曜日のカンパネラ)が花束とバレンタインチョコレートを持って登場。コムアイから「ロマンチックな気持ちにもなるし、すごく胸が苦しくもなる」「出来事を伝える・感じるというより、登場人物の表情や細かさに感情を揺らがせる。揺らぎを映す監督なので、日本の方々にも好まれる映画だと思います」と感想が飛び出す。
ジェンキンス監督は「人は表情でたくさんのことをコミュニケーションしている。言葉で伝えていることよりもね。感情が揺らぐその瞬間、変化していく瞬間、観客の方がその感情の揺らぎに入れるような感覚を味わえるように作っています」と明かした。
また、劇中での音楽についてコムアイは「最初の30秒で観客は監督がいかに音楽を大事にしているかがわかるはず。原作に音楽の描写が多い中で、勇気を持って原作とは違う音楽を打っ込むことに迷いはなかったのか」と分析。ジェンキンス監督から「よく勉強しているね!6ヶ月間取材を受けてきていますが、このことを指摘してくれたのはコムアイさんが初めてだよ」と称賛の言葉が送られた。
ジェンキンス監督は「原作にも楽曲について描かれてはいるが、また違った方法をこの映画ではしています。原作で描かれている音楽が制限とするならば、そこから解放されたようなイメージを与えた。観客に『そういう感情になってくれ』と押し付けてしまうような映画音楽は多々あります。キャラクターが、役者が何を感じさせてくれるのかを反映し、音楽を通して感情を増幅してくれるような仕上がりになっています。悲劇と誕生、愛と憎しみ…生命と苦しみ、それらを表現できたと思います」と力説した。
前作『ムーンライト』では、20年前の愛の名作『ブエノスアイレス』にオマージュを捧げていたジェンキンス監督。今作『ビール・ストリートの恋人たち』では、小津安二郎監督の『東京物語』にインスパイアを受けた演出があると言い、「数多くの場面で、観客と目線を合わせるシーンがある。それは小津安二郎監督の『東京物語』で初めて知った手法でした。キャラクターたちを目を合わせることによって、受け身の体験から能動的な体験に変わると考えている。感情の交換、観客の方から何かを返してくださる、そうなれば嬉しいです」と明かした。
映画『ビール・ストリートの恋人たち』は2月22日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国公開
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