貴ノ岩が日馬富士に対して起こした損害賠償請求で相撲取りの表マネーを計算したところ、妥当だったので払ってほしい件。
仕方ない、2000万円くらい払おう!
相撲取りは一体いくらお金をもらえるのか、なんとなーく聞きかじってはいることですが、いい機会なので改めて勉強していきましょう。「相撲取りのもらうお金はタニマチからの謎のマネーが大半だろ」「謎のマネーだから計算しても意味ないぞ」「理事長の懐刀になると1案件で謎のマネーを普通に500万円くらいもらえるぞ」などと言わないでください。今回は表、表マネーの話です。帳簿に載せても大丈夫なヤツだけです!
もちろん素材となるのは貴乃花の弔い合戦に燃える愛弟子・貴ノ岩が起こした元横綱日馬富士への損害賠償請求です。こちらの訴えにおいて、「お前に殴られた代金」として総額2400万円あまりの賠償金を要求しているわけですが、そのなかには「相撲協会からもらえる表マネー」の損失補填についても載っておりました。こちらを検算しまして、相撲取り表マネーの勉強としてまいります。
↓まずは貴ノ岩側からの要求金額の内訳を見ていきます!
合計2413万5256円!
今回は表マネーの勉強なので、関係ない項目はサッと飛ばします。まず入院治療費ですがコチラは実費なので「めっちゃ入院したんやのぉ」と思うしかありません。通常の感覚よりは高額に思えますが、第三者の行為によって生じた傷病の治療の際には、加害者が負担すべき治療費を健康保険が肩代わりしてしまう事態を避けるという意味で、健保にそれを届け出るようになっています。もちろん保険適応で立て替えてもらうことはできるようですが、加害者が支払うべきものであるということで自由診療扱いになるケースもあるとのこと。保険適応せず全額加害者に賠償請求ということであれば、高めに出ることもあるのかなと思います。慰謝料・弁護士費用も「高いなぁ」と思うだけです。このあたりは実際の費用と過去の判例、社会通念などから「相場」におさまることでしょう。
勉強のテーマは逸失利益の部分です。
まず相撲取りの基本的な給料の仕組みについて。こちら規定が公開されている場所を見つけられなかったのですが、幸い別の相撲取り関連裁判の判決文にて、給与規定が細かく引用されていますので、そちらを見ながら確認していきます。
力士の給料というのは大きくわけて二本立て。「月給」と「力士褒賞金」です。月給は番付の階級によって定められており、横綱なら282万円、大関なら234万7000円、三役だと169万3000円、幕内は130万9000円、十枚目(十両)は103万6000円です。これが各場所の開催月より、番付の階級に応じて支払われることになります。力士報奨金は階級に応じた支給基準額があり、そこに成績による加算ぶんを加えて算出します。
これで計算すると横綱となると月給だけでも282万円×12の3384万円、さらに力士褒賞金が最低でも150円×4000×6場所ありますので360万円となり、年間で3744万円以上がもらえることになります。そこに「東京本場所1場所につき25000円の力士補助費」「年2回、月給各1ヶ月分の賞与」などが支給されますので、約4000万円の表マネーが確定で入ってきます。そこに裏マネーを加えると3億円くらいでしょうか。知らんけど。
貴ノ岩は2016年の初場所から約2年11場所連続して幕内の地位におり、その後の2017年九州場所前にデンモクボコボコ事件が起き、二場所連続の全休となります。地位は十両に下がり、去る九月場所で幕内に復帰しました。復帰直後に10勝をあげていることからもわかるように力量は十分。デンモク前の成績を見ても、11場所通算で81勝84敗3休で勝率49%となっており、「この期間、ずっと幕内にいただろう」と考えるのは妥当です。
まず月給ぶんの差額を考えると「幕内月給130万9000円−十両月給103万6000円」×十両にいた期間8ヶ月ぶんとなりますので、27万3000円の8倍で218万4000円となります。さらに力士褒賞金も階級による金額が減りますので、「幕内60円−十両40円」×4000倍×4場所で32万円となります。東京場所も1場所休場しているのでさらに25000円減。これだけで252万9000円。
ところが貴ノ岩側が要求した給与差額は148万1840円。これは「デンモクボコボコがなくて、ずーっと幕内にいた」という本来あるべき状況を想定すると、だいぶんお安い請求となっています。40円などという妙な端金があるので、日割り計算か消費税の付けたしなどをしているのでしょうが、請求としては「約2場所4ヶ月ぶん」でしかありません。どこか計算が違うのかもしれません。休んだぶんだけでいいよということなのか。とにかくお安い。
さらに懸賞金について。懸賞金は日本相撲協会の公式サイトに金額が掲載されています。賞金は1本あたり62000円でここから手数料5300円を引いた56700円が勝ち力士の取りぶんです。貴ノ岩の請求が900万円というのは、懸賞金本数にして約150本です。全休した場所と十両に落ちていて懸賞がかからない4場所を合わせて、5場所各30本ずつという計算でしょうか。もちろん勝たないともらえないわけですが、先ほどの勝率49%からすると各場所60本懸賞がかかれば大体計算が合うということになります。
もちろん貴ノ岩ひとりに60本かかるかというとそうではないでしょうが、「横綱戦」「大関戦」「遠藤戦」など相手の人気によって多くの本数がかかる取組はあります。横綱戦に勝てば30本から50本、大関戦でも15本から20本はとれるわけで、各場所30本懸賞獲得というのは決して無茶な数字ではありません。去る九月場所でも、前頭2枚目で5勝10敗の千代大龍が71本、前頭13枚目10勝5敗の竜電が49本、前頭7枚目7勝8敗の松鳳山が46本をそれぞれ獲得しています。かかった数ではなく「勝ってもらった数」でそれぐらいは獲っているのです。
↓九月場所での十傑はこんな感じです!
