そして、カタールのサンチェス・バス監督は、後半の頭から5-4-1に変更した。日本が攻撃の目先として利用し始めた、中盤サイドを抑えるためか、あるいはビルドアップの優位が無くなったので、サイドからのカウンターをねらったのか。いずれにせよ、後半序盤のカタールは、中央の優位を捨て、サイドに厚みを増やした。
 
 しかし、この形は日本がベトナム戦で体験したものでもある。ほとんど苦にならず、むしろ日本はチャンスを量産した。カタールは10分後に5-3-2に戻す。
 
 そして、またサイドが空いたことで、日本は62分に武藤嘉紀を投入し、サイドの裏へ飛び出しを決行させる。裏を突くため、また、それによって大迫、堂安、南野にスペースを与えるためだ。そして69分、ついに南野のゴールで1-2へ。
 
 この辺りの修正合戦は、なかなか見応えがあった。2-2で延長か、あるいは日本の逆転も見えてきた。しかし……、その矢先の81分。久方ぶりに仕掛けられたカタールの攻撃で、カウンターからコーナーキックへ。その直後のシーンでビデオ判定が行なわれ、吉田のハンドリングでPK。1-3。試合は決まった。
 
 多くの人が言うように、カタールはたしかに強かった。しかし、今の日本の選手で勝てない相手とはまったく思わない。それは試合の流れを振り返ったことで、尚更感じることでもある。
 
 

 返す返すも痛いのは、予想されたミスマッチに対する、日本の準備の無さ。そして、修正までに35分もかかったこと。12分の失点は、時間帯も早く、やむを得ないところもあるが、その後に修正するべきタイミングは何度もあった。
 
 ミスマッチの利用はうまく出来なくても、最低限、解消することはできる。個の勝負なら、日本はむしろ勝っていたのに。
 
 カタールはたしかに良かったが、今の段階で手放しに褒める気になれないのは、あまりにも日本の戦い方に疑問が多いからだ。いちばん不可解なのは、予想できたミスマッチの問題に対し、なぜ準備をしないのか、ということ。日本が出し切って敗れたのなら納得できるが、この試合はそうではない。
 
 準備やスカウティングの甘さは、カタール戦に限らず、ほとんどの試合で見られた。なぜなのか?
 
「選手の対応力を磨くためにわざとやっているんだ」と言われたら、私は納得するし、むしろ拍手もするが、単なる能力不足だとすれば、すぐに解任したほうがいい。あるいは、この問題を解決できるコーチを入閣させなければならない。
 
文●清水英斗(サッカーライター)