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「猟奇的で怖いというか、気持ち悪いですよね。子どもたちに危害が及ばないか、とても心配です」

【写真】猫の残虐死体が放置された現場

 と近所の30代主婦は顔をこわばらせた。

頭はなく内臓が出ていた

 千葉県船橋市本中山の住宅街にあるマンション敷地内で6日午前10時20分ごろ、1階に入っている店舗の女性従業員が子猫の頭部を発見した。

「裏庭でハエが2、3匹たかっていたので何かと思ったら、直径6〜7センチくらいの生まれたばかりの子猫の首だったんです。ほぼ白地に茶と黒の交じった三毛猫でした。目を閉じ、口を閉め、眠ったように宙を見上げていました。傷口から血は流れていませんでしたので周囲はきれいでした」

 と女性従業員。

 ほぼ同時に店舗の経営者も気づいて、同10時50分ごろ110番通報した。

「当初はうちへの嫌がらせかなと思ったんですが、それならば目立たない裏庭より、店の前に置いたほうが効果的ですよね。目的はわかりませんが、110番通報や報道でやめてくれればいいと思って通報したんです」

 通報を受けた千葉県警船橋署は、生活安全課の署員らが出動。鑑識係のほか私服警察官を含めて10人近くが駆けつけ、捜査に着手した。

 すると同日の正午前後、マンションからわずか40メートル程度しか離れていないアパート敷地内の梅の木の下で、別の2匹とみられる子猫の死体も見つかった。

 同アパートの大家の女性が話す。

「朝起きて7時ごろ見つけたんです。1頭は頭がなくて、内臓が出ていたから、とてもグロテスクでね。もう1頭は尻尾がないの。2頭ともグレーの子猫で血は出ていませんでしたよ」

 あまりに小さな子猫だったため、カラスにでも襲われたのだろうと思っていたところ、捜査員が聞き込みに来訪したため、この件を告げたという。

「死体は捜査員が持っていきました。前日までは何もなかったのに、一夜のうちに何匹もの子猫が襲われるなんて考えにくい。犯人はカラスじゃなくて、きっと人間なんでしょう」(前出・大家の女性)

 子猫の死因はわかっていない。しかし、死体の一部をわざわざ切断して遺棄するのはむごい。動物ボランティアの女性は次のように語る。

「動物の赤ちゃんはみな可愛いものですが、なぜ可愛くできているかというと、ほかの動物から見ても可愛く見えるようになんです。食べられてしまわないように。だから、犬が猫の赤ちゃんを育てたり、逆に猫が犬の赤ちゃんを育てたりした例がある。そういった可愛いという感覚が欠落している人の犯行でしょうが、人格が壊れているとしか言いようがないですね」

腸が取り出され首に巻いてあった

 同署は近隣の防犯カメラの映像を収集するなどして、何者かが子猫を殺したうえで切断して遺棄した可能性があるとみて、動物愛護管理法違反の疑いで精力的に捜査を続けている。同マンションの裏庭には猫の吐しゃ物のようなエサの痕跡が2か所残っており、16日には捜査員が再捜査している姿があった。

 死体や遺棄現場にほとんど出血の痕跡がなかったことを踏まえると、死後、時間がたってから遺棄した可能性が高い。つまり、別の場所で虐殺したのち、死体を遺棄するために現場を訪れたことになる。

「深夜から明け方にかけて遺棄したようですから、車を所持している可能性が高い。18歳未満の犯行ではないのでしょう」(前出の店舗経営者)

 この船橋市本中山の周辺では約1年の間に、類似する猫の残虐死体遺棄事件が相次いでいる。まず、昨年のちょうどこの時期、現場から約1〜2キロの距離にある市川市高谷で、首のない猫の胴体が見つかっていた。

「ええ、昨年のいまごろですね。場所は特定できませんが、確かに高谷だと聞きました。何か晒しもののようにして遺棄されていたそうです」

 と近所の動物病院の獣医師は記憶している。

 さらに昨年7月28日早朝、同マンションから約1キロと近い市川市原木にある川沿いの駐車場で“猫の磔事件”が発生した。犬の散歩をしていて現場を目撃した70代男性がそのときの様子を振り返る。

「駐車場の鉄パイプの柵に成猫が磔にされていてね。おぞましくて、本当は思い出したくもないんだよ」

 猫の手足は針金で大の字にくくりつけられていた。切り裂かれた腹部から腸が取り出され、首にぐるぐる巻きにしてあったという。

 70代男性は第一発見者の女性らとともに同県警市川署に通報した。

「子どもが近くの小学校に通っているんですが、学校からは“近所で猫が殺されているので不審者に気をつけるように”と呼びかけられています」(近所の40代主婦)

転がる頭部、10個に裂かれた胴体

 数年前にも、この近隣では似たような猫の死体遺棄が頻発していたとの情報も。 

 近所に住む70代主婦は、

「お腹を引き裂かれて殺されていたなど、2、3件は聞いたことがあります。世の中、おかしな人はそんなにはいないと思うから、たぶん同じ人の犯行よね。これが何かの前兆で、神戸の酒鬼薔薇事件のような事件が起きなければいいけれど……。そんな人が近くにいるかと思うと、夜もおちおち眠れないですよ」

 と怯えた様子で話した。

 磔事件から約3か月後の昨年11月2日の朝。前出のマンションから7キロほど離れた市川市大野の梨畑の中にある、携帯電話会社の基地局の敷地内に、猫の頭部が転がっていた。発見者は野良猫にエサをあげている年配の女性だった。

 その女性が市役所と携帯電話会社に連絡し、同社が110番通報。頭部があった場所から約60メートル北の路上では同日、2つに切断された胴体も見つかっている。

 さらに昨年12月25日朝、同マンションから約5〜6キロ離れた船橋市潮見町の潮干狩りで有名な「ふなばし三番瀬海浜公園」で、猫の内臓を取り出して10個ほどに切断した死体が置かれていた。

「場所は砂浜のそばにある道路脇の植え込みです。通りかかった一般の方が発見して通報しています」(公園管理事務所の職員)

 こうしてみると、似たような残虐死体がきわめて狭い範囲内で断続的に遺棄されてきた経緯がわかる。

「それにしても……」

 と、前出の動物ボランティアが言う。

「飼い猫なら人に慣れてるので捕まえやすいですが、野良猫は警戒心が強いので捕まえにくい。どうやって捕獲しているのか不思議」

 県警の執念の捜査が続く。

やまさき・のぶあき 1959年、佐賀県生まれ。大学卒業後、業界新聞社、編集プロダクションなどを経て、'94年からフリーライター。事件・事故取材を中心にスポーツ、芸能、動物などさまざまな分野で執筆している