1位の白鵬は勝って懸賞をもらった本数だけで410本!
懸賞金だけで2324万円!
貴ノ岩については取組表や懸賞本数の記録を見つけられなかったので、録画したものを見返して「懸賞旗の本数」「場内アナウンス」を確認した範囲となりますが、去る九月場所のケースでも確認できたものだけで30本の懸賞がかかっており、18本を獲得しています。数え漏れがあればもっと多いかもしれません。これは返り入幕の前頭13枚目という地位でのものであり、三役以上との取組はまったくないわけです。それでも「18本くらいは獲れる」のです。三役格以上が相手ならもっと獲れても不思議はないのです。
休場前の実績で言っても、2017年の初場所で白鵬を破った際にはその1勝で39本(目視確認)の懸賞を獲っていたり、2017年の三月場所ではやはり遠藤戦で10本の懸賞を獲っていたり(この場所は豪栄道戦でも懸賞獲得)、2017年九月場所でも9日目の遠藤との取組に勝って14本(目視確認)の懸賞を獲っていたりするわけです。「相手の人気次第で大量に獲れる」ことを加味すれば、平均30本獲得は十分にあり得るでしょう。記録を調べればわかることを嘘をついても仕方がないわけで、ある程度筋は通る計算になっているはずです。「横綱に対しても49%で勝つ」とかの計算上のマジックはあるかもしれませんが。
その他、巡業手当や幕内養老金の減額等については勤続場所数と幕内在位場所数が影響するので一概に決められませんが、幕内での勤続1場所につき12万円の養老金が増え、勤続加算金も幕内25場所以上在位の力士は十両に対して5万円多くなります。貴ノ岩はその境目となる幕内25場所にもう少しのところまできており(20場所)、デンモク以降十両に落ちていたせいで25場所に到達しないというケースを考えると、「4場所×12万円」「5万円×25場所」で173万円程度損したかもしれないと主張することは十分可能でしょう。どこまで認められるかはともかく、主張はできると思います。
このように改めて力士の表マネーについて勉強していくと、逸失利益の部分については無茶苦茶な数字ではないことがわかります。慰謝料500万円は相場なりの額におさまるでしょうが、実費の医療費と逸失利益でトータルで2000万円くらいはいただける感じになるのではないでしょうか。改めて勉強させていただきまして、相撲取りって裏マネーがなくても結構もらえるんだなぁと思いました。相撲取りだからって気軽に殴っちゃダメなんですね!
↓表マネーぶんだけでも払ってくださいね!
裏マネーは減ってるのか増えてるのかわかりませんが!
謎のお祝いなどで、なんとなく増えてそうな気がします!
あと、いろいろあって引っ越すことになったんで引っ越し代もください!
相撲取りは一体いくらお金をもらえるのか、なんとなーく聞きかじってはいることですが、いい機会なので改めて勉強していきましょう。「相撲取りのもらうお金はタニマチからの謎のマネーが大半だろ」「謎のマネーだから計算しても意味ないぞ」「理事長の懐刀になると1案件で謎のマネーを普通に500万円くらいもらえるぞ」などと言わないでください。今回は表、表マネーの話です。帳簿に載せても大丈夫なヤツだけです!
