騎士団の島として知られる、地中海に浮かぶマルタ島。

現在のマルタの首都ヴァレッタは、聖ヨハネ騎士団によって整備された城塞都市です。独特の風景が広がる美しい旧市街は、1980年にまるごと世界遺産に登録されました。

騎士団がヴァレッタを守っていた当時、重要な防衛上の役割を担っていたのが、マルタ島の先端に築かれた聖エルモ砦。

15世紀にはすでに軍事戦略上の防衛拠点となり、1552年にはオスマン帝国の侵攻を防ぐため、砦が建設されます。守護聖人聖エルモの礼拝堂があった場所に建てられたため、その名が付きました。

わずか6ヵ月で建設された聖エルモ砦は、2つの港と4つの角をもつ星形の要塞。

第2次世界大戦下では、イギリスの最前線基地となり爆撃を受け、破壊されました。幾多の戦いの舞台となり、文字通りマルタ島における戦争の生き証人となってきた聖エルモ砦。

一画には国立戦争博物館があり、武器や軍服、軍用車などといった展示物とともに、マルタにおける戦争の歴史を紹介しています。

「歴史上最も血塗られた戦いのひとつ」といわれる1565年大包囲戦では、聖エルモ砦はオスマン帝国の猛烈な攻撃を受けます。多数の死者を出し、一度は陥落した聖エルモ砦でしたが、最終的には聖ヨハネ騎士団の勝利に終わりました。

この戦勝を記念して行われるのが、騎士団の軍事演習を再現したパレード「イン・ガーディア」。

悲惨な戦いの歴史が刻まれた聖エルモ砦ですが、現在イン・ガーディアはヴァレッタを訪れる観光客に人気のアトラクションとなっています。

「パレード」というと、出演者たちが市内を練り歩くようなイメージがありますが、イン・ガーディアは聖エルモ砦内に設けられたステージで、出演者たちが行進や、剣舞、鉄砲撃ちなどを披露します。(一部日程は騎士団長の宮殿前の広場で開催)

イン・ガーディアは、ヨハネ騎士団が16〜17世紀にかけて要塞と駐屯地で行っていた軍事演習の様子を再現したショー。60名あまりのボランティアキャストが要塞守備隊に扮し、当時のものを忠実に再現した軍服をまとって演じます。

グループごとの旗をかかげての行進のみならず、一対一の剣舞や、火薬を使用した大砲や鉄砲の実演も行われ、臨場感満点。

発砲の場面では、乾いた音が鳴り響き、小さな子どもが驚きのあまり泣き出してしまうほどの迫力です。

イン・ガーディアの開催は日曜日の11時からで、おおむね月2〜3回の開催。一度も開催されない月もありますが、マルタ滞在が日曜日に重なるようであればぜひ開催スケジュールの確認を。上演時間は11時から約45分間です。

度重なる戦いをぐぐりぬけてきた聖エルモ砦は、マルタにおける悲惨な戦争の歴史の象徴であると同時に、騎士団の栄光の象徴。

日曜日にマルタに滞在するなら、ぜひ当時の雰囲気が感じられるイン・ガーディアを観に行ってはいかがでしょうか。

砦内にある国立戦争博物館もあわせて訪れれば、マルタの戦争史に関する理解がさらに深まること間違いありません。

【開催スケジュール】
https://www.visitmalta.com/en/search-events?pg=1&keyword=in%20guardia

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