予定より早い2年強で看板替えは終了する見通しだが、国内店舗数シェアは減らした(撮影:尾形文繁、今井康一)

2年をかけて行われてきた統合作業がヤマ場を迎えている。

2018年11月、コンビニエンスストア大手のファミリーマートが進めてきた「サークルK」「サンクス」とのブランド統合が完了する。当初は2019年2月に終える予定だったが、統合作業を加速したことで、3カ月前倒しで完了する見通しとなった。ブランド転換を行った店舗は9月中旬までで約4800。残る転換対象店舗は200を切った。

ファミリーマートの澤田貴司社長は、「この2年間、社員が本当によくやってくれた」と笑顔で話す。統合で同社の店舗数はローソンを抜き、2番手に躍進。統合前は2兆円だったチェーン全店売上高は、一気に3兆円規模へと拡大した。

閉鎖する店舗が想定より増えた

それだけではない。もともとサークルK、サンクスの平均日販(1日当たり1店売上高)は40万円台半ば。それが転換後には50.6万円に増加した。「『ファミチキ』をはじめ商品面が強化されたことで、客数が増えた」(サンクスから転換した加盟店オーナー)。

一見すると順調のように思えるブランド統合。その一方で、当初のもくろみが外れた面もある。

ブランド統合が始まった2016年秋、ファミリーマートとサークルK、サンクスの店舗数は単純合算で約1.8万店と、首位のセブン-イレブン・ジャパンに匹敵する規模だった。だが、統合に際して閉める不採算店の数が想定より増え、足元の店舗数は1.7万店を割った。

その間、セブンは出店を続け2万店を突破。ローソンも地方のコンビニと提携し店舗数を増やしてきた。結果的に直近2年で大手3チェーンのうち、サークルK、サンクスを含むファミリーマートだけがシェアを落とした。


統合を主導した当時の上田準二会長(現ユニー・ファミリーマートホールディングス〈HD〉相談役)は「規模が伴わないと日販は向上しない」と何度も語っていた。だが、統合が進んでもファミリーマートの日販は52万円前後で横ばいが続く。セブンとの差も10万円以上開いたままだ。

15年間ファミリーマートを運営する加盟店オーナーは、「この2年は目立ったヒット商品もなく、統合のメリットは感じない。むしろ近隣のサンクスが転換したことで売り上げが落ちた」と不満を募らせる。

ベンダー企業も苦悩

統合以降、ファミリーマートは製造・物流拠点の集約や商品の見直しを進めてきた。ただ商品改革については澤田社長も、「まだ道半ば。トップチェーンとは差がある」と率直に認める。

弁当などを製造するベンダー企業も苦悩する。かつてサークルKやサンクスに商品を供給していた東海地盤のカネ美食品は、統合を機にファミリーマート向けに商品を切り替えた。一部の工場では商品の納品が1日2回だったが、切り替え後は1日3回に増えた。

その結果、工場で働く従業員のシフト変更が必要となり、派遣社員の大量投入を余儀なくされた。廃棄ロス増も加わり、2017年度は11億円の営業赤字に陥った(2016年度は5億円の黒字)。「2年前は店舗数が増えていくという発表があったが、今は逆。当初の計画を信じて、かなりの設備投資をしたが、見通しが狂った」(同社幹部)。

前出のサンクスから転換したオーナーも売り上げは伸びた一方、複雑な思いを吐露する。統合に先立ち、ファミリーマートは加盟店とのフランチャイズ契約の内容を見直した。弁当などの廃棄ロスや水道光熱費についての本部負担を増やす一方、加盟店が本部に支払うロイヤルティは増額した。「手元に残る利益はサンクス時代と同じかやや少なくなった」(加盟店オーナー)。

ステークホルダーの不満を払拭し、ブランド統合完了後の成長をどう実現するか。カギは、8月にTOB(株式公開買い付け)でユニー・ファミリーマートHDの親会社となった伊藤忠商事との連携だ。

個店単位の質向上はこれから

同社の細見研介・食品流通部門長は、「ファミリーマートの年間来店客は50億人。それらのデータは将来大きな価値を生む可能性がある」と強調。金融や情報サービスに関しては具体的な言及を避けたが、自社グループにこだわらない提携を検討しているようだ。

早期の統合で器は整った。とはいえ、個店単位での質の向上を図るのはこれから。統合完了は決してゴールではない。


澤田貴司(さわだ たかし)/1957年生まれ。1981年伊藤忠商事入社。1998年にファーストリテイリング副社長。2005年に企業経営支援会社リヴァンプを設立。2016年9月からファミリーマート社長(撮影:今 祥雄)

社長就任から2年。ファミリーマートはサークルK、サンクスとのブランド統合の先に、どのような成長の青写真を描いているのか。澤田貴司社長が東洋経済の取材に応えた。

コンビニの市場は飽和している。これからは店舗数より質の時代だ。よくない店を抱えていても仕方がない。この2年で店舗数は減ったが、それでよかった。

セブン-イレブンのすごい点は出店、物流、商品、マーケティングなど、あらゆる面で戦略にムダがないところ。当社は(am/pmやサークルKサンクスなどが)合併してきたということもあり、出店や物流で非効率な面があった。

最近では出店をより吟味するようになったので、新店の売り上げは上がっている。ただ弁当やおにぎりなど中食は、定期的に食べ比べをしているが、まだセブンとは差がある。


当記事は「週刊東洋経済」10月6日号 <10月1日発売>からの転載記事です

今年立ち上げたフィットネスやコインランドリー併設店はすでに損益分岐点を超えており、下期以降、店舗数を増やしていく。ドン・キホーテとの共同実験店は、既存の店に比べ売り上げが伸びているのは確かだが、オペレーションの負担が大きく人件費がかさんでいる。検証が必要だ。

年内をメドに、伊藤忠商事とユニー・ファミリーマートHDで金融サービスを行う方向性について発表する。このあたりは当社単独では難しいので、伊藤忠の持つ人材、資金力、ネットワークを使い倒していきたい。