↓まずは貴ノ岩側からの要求金額の内訳を見ていきます!
【積極損害】入院治療費用等 435万9302円
【逸失利益】
(1)給与差額 148万1840円
(2)懸賞金の逸失 900万円
(3)巡業手当の逸失 38万円
(4)退職時の幕内養老金等の減 172万円
(逸失利益の合計は1258万1840円)
【慰謝料】 500万円
【弁護士費用】 219万4114円貴ノ岩が提訴した。日馬富士に対し、慰謝料など2413万5256円を請求。https://t.co/DEOAIf3oCy
- 佐々木一郎 (@Ichiro_SUMO) 2018年10月4日
合計2413万5256円!
今すぐ払え!さぁ払え!
今回は表マネーの勉強なので、関係ない項目はサッと飛ばします。まず入院治療費ですがコチラは実費なので「めっちゃ入院したんやのぉ」と思うしかありません。通常の感覚よりは高額に思えますが、第三者の行為によって生じた傷病の治療の際には、加害者が負担すべき治療費を健康保険が肩代わりしてしまう事態を避けるという意味で、健保にそれを届け出るようになっています。もちろん保険適応で立て替えてもらうことはできるようですが、加害者が支払うべきものであるということで自由診療扱いになるケースもあるとのこと。保険適応せず全額加害者に賠償請求ということであれば、高めに出ることもあるのかなと思います。慰謝料・弁護士費用も「高いなぁ」と思うだけです。このあたりは実際の費用と過去の判例、社会通念などから「相場」におさまることでしょう。
勉強のテーマは逸失利益の部分です。
まず相撲取りの基本的な給料の仕組みについて。こちら規定が公開されている場所を見つけられなかったのですが、幸い別の相撲取り関連裁判の判決文にて、給与規定が細かく引用されていますので、そちらを見ながら確認していきます。
力士の給料というのは大きくわけて二本立て。「月給」と「力士褒賞金」です。月給は番付の階級によって定められており、横綱なら282万円、大関なら234万7000円、三役だと169万3000円、幕内は130万9000円、十枚目(十両)は103万6000円です。これが各場所の開催月より、番付の階級に応じて支払われることになります。力士報奨金は階級に応じた支給基準額があり、そこに成績による加算ぶんを加えて算出します。
<力士の給料>
横綱:282万円
大関:234万7000円
三役:169万3000円
幕内:130万9000円
十枚目:103万6000円
<力士褒賞金の計算>
●(A+B)×4000倍を本場所ごとに支払う
【A:階級による基準額】
横綱:150円
大関:100円
幕内:60円
十枚目:40円
幕下以下:3円
【B:成績による加算額】
勝ち越し1番につき50銭
金星ひとつにつき10円
幕内優勝につき30円(全勝優勝なら50円)
※Bの額は負け越しても減ったりはしない
※昇進したときこれまでの加算額を足してもAの額に届かない場合は、その額まで引き上げられる
【参考】
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/289/084289_hanrei.pdf
これで計算すると横綱となると月給だけでも282万円×12の3384万円、さらに力士褒賞金が最低でも150円×4000×6場所ありますので360万円となり、年間で3744万円以上がもらえることになります。そこに「東京本場所1場所につき25000円の力士補助費」「年2回、月給各1ヶ月分の賞与」などが支給されますので、約4000万円の表マネーが確定で入ってきます。そこに裏マネーを加えると3億円くらいでしょうか。知らんけど。
貴ノ岩は2016年の初場所から約2年11場所連続して幕内の地位におり、その後の2017年九州場所前にデンモクボコボコ事件が起き、二場所連続の全休となります。地位は十両に下がり、去る九月場所で幕内に復帰しました。復帰直後に10勝をあげていることからもわかるように力量は十分。デンモク前の成績を見ても、11場所通算で81勝84敗3休で勝率49%となっており、「この期間、ずっと幕内にいただろう」と考えるのは妥当です。
まず月給ぶんの差額を考えると「幕内月給130万9000円−十両月給103万6000円」×十両にいた期間8ヶ月ぶんとなりますので、27万3000円の8倍で218万4000円となります。さらに力士褒賞金も階級による金額が減りますので、「幕内60円−十両40円」×4000倍×4場所で32万円となります。東京場所も1場所休場しているのでさらに25000円減。これだけで252万9000円。
