アジアカップのグループリーグ2試合を終えて、日本代表の戦いぶりが不満や不安を誘っているようだ。グループリーグ突破よりも試合内容への物足りなさが先行している。

 トルクメニスタン戦に続いてオマーン戦も、いくつかの「if」がつく内容だった。
序盤の決定機を得点につなげていれば、もっと楽な展開持ち込めたはずである。一方で、長友佑都のシュートブロックは、VARによる判定ならPKになっていた確率が高い。前半を1対1で折り返していたら、試合の行方は分からなかったかもしれない。
日本代表が向かい風にさらされる理由は、私たちが自らハードルを上げているからではないだろうか。

 アジアカップだから、しかもグループリーグだから、力の差を見せつけて勝つのは当然である。そうでなければ、ワールドカップでの上位進出などおぼつかない──そういった評価基準が多数を占めていると思う。

 森保一監督就任後のテストマッチは、アジアカップでの力強く爽快なサッカーを予感させるものだった。テストマッチと公式戦は違うと分かっていても、僕自身も不安ではなく期待がまさっていた。

 各国が2試合を戦った時点では、イランの実力が抜けている。

 それも当然だろう。

 かつて名古屋グランパスを率いたカルロス・ケイロスは、2011年4月からイランを指揮している。UAEで戦っている23人のうち、実に19人までがロシアW杯のメンバーだ。継続性が十分に担保されており、昨年末にはパレスチナ、カタールとテストマッチを消化している。グループリーグの初戦から内容を伴った勝利をつかんでいるのは、ある意味で当然だろう。

 指揮官ケイロスは、今大会を最後に勇退することが決まっている。それもまた、1976年以来の優勝を目ざすチームのモチベーションとなっている。

 ひるがえって日本は、森保監督の初陣から半年も経っていない。昨年11月のキルギス戦を最後に、テストマッチも行なっていなかった。国内での合宿から全員が揃っていたわけでもなく、トルクメニスタン戦の直前にようやく23人が集まった。

 そもそも、若いチームである。アジアカップのピッチに立った経験があるのは、長友、吉田麻也、柴崎岳、乾貴士、武藤嘉紀の5人にとどまる。ロシアW杯のメンバーは11人いるが、国際経験の少ない選手も同じくらいいる。

 大会へ備えたスケジュールでも、チームとしての経験値や熟成度でも、日本はライバルたちを大きく上回っていない。どこか消化不良な戦いになっているのも、驚きではないと思うのだ。そして、長丁場の大会を勝ち抜いていくうえで、スロースタートは必ずしも悪いことではない。