ところが貴ノ岩側が要求した給与差額は148万1840円。これは「デンモクボコボコがなくて、ずーっと幕内にいた」という本来あるべき状況を想定すると、だいぶんお安い請求となっています。40円などという妙な端金があるので、日割り計算か消費税の付けたしなどをしているのでしょうが、請求としては「約2場所4ヶ月ぶん」でしかありません。どこか計算が違うのかもしれません。休んだぶんだけでいいよということなのか。とにかくお安い。
さらに懸賞金について。懸賞金は日本相撲協会の公式サイトに金額が掲載されています。賞金は1本あたり62000円でここから手数料5300円を引いた56700円が勝ち力士の取りぶんです。貴ノ岩の請求が900万円というのは、懸賞金本数にして約150本です。全休した場所と十両に落ちていて懸賞がかからない4場所を合わせて、5場所各30本ずつという計算でしょうか。もちろん勝たないともらえないわけですが、先ほどの勝率49%からすると各場所60本懸賞がかかれば大体計算が合うということになります。
もちろん貴ノ岩ひとりに60本かかるかというとそうではないでしょうが、「横綱戦」「大関戦」「遠藤戦」など相手の人気によって多くの本数がかかる取組はあります。横綱戦に勝てば30本から50本、大関戦でも15本から20本はとれるわけで、各場所30本懸賞獲得というのは決して無茶な数字ではありません。去る九月場所でも、前頭2枚目で5勝10敗の千代大龍が71本、前頭13枚目10勝5敗の竜電が49本、前頭7枚目7勝8敗の松鳳山が46本をそれぞれ獲得しています。かかった数ではなく「勝ってもらった数」でそれぐらいは獲っているのです。
↓九月場所での十傑はこんな感じです!
懸賞は思っている以上に多い。横綱大関に一回勝てばそれだけで20本くらいは獲れる。
- フモフモ編集長 (@fumofumocolumn) 2018年10月4日
懸賞金 - 大相撲 : 日刊スポーツ https://t.co/z8CkDTuWEW @nikkansportsさんから
1位の白鵬は勝って懸賞をもらった本数だけで410本!
懸賞金だけで2324万円!
貴ノ岩については取組表や懸賞本数の記録を見つけられなかったので、録画したものを見返して「懸賞旗の本数」「場内アナウンス」を確認した範囲となりますが、去る九月場所のケースでも確認できたものだけで30本の懸賞がかかっており、18本を獲得しています。数え漏れがあればもっと多いかもしれません。これは返り入幕の前頭13枚目という地位でのものであり、三役以上との取組はまったくないわけです。それでも「18本くらいは獲れる」のです。三役格以上が相手ならもっと獲れても不思議はないのです。
休場前の実績で言っても、2017年の初場所で白鵬を破った際にはその1勝で39本(目視確認)の懸賞を獲っていたり、2017年の三月場所ではやはり遠藤戦で10本の懸賞を獲っていたり(この場所は豪栄道戦でも懸賞獲得)、2017年九月場所でも9日目の遠藤との取組に勝って14本(目視確認)の懸賞を獲っていたりするわけです。「相手の人気次第で大量に獲れる」ことを加味すれば、平均30本獲得は十分にあり得るでしょう。記録を調べればわかることを嘘をついても仕方がないわけで、ある程度筋は通る計算になっているはずです。「横綱に対しても49%で勝つ」とかの計算上のマジックはあるかもしれませんが。
その他、巡業手当や幕内養老金の減額等については勤続場所数と幕内在位場所数が影響するので一概に決められませんが、幕内での勤続1場所につき12万円の養老金が増え、勤続加算金も幕内25場所以上在位の力士は十両に対して5万円多くなります。貴ノ岩はその境目となる幕内25場所にもう少しのところまできており(20場所)、デンモク以降十両に落ちていたせいで25場所に到達しないというケースを考えると、「4場所×12万円」「5万円×25場所」で173万円程度損したかもしれないと主張することは十分可能でしょう。どこまで認められるかはともかく、主張はできると思います。
このように改めて力士の表マネーについて勉強していくと、逸失利益の部分については無茶苦茶な数字ではないことがわかります。慰謝料500万円は相場なりの額におさまるでしょうが、実費の医療費と逸失利益でトータルで2000万円くらいはいただける感じになるのではないでしょうか。改めて勉強させていただきまして、相撲取りって裏マネーがなくても結構もらえるんだなぁと思いました。相撲取りだからって気軽に殴っちゃダメなんですね!
↓表マネーぶんだけでも払ってくださいね!
裏マネーは減ってるのか増えてるのかわかりませんが!
謎のお祝いなどで、なんとなく増えてそうな気がします!
知らんけど!
あと、いろいろあって引っ越すことになったんで引っ越し代もください!
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